子どもの味覚【後編】子どもの嫌いな食べ物を克服させるには

お子さまの嫌いな食べ物を食べさせるために、細かく刻んで好きな食べ物に混ぜたり、味つけを変えたりして工夫されている保護者のかたも多いと思います。しかし、うまくいかないこともありますよね。何か良い方法はあるのでしょうか? 味覚や嗜好(しこう)について研究されている関西国際大の堀尾強教授に、嫌いな食べ物の克服法についてお伺いしました。



子どもの味覚【後編】子どもの嫌いな食べ物を克服させるには


嫌いな食べ物と仲良くなる

お子さまの健康を考え、好き嫌いなくいろいろな食べ物を食べてほしいと願う保護者のかたは多いと思います。ただ、毎回お子さまに嫌いな食べ物を残されると、「子どもに出してもどうせ食べないから」と考え、嫌いな食材を食卓に登場させる回数を減らしてしまうことがあると思います。好き嫌いを減らしたいと考えているのであれば、保護者が先にあきらめてしまうのは良くありません。お子さまの場合、保護者のサポートによってある程度、好き嫌いを減らすことができるのです。

わたしが、過去に大学生410名に調査した結果、88%の人が、過去に嫌いだった食べ物が食べられるようになったと回答しています。その理由として多かったのが、「久しぶりに食べたらおいしかった」や「たまたま食べたものがおいしかった」という声でした。ですから、きっかけさえあれば、嫌いな食べ物を好きになるということが、調査から明らかになっているのです。

今回は、嫌いな食べ物を克服するための方法をいくつか紹介します。ポイントは「苦手な食べ物と仲良くなる」ことです。仲良くなるには時間がかかり、すぐに効果は表れないかもしれません。また、お子さまのタイプによって効果的な方法は異なります。保護者のかたは、絶対に克服させなければと気構えるのではなく、楽しみながらいろいろな方法を試してみてほしいと思います。


~苦手な食べ物を克服する方法~
(1)接触頻度を増やす
苦手な食べ物でも接触回数が増えると、次第にその食べ物への嫌悪度合いが薄れていきます。これを心理学では、単純接触効果と言います。できれば、本人がひと口でも食べるのが良いですが、食べないなら見せるだけでもOK。保護者がおいしそうに食べている様子を見せるだけでも効果があると言えます。

(2)いろいろな味に触れさせる
小さいころから豊かな食経験をしている子どもほど、好き嫌いが少ないということが、さまざまな研究から明らかになっています。また、両親が好き嫌いの少ない子どもほど、好き嫌いが少ないことも実証されています。子どもの好きな食べ物だけでなく、いろいろな味に触れさせることで、味の好みも変わっていき、苦手な食べ物を克服するきっかけにつながります。

(3)食べさせ方を工夫する
次は食べさせ方の工夫です。たとえば、野菜好きの友達と一緒に食べることで嫌いな野菜が食べられるようになったり、嫌いな野菜でも自分で収穫することによって食べられるようになったりすることがあります。また、調理法を変えてみることで、食べられるようになることもあるかもしれません。いろいろな方法を試してほしいと思います。
時には、がんばれば食べられるのに残してしまうお子さまには、ちょっと強く「食べてみなさい」と言うのも良いかもしれません。実際に、わたしが大学生に行った好き嫌いの調査でも「無理矢理食べているうちに食べられるようになった」と回答した人の割合が18%もいました。お子さまの様子を見ながら、声かけも工夫してほしいと思います。ただ、下記の2つはあまり効果がありませんので、避けたほうが良いでしょう。


~保護者に注意してほしいこと~

・「身体に良いよ」「健康になるよ」と言う
たとえば、「ピーマンは食べると健康に良いのよ」とお子さまに健康に良いものだと説明しても、ピーマン=苦手・まずいものだと思っている子どもにとってはなかなか理解できません。むしろ、健康に良いもの=まずいものだと理解してしまいます。しかし、大人になるとこうした健康情報は有益です。青汁が苦くても愛飲するかたが多いのは、苦味より「身体に良い」というメリットのほうを重視できるからです。

・食べないと罰を与える
「ニンジンを食べないと遊びに連れていってあげない」など、お子さまが嫌いな食べ物を食べないからといって罰を与えるのは逆効果です。ますます嫌いになってしまうという調査結果が出ています。


【堀尾先生から保護者へのメッセージ】
お子さまに嫌いな食べ物があったとしても、責めないでほしいと思います。栄養学的に見て、極端にバランスが崩れていなければ二つや三つ嫌いな食材があっても良いと思います。わたし自身も大人になるまで納豆やキムチが実は苦手でした。しかし、成長とともに食の好みは変わっていて、今ではどちらも食べられるようになりました。好き嫌いは、その子の一つの食文化でもあります。長い目で見てほしいと思います。成長するにつれ、いつか味覚も変わるかもしれないと、肩の力を抜いて、いろいろ楽しみながらお子さまに働きかけてほしいと思います。


プロフィール


堀尾 強

関西国際大学人間科学部人間心理学科教授。専門分野は、生理心理学、食行動科学(味覚、嗜好、食行動)。共著に『おいしさの科学事典』(朝倉書店)、『味のなんでも小事典』(講談社)などがある。

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