学校では今 【第2回】「係活動」は何のため?-小泉和義-

先日、小2の息子が「こんど、クラスの生きもの係になった」と、とてもうれしそうに話していました。「どんなことをするの?」と聞くと、「クラスで飼っているハムスターに毎日水とえさをあげることと、ハムスターの様子を日誌に書くことが役目」と言っていました。昆虫や小動物が大好きな息子は、とてもうれしそうな様子でした。そこで、今回は、小学校や中学校での「係活動」について、お話ししたいと思います。



係活動も立派な教育活動の一つ

小学校や中学校では、授業で教科の学習をするほかに「特別活動」というものがあります。
学級活動や、児童会・生徒会活動に加えて、運動会、音楽会や遠足などの学校行事も「特別活動」に含まれます。
そして、これらはすべて学校の教育課程の中に位置付けられた、子どもの教育に必要な取り組みなのです。
「係活動」もこの特別活動の中の一つです。また、係活動と類似したものに「当番活動」があります。「当番活動」は、日直・給食当番・黒板当番など、毎日繰り返して必要な仕事を順番に分担する活動のことで、「係活動」は新聞係・生き物係・レクリエーション係など、クラスの役割の中から自分のやりたいものを選び、自分で創意工夫をしながら進めていく活動です。当番活動・係活動のいずれも、学校で集団生活をしていくうえでは不可欠です。学校では、当番活動や係活動を通して、「自分一人のためだけではなく、自分を含めたみんなの役に立つことの大切さ」を教えています。そして、クラスに問題が起こった際に、一人ひとりがその問題を解決しようとする子どもの育成を目指しているのです。
皆さんの小・中学校時代を思い出してみてください。人気のある係は希望者全員がその係になることができず、やりたくない係をしなければならないこともあったと思います。やりたくない当番や係を任されると、「いやだなー」と感じます。でも、この「いやだなー」「面倒くさいなー」と感じることをがんばってやることに、とても価値があるのです。



「手伝い」ではなく「役割」を与える

わたしは小・中学校での当番活動や係活動は、「仕事とは何か」を実感する第一歩だと思います。なりたい職業を夢見ることはもちろん素晴らしいことです。でも、ほかの人がやりたくないことをすることも、仕事を理解するために必要です。みんなが「面倒くさいなー」「いやだなー」と感じることを、つらくてもやり抜くからこそ、人から感謝され、お金を頂くことができる。それが仕事の重要な価値の一つです。人の役に立つために何かをする経験を積むことは、子どもが将来どう生きていくかを考えるうえで、とても大切なのです。
家での手伝いも、学校での当番活動や係活動と同様だと思います。調査データによると、「家の手伝い」をしている子どもは小学生で7割もいます(図)。


【図】ふだんすること(学校段階別、経年比較)

注)「よくある」+「ときどきある」の%
出典:ベネッセ教育研究開発センター「第2回子ども生活実態基本調査報告書



でも「手伝い」と言ってしまうと「自分がやらなくてもどうにかなる」という感覚を持つかもしれません。ですからわたしは、「手伝い」ではなく、「役割」として与え、「あなたがいなければみんなが困る」という状況をつくり出せば、子どもの責任感が増すのではないかと考えます。そして、もし子どものほうから「手伝って」と言われたら、その時こそ、子どもの仕事の手伝いをしてあげてください。すると、子ども自身が感謝の気持ちを抱き、手伝うことの大切さを実感できると思います。
家での役割を「当番」と「係」に分けるのも良いかもしれません。トイレ掃除などは当番制にして家族全員で順番に行う。また、「旅行係」「お花係」など、得意なことや好きなことを生かして、家族の役に立つことを係として行うというのはいかがでしょう。子どもたちが、そうした経験を積み重ねるなかで、人に役立つことをしようという気持ちが強くなり、更に、何か家族に問題が起こったときに自分から問題を解決しようとする態度も育まれるのではないでしょうか。


プロフィール


小泉和義

ベネッセ教育総合研究所 主任研究員。全国の小学校、中学校、高等学校などの現場を取材し、子どもたちの実態や学校での指導課題を踏まえ、「今」と「これから」の教育に必要なことは何かを発信し続けている。

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