「新規採用」の先生、実は多くが「講師」

新規に採用された先生といえば、春に大学を卒業したばかりの「新人」を思い浮かべるのが普通でしょう。しかし、文部科学省の調査によると、2009(平成21)年度に採用された公立学校教員のうち、新卒者が占める割合は2~4割程度で、実際には少数派であることがわかりました。けれども問題は、そればかりではありません。

調査結果によると、採用された教員が「新卒」なのは、小学校では約4割となっているものの、中学校では約3割、高校は約2割しかいませんでした。
では、もっとも多い前職は何かと言うと、それは「臨時的任用および非常勤講師」で、小・中学校では約4割、高校では約5割が、非常勤講師などとして学校現場での授業経験があるということになります。
ちなみに、前職が「民間企業」だったのは、小学校が2%、中学校が3%、高校が4%。残りは、教育委員会事務局(行政職)から学校(教育職)に配置替えになった者などでした。
難関である教員採用試験は、一回では合格できないので、落ちたあとも非常勤講師をしながら採用を目指すというルートが、昔からありました。しかし、2008(平成20)年度以前の文科省調査には、前職として「非常勤講師」の項目がなく、「その他」に含められていたため、全国的な実態は明らかになっていませんでした。新採教員の間では「新卒」よりも「非常勤講師経験者」のほうが多いということは、やはり驚きとしか言いようがありません。

ここで、「非常勤講師経験者が多いと、なぜいけないのか」と、疑問に思われるかたもいるでしょう。まったくの新人が教えるよりも、非常勤講師として授業経験を積んでいる者が多いほうが良いじゃないか……という考え方も成り立ちます。
しかし、逆に見れば、正式に採用される前に、まったく授業経験のない多くの新卒者が、非常勤講師として子どもたちに授業をしている、ということも意味するのです。
正規雇用の新規採用教員に対しては、学校の内外で1年間の特別な研修(初任者研修)をすることが、教育委員会に義務付けられています。これに対して、非正規雇用の非常勤講師の場合、教育委員会には研修を行う義務がなく、授業経験がない新卒者であろうと、研修を受ける機会がまったくないというのが実情なのです。
さらに、以前にも当コーナーでお伝えしたように、人件費抑制のため、教員全体に占める非正規教員の割合は年々高くなっています。地方自治体の苦しい財政事情を考えれば、今後も授業経験のない新卒者が、非常勤講師として子どもたちを教えるケースが、ますます増えていくことでしょう。

教員の指導力を向上させることが大きな課題となっていますが、非正規雇用である非常勤講師の指導力の向上を図ることも、現実的問題として今後、必要ではないでしょうか。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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