中学校の「武道必修化」に不安を感じる保護者は約7割!
アンケート期間 2012/04/18~2012/04/19 回答者数:2,607人
アンケート対象:本サイトメンバー 小学5・6年生、中学生の子どもを持つ保護者
※百分比(%)は小数点第2位を四捨五入して表示した。四捨五入の結果、各々の項目の数値の和が100%とならない場合がある
2012(平成24)年度から中学校では新しい学習指導要領が施行されました。これにより、お子さまは体育の授業で「ダンス」と「武道」を必ず習うことになります。今回は小学5・6年生と中学生の保護者を対象に、武道を取り入れた体育の授業に対するお子さまの反応、保護者の感じ方、不安があるとすれば何に対してかなど、武道の必修化についてさまざまな質問をしています。
約85%の保護者が、武道が必修化されることを知っている!
最初に、新学習指導要領の主な変更点についてご存じかどうかを伺いました。
※小5~中3の保護者に答えていただいています。
【図1 新学習指導要領の主な変更点をご存じですか?】
新学習指導要領の主な変更点のうち、「知っている」という保護者が最も多かったのは、「武道が男女ともに必修となる」こと。約85%に達します。
武道必修化に次いで認知度が高かったのは、「ダンスが男女ともに必修となる」ことで、80%でした。
「授業時数の増加」「教科書のページ数の増加」は、ともに60%前後でした。
ちなみに、2012(平成24)年度から中学校で新学習指導要領が施行されることをご存じかどうかを伺ったところ、「知っている」というかたは約77%にとどまりました。つまり、武道やダンスの必修化のほうが、新学習指導要領の実施時期よりも保護者の間に認知されているということになります。
中学校からの説明は「ない」という保護者が8割以上!
続いて、武道の必修化についてお子さまの中学校から説明があったかどうかを伺いました。また、説明の仕方と内容についてもお聞きしています。
※中学生の保護者にのみお答えいただいています。
お子さまの中学校から、武道の必修化についての説明が「あった」という保護者は、14.2%。一方、説明は「なかった」という保護者は、85.8%に上ります。説明していない学校が多いようです。
【図2 お子さまの中学校から、武道の必修化について説明が「あった」というかたに伺います。武道の必修化について、中学校からどのような方法で説明がありましたか? あてはまるものをすべてお選びください】
では、説明が「あった」場合、どのような方法だったのでしょうか。結果は、「説明する場があった」という保護者が約39%で最多。「文書で説明があった」という保護者が約32%で続きました(図2参照)。
中学校から説明された内容を具体的にお聞きしたところ、次のような声が寄せられました。
●前年度に、武道の必修化を告知する学校だよりが配られました。何問かアンケートもついていて、用具は購入が良いか、貸し出しが良いか、希望する武道は何かなどを聞かれました
●年度はじめのPTA総会で毎回配られる冊子「学習の手引き」に、武道の必修化の告知ページがあり、取り組みの概要が書かれていました
●保護者向けに学校からプリントが配られましたが、内容は単なる連絡。武道が必修化されたことと、柔道を行うから柔道着を用意してほしいことを伝えるだけのものでした
●PTAの会合で先生の口から聞きました。もっとも、武道が必修化されたことと、子どもの安全を心がけることを伝える、ほんの一言か二言なので、説明と言えるかどうかはわかりません
競技は「柔道」、本格的に始まるのは「10月」以降!
では保護者は、お子さまが通う中学校の体育の授業で、武道の何の競技が、いつごろから実施されるかをご存じでしょうか。ご存じのかたには、実施内容と開始時期についても伺っています。
※中学生の保護者にのみお答えいただいています。
【図3 お子さまの中学校の武道の授業で、何が実施されるかを「知っている」というかたに伺います。お子さまの中学校の武道の授業では、何が実施されますか? あてはまるものをすべてお選びください】
【図4 お子さまの中学校の武道の授業が何月ごろ行われるかを「知っている」というかたに伺います。お子さまの中学校の武道の授業は、何月ごろ行われますか? あてはまるものをすべてお選びください】
お子さまが通う中学校の体育の授業で実施される武道の内容を「知っている」という保護者は47%。いつごろから実施されるかを「知っている」という保護者は12.8%でした。つまり、実施内容については53%、開始時期については87.2%の保護者が「知らない」と答えているわけです。武道の授業に関する情報は、保護者の間に十分には伝わっていないのかもしれません。
実施内容を具体的にお聞きした図3では、最も多かったのは「柔道」で約75%。2位「剣道」が約30%ですから、「柔道」のダントツぶりがわかります。
また、開始時期は「2月」が約30%でトップ(図4参照)。そして「1月」「11月」「10月」「12月」がわずかの差で続いています。
子どもに「不安はない」ように見える!?
