「行動体力」と「防衛体力」~運動系クラブ活動で体力増進を

入園・入学・進学の季節。新学期になるとお子さんは新しいコミュニティーの中での生活が始まります。保護者の方々としては、勉強面と同時に、心身における発育に関して心配される季節だと思います。
近年は、学校での運動系クラブ活動や部活動に加え、サッカーチームや野球チームなど、学校外でのスポーツクラブに参加する子どもたちが増えてきています。そんななか、「うちの子は練習に耐えられるかしら?」、または「運動クラブに入ったけれど、うちの子は体力がないからついて行けなくて……」「体力がないから、勉強と両立できるかな?」など、さまざまな悩みをお持ちの保護者のかたも多いのではないでしょうか。



体力は「行動体力」と「防衛体力」に分けられる

お子さんの身体が小さかったり、肥満気味だったりすると、「運動クラブに入るのは、体力的に厳しい」と思う保護者のかたは多いのですが、最初に、「体力」という言葉について触れておきたいと思います。
ひと口に「体力」と言っても、さまざまな要素があり、大きく「行動体力」と「防衛体力」に分けられます。「行動体力」というのは、筋力や瞬発力、持久力、柔軟性などのことで、一般的に運動をする時に「体力」と言う時は、この「行動体力」を指します。
一方、「防衛体力」というのは、免疫力、外部の変化(温度や湿度など)に対する適応力などを指します。少々の寒さでは風邪をひかない人などを「体力がある」と言ったりしますが、これは正確には、「防衛体力がある」ということなのです。



小学生までの「体力」はそれほど重要ではない

運動をする時の「行動体力」ですが、ここで覚えておいていただきたいのは、「筋力や持久力については、幼児から小学生までの年次では、特別にトレーニングする必要はない」ということです。この時期に最も大切なことは、「巧みさ」を身につけることだからです。手足の使い方、バランスのとれた身体の動かし方、ボールや道具を扱う感覚など(=巧みさ)は、10歳くらいまでのゴールデンエイジと呼ばれる年次までに身につくもので、中学生以降に身につけようとすると、簡単にはいかないものなのです。逆に筋力や持久力などの「行動体力」は、男子では17~18歳、女子では15~16歳の成長期と呼ばれる、≪身体ができあがる時期≫から、それ以降でも十分身につけることができます。従って、小学生のうちは、「運動に親しんで」「巧みさ=感覚、センス」を磨き、中学生以降に、持久力や筋力をつけていくのが、運動能力を高めるうえでは理想的なのです。



運動クラブで、将来につながる「巧みさ」を身につけよう

もし、体力面が不安で、お子さんを運動クラブに入れることをためらっているかたがいらっしゃったら、むしろ「巧みさ」を身につけるチャンスとして、ぜひお子さんにさまざまな運動クラブに参加することをすすめてあげていただきたいと思います。

運動クラブには、身体の大きい子、小さい子、体重の重い子、軽い子等々、さまざまな子がいます。もちろん誰もが同じように上手くなれるわけではありません。お子さんが、ほかの子と比べて上達が遅れていると感じることもあるかもしれません。しかし、今、ほかの子と比べて劣っていることは、それほど大きな問題ではないのです。
10歳以下の年次での運動の上手下手は、多くの場合、その運動を始めた時期が早いか遅いかに左右される場合が多いのです。またこの年次では、身体が大きく力が強い子のほうが、身体が小さい子や肥満気味の子より、運動ができるように見える傾向があります。しかし、最初はほかの子と比べ劣っていても、ゴールデンエイジ(10歳前後)に「巧みさ」を身につけておくことで、成長期に身体ができあがってきた時に、ほかの子たちに見劣りしない運動能力を発揮できるケースが多いということも覚えておいていただきたいと思います。
また、ゴールデンエイジに運動に親しむことで、「巧みさ」を身につけることは、お子さんが将来、どんな運動をする際にも必ず役に立ちます。小学生の時にサッカーをしていて、なかなか上達しなかった子が、中学校でバスケットを始めたら急に上達した、というような例も多く見られるのです。これは、小学生の時にサッカーで身につけた「巧みさ」がバスケットボールで花開いたケースです。
また、「行動体力」という点でも、この年代の子は、特別ハードなトレーニングをしなくても、運動を続けているうちに、自然と筋力、持久力も身についてきます。

かつては、少年野球や少年サッカーのクラブで、指導者が精神論優先のハードなトレーニングをしている傾向がありました。しかし、最近の運動クラブの多くは、特に幼児、小学生向けには、「運動に親しむ」「運動を楽しむ」ということをコンセプトに練習メニューを作っていることが多くなっています。ぜひ、「ほかの子との比較」ではなく、お子さんの「将来の可能性を広げるために」、運動クラブへの参加をすすめてあげてください。


プロフィール


深代千之

東京大学大学院 総合文化研究科 教授。(社)日本体育学会理事、日本バイオメカニクス学会理事長、日本陸上競技連盟元科学委員。文部科学省の冊子や保健体育教科書の作成にも関わる。*主な著書:「運動会で1番になる方法」「運脳神経のつくり方」など

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