食べ残しをする子どもに「もったいないお化けが」はNG!?4つの理由と対応方法

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お子さまの食べ残しを減らそうと「もったいないお化けが出るよ」などと伝えていませんか?  実は、その言葉、あまり効果がないかもしれません。食べ残しを減らすには、食べ残してしまう理由を見極め対応していくことが大切です。
食育カウンセラーで『子どもも親もラクになる偏食の教科書』『食べない子が変わる魔法の言葉』などで知られる山口健太さんに食べ残しへの正しい対応を伺いました。

この記事のポイント

食べ残しが気になる子どもに「もったいないお化けが出るよ」は逆効果?

山口さん:食べ残してしまうことには、お子さまなりの理由があります。味が苦手、硬くて食べづらいなどさまざまな理由で食べられず、残してしまうわけです。
それなのに、「もったいないお化けが出るよ」と言われても、自分の気持ちを無視されているようで、お子さまには響きません。それどころか、無理に食べさせることで食材や食べること自体が嫌いになってしまう可能性もあるでしょう。

実際に私が受けた相談でも、こんなケースがありました。お子さまが食べ残した際にお化けや鬼が叱る動画を見せて、食べ残しを防ごうとしていたところ「残したらまた怒られる」「お化けが来るかも」という恐怖感から食卓に着くことができなくなってしまったり、鬼が怖くて食事になると嗚咽をするようになったりした事例もありました。
怖がらせて恐怖心を植え付けたり、食材の作り手が悲しむと罪悪感に訴えたりすることは、一時的には食べるようになったとしても、根本的な解決にはなりません。食べることにネガティブな印象を持ってしまっては本末転倒です。

食べ残してしまうことを責める前に、食べられない理由に寄り添えるといいですね。お子さまも「何が何でも食べたくない」のではなく、おいしく楽しく食べられるなら食べたいと思っているはずです。

子どもが食べ残してしまう「4つの理由」

山口さん:子どもが食べ残してしまうのには、4つの理由が考えられます。大人が見落としがちな点もあるので、まずはどのような点で食べづらさを感じるのかをしっかり押さえておきましょう。

1:機能的な理由

一つ目は、咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)など食べることの一連の流れに必要な口腔(こうくう)機能に何らかの課題があることです。一口に食べるといっても、次のような機能が求められます。

  • 食べ物を前歯でかじりとる
  • 舌を使って奥のほうに持っていく
  • 奥歯ですりつぶし、唾液と混ぜ合わせてのみ込みやすい食塊(しょっかい)にする
  • のみ込む

口腔機能に課題があると、このステップの中でつまずいてしまい、うまく食べることができません。「離乳食を終えて、普通食になったんだから何でも食べられるはず」と思っているとこの問題が起こりかねません。大体のものは食べられても、硬いものをかみ砕くのが苦手といった機能的な課題を見落としてしまうこともあるでしょう。

私の著書『子どもも親もラクになる偏食の教科書』を監修いただいた管理栄養士の藤井葉子先生によると、口腔機能が原因で食べづらさを抱えている子どもは年々増えている印象があるそうです。顎や骨格などの成長につれて改善されていく部分もあるので、焦らずに様子を見ていけるといいですね。

機能的な課題があるのなら、食材の提供方法を工夫することで食べられるようになる場合があります。硬いものが苦手なら細かく切る、すりつぶすなどです。

2:時間と量の問題

二つ目は時間と量が適切でないケース。朝昼晩の食事のリズムが崩れてしまい、食べるべき時に食べられなくなってしまっている状態のこともその1つです。

たとえば、お子さまが夕ごはんをあまり食べなかった時に、栄養がとれているかや、おなかが空いてしまわないかが心配で、何時間後かに補食やおやつを出したりしていませんか? これは、食事のリズムを乱すことにつながってしまうため要注意。くり返していると、子どもも「夕食を全部食べなくても、あとから好きなものを食べさせてくれるからいいや」「とりあえず、好きなものだけ食べておけばいいや」となってしまいます。よかれと思ってやっていることが、裏目に出てしまうんですね。

そもそも、多くの子どもは出されたメニューを食べる時の順番が、次のように決まっています。

  • まず、好きなものを食べる
  • 次に、食べたことがあるものや、食べられそうなものを食べる
  • 最後に、苦手なものや、見慣れないものを、つんつんしたり、においをかいだりして食べられるかもと思ったら口に入れる

子どもは、基本的には好きなものから食べます。好きなものを食べても、まだおなかが空いていれば、他のものにも手を伸ばしてみようとする余地が生まれます。それなのに、好きなものだけ食べて、苦手なものは食べ残しても、あとから補食や好きなおやつが出されるのであれば、どうなるでしょうか。好きなものだけを優先して食べてしまい、好きなもの以外を食べる理由がなくなります。そのため、晩ごはんを食べられなくても、食事のあとから好きなものが食べられる状況をつくるのは避けましょう。