次に、保護者から見て、お子さまが武道を行う体育の授業に不安を感じているように見えるかどうかを伺いました。
※中学生の保護者にのみお答えいただいています。
最も多かったのは、子どもは武道を行う体育の授業に対して「不安はない」ように見えるという保護者。約4割を占めています。一方、「不安がある」ように見えるは2割ほどでした。
それぞれの理由を見てみましょう。
☆「不安はない」ように見える理由
●子どもは以前から柔道を習っているため
●先日、子どもが初めて柔道着を着たときは、帰宅してその状況をこまかく教えてくれました。たたみ方を実演してくれたほどです。初めて習う柔道にわくわくしているように見えます
●昨年度から柔道の授業があり、子どもとしてはかなり楽しかったようです
☆「不安がある」ように見える理由
●授業で何の競技をするのかを学校から説明されていないので、子どもには「武道」という言葉から「ケガをしそう」「痛そう」といったイメージばかりが浮かんでくるようです。親のわたしも、とても不安です
●授業内容は柔道だそうですが、息子にはまったく経験がありません。未経験の競技に対する不安と、試合中にケガをするのではないかという心配が入り交じっているようです
●子どもの学校ではもう柔道の授業が始まっていて、小柄なうちの子は体格の大きな友達に手も足も出ず、悔しい思いをしているようです
ただ、子どもに武道を行う授業への不安があるかどうかは「わからない」と答えるかたも約3割いらっしゃいます。その理由としては、次のような声が寄せられました。
●学校から何の説明もなく、親子で武道を行う授業について話をしたことがないから
●まだ授業で武道を習っていないため、子どもはピンとこないのか、その話をしません
子どもは「楽しみにしていない」ように感じる保護者も多い!
では保護者には、お子さまは武道を取り入れた体育の授業を楽しみにしているように見えるでしょうか。
※中学生の保護者にのみお答えいただいています。
結果は、子どもは武道を取り入れた体育の授業を「楽しみにしていない」ように見えるという保護者が4割を超え、最も多くなりました。一方、「楽しみにしている」ように見えるというかたは2割に届きませんでした。
武道を取り入れた体育の授業に対して、子どもは「不安はなさそうだが、かといって楽しみにしているとも思えない」と感じている保護者が多いということでしょうか。
では次に、「楽しみにしていない」ように見える理由、「楽しみにしている」ように見える理由をそれぞれご紹介します。
☆「楽しみにしていない」ように見える理由
●息子は、もともと体育が苦手だから
●興味がなさそうだから。「希望者だけが受ける選択制にすべきだ!」と言っています
●経験がないので、ケガをしないか心配しているようです
☆「楽しみにしている」ように見える理由
●「武道はしたことがないから楽しみだ」と言っています
●今までに受けたことがない授業なので、わくわくしているようです。また、武道に対するあこがれもあるようです
●子どもの中学校では、2月にクラス対抗の剣道大会をする予定です。うちの子どもは選手ではないものの、クラスを優勝させるために友達と相談をしたり、技を教え合ったりと、楽しそうにしています
一方、子どもが武道を取り入れた体育の授業を楽しみにしているかどうかは「わからない」という保護者も、約4割。理由としては、「武道を行う授業についての学校からの情報が少なく、家庭で子どもとそのことについて話す機会がないから」といった声が目立ちます。「不安があるかどうかがわからない」というかたが挙げた理由によく似ていました。
保護者の捉え方は、「良いことだと思う」「思わない」が半々!
