自由研究にも活用できる! 工場見学に行こう!!~見学の目的~

自由研究として、また家族のイベントとしても人気の高い工場見学ですが、その目的や見学のコツをきちんと把握しておくと、楽しみ方や学びの質も変わってきます。工場見学がより充実したものになるよう、神戸国際大学経済学部教授の中村智彦先生に、見学の目的やまとめ方のコツについて教えていただきます。



工場見学をすすめる理由

かつては、どこの町にも豆腐屋や木工所など、モノを作る現場がたくさんありました。牛乳も配達でしたし、朝早くからパン屋からおいしそうな匂いが漂っていました。でも最近は、身の回りからモノ作りの現場が減ったため、昔に比べて製造者や流通の過程がわからない子どもが多くなっています。たとえば、カブトムシの飼育に必要なおがくずは、かつては近所の木工所でもらうことができました。しかし、今では店で飼育用のものを買ってくるようになっています。
また、学生たちと町の魚屋に見学に行った時のことです。魚をさばいている職人に「これは皆さんが朝釣って来たんですか?」と質問する学生がいて、周りを驚かせました。その学生はスーパーでしか買い物をしたことがなく、魚をさばいている姿を見て漁師だと勘違いしたのです。この学生のように、製造者や流通の過程がわからないまま子どもを成長させないためにも、子どもたちを工場などモノ作りの現場に連れて行って、社会のしくみを教えることはとても大切です。
また、テレビや本などでは知識は学べますが、声が届かない位大きな音や、鉄が溶けるほどの熱さ、お酢の工場に漂うツーンと鼻を刺激するきつい匂いなどの五感で体感することは、やはり現場に行かないとわかりません。そういう、感覚に残る体験ができることも、工場見学のだいご味です。



充実した工場見学を行うには、保護者の下調べが大切

工場を見学することで、子どもはたくさんのことを学べます。その時に大切なのが、保護者の下調べです。商品が誕生したきっかけや商品開発時の工夫など、保護者に予備知識があると子どもに注目ポイントを教えたりしながら見学できるので、見学先で誘導されるままに見るだけより子どもの記憶にも残りやすくなります。


チーズ工場ならばチーズが固まる凝固作用を実際に見学したり、酒造メーカーでは腐敗と発酵は実は同じ働きなのだと教えてあげたりすることができます。食品工場は、食育にも活用できますね。さらに体験型の見学ができれば、実際に自分の手でモノを作ることができますので、より印象に残るでしょう。工場見学に行くことは、モノ作りへの興味を養えるし、商品の製造過程を知ることで消費者意識を高めてくれます。
また人が働く現場を見ることは、キャリア教育の一環にもなります。最近は、自分の親がどんな仕事をしているかわからない子どもが増えています。見学をしながら、保護者の仕事について教えるのも良いと思います。家族の大切な思い出を作るイベントとしても、工場見学をおすすめします。

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プロフィール


中村智彦

名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程修了。大阪府立産業開発研究所などを経て、現在神戸国際大学経済学部教授。中部経済産業局 農商工等連携事業計画認定評価委員なども務める。『工場見学! 町で見かけるもの』(PHP研究所)など著書多数。

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