中学校の体力づくりは「部活頼み」!? 二極化する子どもの運動習慣‐斎藤剛史‐

学力向上の陰で見過ごされがちですが、小・中学校の新学習指導要領では、国語や算数・数学などの主要教科はもとより、体育の授業時間も増やされています。学力だけでなく、体力の向上も現在の子どもたちにとっては大きな課題となっているというわけです。そんななか、運動する子どもと、ほとんど運動しない子どもに分かれるという二極化現象が中学生の間で進行していることが、文部科学省の調査でわかりました。

小学5年生と中学2年生を対象に実施している「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(全国体力調査)の2012(平成24)年度調査の結果によると、50メートル走やボール投げなどの実技調査の総合点は、小5が前年度並み、中2は過去5年間で最高でしたが、統計的には「誤差の範囲内」(文科省)ということで、子どもたちの体力はこの5年間ほぼ横ばい傾向にあります。子どもの体力低下はほぼ止まったと言えるでしょう。
また、体育の授業を除いた1週間の総運動時間が420分以上の子どもは、体力がピークだった1985(昭和60)年度の平均値に達している割合が統計的に高いことがわかりました。子どもの体力は、体育の授業以外に「毎日1時間以上」の運動をしているかどうかで大きく変わるということです。しかし、体育の授業を除いた子どもたちの運動時間を見ると、1週間の総運動時間が60分未満という子どもが最も多く、小5は男子で10.9%・女子で23.9%、中2は男子で9.1%・女子で30.9%もいました。
それ以上に問題視されるのが、中2で1週間の総運動時間が60分未満の層と、900分前後の層に二極化しているのが明らかになったことです。おそらく、スポーツ関係の部活動に参加しているかどうかの違いでしょう。つまり子どもの体力は、中学校時代に運動部の活動をしていたかどうかで明暗が分かれるといっても過言ではないと思われます。

では、子どもたちはみんな運動部に参加すべきなのでしょうか。調査では今回初めて、運動をしない子どもに、その理由(複数回答)を聞いています。中2男子では「疲れる」が40.4%で1位ですが、2位は「文化部に所属」の37.7%。中2女子は「文化部に所属」が70.1%でトップでした。中学校の部活動は、決して運動部だけではないということです。
一方、休み時間中に体操をするなど、体育の授業以外でも体力向上の取り組みを導入している学校は、小学校が72.0%にも上っているのに対して、中学校は27.7%にすぎません。約7割の中学校では、体力向上を運動部の活動に依存し、体育の授業以外の取り組みはしていないということになります。

中学校の部活動をスポーツ関係だけにすれば、子どもの体力はおそらく今よりも向上するでしょう。しかし、それが子どもたちの将来のために良いことばかりとは限りません。部活動に参加しない子どもや、文化部の活動に打ち込む子どももいるということを前提として、体育の授業以外でも体力向上の取り組みを充実させることが中学校に求められます。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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