【自由研究のヒント】夏祭りで見つける地域の歴史や特徴

夏といえば「お祭り」。日本各地には、時期や形はさまざまですが、「夏祭り」があります。小さなものでは近所の神社や公園で行われるお祭りから、大きくは京都の祇園祭や青森のねぶた祭りのようなものまで、数多く行われています。

夏祭りには、「お盆に先祖の霊を迎える」「暑い時期に伝染病が流行しないよう神様に祈願し、邪気をはらう」という意味もあったようです。こうした夏祭りには、その地域独自の文化が息づいています。この夏祭りを研究の糸口にすることで、より自分たちの住む町や市、県のことを知り、地域の人たちとのコミュニケーションの大切さを学ぶ機会にもなります。


<調べる>お祭りの歴史や、盆踊りの振り付けなど、お子さまが興味ある切り口で!

夏祭りに注目すると、そこにはさまざまな要素があることがわかります。まず、いつごろ、なぜそのお祭りが始まったのか、歴史を調べてみるのもよいでしょう。お祭りの歴史を調べることは、郷土の歴史を知ることにもつながります。そのお祭りを守り、伝え、反映させてきた地域の人々の思いを知ることにもつながります。地域の歴史をよく知っている人にインタビューしてみるのもよいでしょう。

さらに夏祭りといえば盆踊り。その踊りや歌の起源にも意味があります。
有名なのは岐阜県の郡上おどり。7月の中旬から9月の上旬まで、1か月以上も続くという盆踊りで、クライマックスの数日間は夜通し踊ります。
江戸時代のお殿様が、領内に住むすべての人々の親睦を図るため、それぞれの村々で踊られていた盆踊りを城下に集め、士農工商の分け隔て無く楽しむことを奨励したため、次第に盛んになっていったとのこと。以来、約400年にわたって城下町郡上八幡で歌い踊り続けられてきました。踊りは10種類を数え、今では、徳島の阿波踊りに次いで多くの観光客が集まる有名なものとなっています。


<体験する>身近なお祭りに参加して、各種リサーチを!

有名で大規模な夏祭りでなくとも、身近でもさまざまなお祭りがあります。
たとえば東京の葛飾区では、今年70もの夏祭りが開かれます。何といっても、夏祭りを知るには、実際にお祭りの活気に触れるのが一番。近くのお祭りに出かけていって、そこで踊られている盆踊りの歌や振り付けを調べてみたり、人出が多い時間帯を調べて気温と比較したり……。どんな食べ物が人気があるか実際に観察してみるのもよいでしょう。

もし可能であれば、夏祭りの運営の一部にでも関わらせてもらうのもよいかもしれません。地域のお祭りは、地域の人たちが当番で運営にあたっていることも多く、お祭りによっては何らかの役割で参加させてもらえるものもあるでしょう。中には子ども神輿(みこし)のようなものもあります(参加する場合は十分に注意してくださいね)。実際に関わることで、夏祭りが多くの人の共同作業によって運営され、伝えられてきたことを理解し、さらに自分もそのコミュニティーの一員であることを実感できます。こうした機会に、年長のかたに昔の夏祭りの様子を聞いたり、子どものころに着ていた衣装について教えてもらったりするのも貴重な経験です。


お祭りをめぐるさまざまな文化に注目してみる

このほか夏祭りには、お神輿や山車、提灯(ちょうちん)や団扇(うちわ)、花火など、お祭りを彩るさまざまなアイテムもあります。
たとえばお神輿には漆塗りや木工の優れた技術が生かされているなど、地元の優れた伝統工芸で祭具が作られていることもあるので、こうした「モノ」に注目してもおもしろいでしょう。花火については、東京・墨田区の両国花火資料館のように、わかりやすく展示されている施設もあります。

また、お祭りの時に食べることが決まっているお料理がある地域もあります。たとえば9月に開催される大阪・岸和田市のだんじり祭りでは、各家庭でワタリガニ・おでん・くるみ餅を食べるそうです。なぜそれを食べるようになったのかなど、お祭りを通じて郷土の食文化を調べるのもおもしろい切り口になります。


テーマ選びとまとめかたのポイント

○お祭りの特徴を調べ、地域の歴史を知る
お祭りの起源や時代ごとの変化を調べる。文献を調べたり、さまざまな年齢層の人に話を聞いたりして、エピソードも踏まえてまとめる。

○盆踊りや歌を調べ、そこに込められた意味や願いを考える
同じ歌でも振り付けが違う地域を調べたり、地域ごとの衣装(浴衣の模様など)の違いやその意味を調べたりして比較する。

○お神輿やお祭りの道具など、使われている素材や技術を調べ、特徴を知る
それぞれの道具にどんな意味が込められているのか、使われている素材はどこから来たものか、何年くらい使われているのか、地域との関わりなどを調べてまとめる。

○お祭りの際に出される料理や食材を調べ、その意味や地域の特色を考える

夏祭りは、古くからたくさんの人の手によって、大切に受け継がれてきた行事です。そこには豊かな収穫や、健やかな日々への願いなどが込められています。夏祭りを調べることで、自分たちがそうした地域や歴史の中で生きていることを実感し、年長のかたを敬い、身近な人々と協調することの大切さを知るきっかけにしてください。


プロフィール



「手に職」で未来を拓く生き方発見サイト「ニッポンのワザドットコム」編集長。伝統工芸を中心に、現場の職人さんを多数取材。日本が世界に誇る技の魅力を独自の視点でレポートしながら、「日本の技」を後世に伝えるための≪学びの情報≫をわかりやすく伝えることを目指す。

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