3:感覚的な問題

食べ残してしまう理由の三つ目は、見た目やにおい、食感、温度などが合わないことです。同じ食材でも、見た目や食感が違うと食べられないといったケースなどがありますよね。たとえば、じゃがいもの場合、フライドポテトのようなスティック状のものなら食べられるのに、肉じゃがのようなごろっとしたものだと食べられないということなどがあるでしょう。感覚は感じるお子さまによってさまざま。保護者のかたからすると同じじゃがいも料理でも、お子さまにとっては、まったく別物に感じられることもあるのです。

まずは、見た目であれ、形であれ、食感であれ、お子さまの好きな感覚を理解するようにしましょう。そうすれば、苦手な食材の克服に役立てられます。私は講演会でもよく「苦手なものでも、一口は食べさせたほうがいいですよね」と質問を受けるのですが、そんなことはありません。苦手なメニューは無理してがんばらせなくていいんです。そうではなくて、好きな感覚や調理法に近付ける工夫をしてあげることが大切です。

たとえば、フライドポテトのようなスティック状で揚げたものが好きなお子さまであれば、苦手なにんじんにトライする際、同じようにスティック状に切って揚げてみる。そうすれば、口にすることへのハードルが下がるはずです。

未就学児や小学校低学年くらいであれば、食材を判別して好き嫌いを分けているというよりは、においや形、食感といった感覚で好き嫌いを選別しています。食材で選別するのは、もう少し大きくなってから。そのため、苦手なものを好きな感覚のものに近付けるというのが効果的です。

4:知らないという問題

四つ目は、食べたことや見たことのない知らない食べ物だから食べられずに残してしまうというものです。大人でも海外旅行などで未知の食べ物に出合うと、食べるのに抵抗感が生まれますよね。子どもならなおさらでしょう。それなのに「一口、食べてごらん」と促されても、怖さや不安が増すばかりとなってしまいます。

大切なのは、ハードルを下げスモールステップで見知らぬ食べ物にアプローチする方法を教えてあげることです。「一口食べて」というより「においかいでみたら?」「ペロッとしてみたら?」というほうが抵抗感は少ないですよね。それで大丈夫そうだったら「いけそう? そしたら、かじってみたら?」と段階を踏んでいってあげましょう。

私の著書『食べない子が変わる魔法の言葉』でも、このアドバイスを紹介したのですが、読者のかたや講演会の参加者のかたから「口を付けるようになりました」「すごく食べるようになりました」と驚くほど多くの反響をいただきました。ハードルを下げて抵抗感の少ない提案をすることは、大人の私たちが想像する以上に効果があるようです。

食べ残しの理由を判別するには?

お子さまの食べ残しは、上でご紹介した食べられない理由のどれに当たるかを見極め、それに応じた対応をしてあげることが大切。とはいえ「どうやって理由を判別すればいいかわからない」ということもあるでしょう。

そこで、私の著書『子どもも親もラクになる偏食の教科書』にあるチェックリストをご紹介します。お子さまの状態に合ったものをチェックし、食べられない原因が「機能的問題」「時間と量の問題」「感覚的問題」のどこにあるのかを見極めることにお役立てください。なお「知らないという問題」については、初めて食べるものや見たことのない料理が当てはまるので、チェックリストは割愛しています。

機能的な問題

□ ほとんどかまずに丸のみしてしまうことがある

□ 口に入れてもベーっと外に吐き出すことがある

□ パサパサしたものや繊維の多い食材をよく残している

□ 顎の骨格や歯列に問題がありそう

時間と量の問題

□ 食卓に初めてのものや苦手なものが1つも並んでいない

□ 好きなものでおなかをいっぱいにしている

□ お菓子やジュースは、好きな時に好きなだけ食べられる環境にいる

□ 食べる時間と食べない時間が明確になっていない

□ ごはんを食べなくても、あとで食べられる時間がある

感覚的な問題

□ 同じ食材でも少し見た目が変わると食べられない

□ 食感により「食べる、食べない」がはっきりしている

□ 単品なら食べられても混ざると食べられなくなる食材がある

□ 特定の好きな味付け以外は食べられない

□ 周りの子の《好き嫌い》よりも明らかに食べられるものが少ない

「食べられずに食べ残す」という状況1つとっても、原因はさまざま。そこを差し置いて「もったいないお化けが出るよ」と伝えてみたところで、お子さまは自分ごととして考えることは難しいでしょう。まずは、お子さまの食べられない原因を取り除いてあげて、食べることを安全安心に楽しめるようにしてあげたいですね。

まとめ & 実践 TIPS

食品ロスや、食べ物を粗末にすることはなるべく避けたいもの。だからといって、お子さまの食べられない原因に寄り添わずに、食べることを強制してしまっては、本来、楽しいはずの食卓がつらい場になってしまう可能性も。お子さまの食べられない原因を判別し、そこに寄り添ったサポートをしていってあげられるといいですね。

プロフィール



自身の食べられない当事者経験をもとに、カウンセラー&講師として活動を開始。カウンセリングや全国での講演活動、メディア発信を通じて、保護者や保育園・幼稚園・学校の先生にメッセージを伝えている。著書に『子どもも親もラクになる偏食の教科書』(青春出版社)、『食べない子が変わる魔法の言葉』(辰巳出版)等。

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