続いて、武道の必修化を保護者ご自身がどう感じているかを伺いました。
※小5~中3の保護者に答えていただいています。
武道の必修化を「良いことだと思う」保護者は50.5%、「良いことだと思わない」保護者は49.5%でした。賛否がほぼ同じ割合で分かれています。
それぞれの理由として、次のような声が寄せられています。
☆「良いことだと思う」理由
●日本の文化を身をもって感じる機会になると思うから。特に女子にはあまり体験する機会がないはずなので、授業に取り入れてくれるのはありがたいです
●礼儀を身につけることができると思うから。「礼に始まり礼に終わる」と言われる武道を通して、人前での立ち居振る舞いはどうあるべきかをわかってほしいと思います。また、精神的にも鍛えられると思います
●肉体だけでなく、精神も強くなるはずだから。どの子どもにもそういう機会をつくるためには、必修化するのが一番だと思います
●護身術を身につけられそうだから
☆「良いことだと思わない」理由
●必要な用具を買う必要があり、費用がかかるから。また、子どもがケガをするのではないかという不安も大きいです
●なぜ武道だけが必修化されるのかがわからないから。日本の伝統の良さを伝えることは、わたしも大切だと思います。しかしそれなら、華道や茶道などでも良いのではないでしょうか
●指導者がいるのかどうかがわからないから。武道は専門知識をしっかり身につけた人が教えないと、安全面に不安が出るような気がします。日本人が培ってきた精神のようなものを教えることは大切ですが、ほかの教科・科目よりも子どもがケガをする可能性が高い武道を必修化する必要はないと思います。うちの子どもが通う中学校の場合は柔道を取り入れるので、特にケガが気がかりです
7割以上の保護者が、武道を取り入れた授業に不安あり!
最後に、保護者が武道を取り入れた体育の授業に対して不安があるかどうかを伺いました。不安があるとしたら、何についてかもお聞きしています。
※小5~中3の保護者に答えていただいています。
【図5 保護者のかたは、武道を取り入れた体育の授業でどのようなことを不安に思われますか? あてはまるものをすべてお選びください】
武道を取り入れた体育の授業に「不安がある」という保護者は、7割を超えました。
何に対して不安を感じるかをお聞きした図5を見ると、「ケガをするかもしれないこと」を挙げるかたが8割近くを占め、最も多いことがわかります。また、「指導できる教員がいるか」を挙げるかたも多く、7割を超えています。
武道を取り入れた体育の授業に不安に感じる理由をお聞きしても、次のように、「ケガ」「指導者」に対する懸念を挙げるかたが目立ちます。
●うちの子は体が弱く、体格も小さいので、無理なことをしてケガをしないだろうかと心配しています
●子どもの中学校では昨年度、体育の授業で何回か柔道を行いましたが、うちの子はケガをしそうになりました。体が大きくないから投げられてばかりで、苦痛だったようです。また、競技中にふざけて、思わぬアクシデントが起きることもあるのではないでしょうか
●指導者によっては、しっかり準備をしなかったり、子どもに無理な練習をさせたりして、ケガや事故を招きやすいのではないかと気がかりです
一方、武道を取り入れた体育の授業に対して「不安はない」という保護者からは、その理由としてこのような声が寄せられています。
●子どもの中学校では剣道が行われるため、柔道ほどケガの心配はないだろうと思っています
●娘の学校では柔道が行われますが、ご自身も有段者であり指導経験も豊富な人が指導してくれるので、心配していません
●安全性は、保護者も先生もそして世間も、気にしていること。学校としても十分に配慮して授業を行うと思います。また、転んでひざをすりむいたり、つき指をしたりする程度のケガは、体育の授業である以上、あっても仕方がないことでしょう。安全への気配りは不可欠ですが、安全ばかりを気にしても、充実した授業にはならないと思います
武道を取り入れた体育の授業に不安を感じる保護者は、7割以上いらっしゃいました。お子さまの体を心配するかたが圧倒的に多く、中でも、柔道でのケガやアクシデントに対する懸念が目立ちました。
武道の必修化に関する学校からの説明の有無を中学校の保護者にお聞きしたところ、「ない」というかたが8割を超えています。学校からの情報が少ないことも、保護者が授業で行う武道に対して不安を抱く要因の一つなのではないでしょうか。
武道を取り入れた授業は始まったばかり。お子さまが安心して授業を受けられるよう、安全な環境を整えてほしいですね。