学校では今 【第1回】どうして学校の宿題はこんなに多いの?-小泉和義-

わたしは現在、学校向け情報誌編集の仕事をしています。そして、小学2年生と高校3年生の父親でもあります。今回は小学校の宿題の話をします。



昔より今のほうが宿題が多い?

長男が小学生のころと比べると、小2の次男が取り組む宿題の量は多いと感じます。具体的には、漢字練習や算数プリントに加えて、音読・読書・日記があります。宿題をすませるのに、1時間を超えることもあります。特に小学校低学年のお子さまのいる保護者の中には、「宿題の量が多いな」と感じているかたもいるのではないでしょうか。実際に、ベネッセ教育研究開発センターの調査によると、10(平成22)年前と比べて宿題の量は増えているようです(図1参照)。

【図1】宿題の頻度と1日あたりの量(経年比較)小学校 教員


※1日あたりの宿題量(平均時間)は、宿題を「毎日出す」~「月に1回くらい出す」と回答した教員のみを対象とし、「15分」を15分、「1時間」を60分、「それ以上」を75分のように置き換えて、無回答・不明を除いて算出している。
※出典:「第5回 学習指導基本調査(小学校・中学校版)・ダイジェスト版 」(ベネッセ教育研究開発センター)



先生が宿題を出す3つの理由

なぜ、学校は宿題を増やしたのでしょうか。わたしがいろいろな学校の先生方から伺った話をまとめると、その理由は大きく3つに整理できます。
1つめは、2011(平成23)年度からスタートした新しい学習指導要領による影響です。この学習指導要領のもとで、教科書のページ数が25%も増え、基礎的・基本的な知識や技能だけではなく、それらを活用した「考える力」や「判断する力」「表現する力」の育成も目指しています。このような力を育むためには、教室の授業に加えて、授業で習ったことを家庭で復習してしっかり身につけたりするなど、家庭での学習がとても大事になってきたのです。
2つめは、自分から学習する習慣を育むためです。毎日決まった時間に机の前に向かって勉強する習慣が身についている子どもとそうでない子どもでは、その後の学力に差が出るという調査結果もあります。
3つめは、苦しいことや嫌だと思うことをがまんして行う忍耐力の育成です。先生方からは、最近はすぐに答えを知りたがったり、苦しいことを避けようとしたりする子どもが多いと伺います。「なんでこんなにたくさん漢字練習をさせる必要があるのだろう」と思うかもしれません。何度も繰り返し書くことで、定着させようというだけでなく、「面倒なことをがんばってやり遂げる力を育てたい」という理由もあるのです。



「宿題」は子どもをほめる絶好のチャンス

上記の理由の中で、わたしは、特に3つめの理由が大事だと思っています。なぜなら、これからの社会では正解のない問題がたくさんあり、そうした問題に出合ったときに、簡単にあきらめずに粘り強く答えを見つけ出そうとする力が、ますます必要になるからです。「宿題はやったの?」と声をかけるだけでなく、お子さまが大変な宿題をやり終えたとき、「よく最後までがんばったね!」とぜひほめてあげてください。ほめられることで、粘り強くがんばる姿勢が身についていき、それが自信にもつながります。
かくいう我が家で「ゆっくりじっくり」の息子が宿題を取り組む様子を横目で見ていると、つい「お風呂に入る時間がなくなるから、もっと早くやりなさい」と言いたくなります。でも最近はそれをぐっとこらえて、漢字が1行書けたら「丁寧に書けたね。あと、○行がんばってみよう」と声をかけ、できるだけ見守るようにしています。
「やればできる」という言葉は、実際にできた人にしかわかりません。子どもには、宿題をやり終えた時に、「やったらできた」という実感をぜひ持たせてほしいと思います。


プロフィール


小泉和義

ベネッセ教育総合研究所 主任研究員。全国の小学校、中学校、高等学校などの現場を取材し、子どもたちの実態や学校での指導課題を踏まえ、「今」と「これから」の教育に必要なことは何かを発信し続けている。

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