「学校に行きたくない」と子どもが言ったらどうする? ほとんどの場合、保護者は自分の子どものことをわかっていない

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今、不登校の子どもが増えています。長期で休むことまではなくても、子どもが「学校に行きたくない」と言うことは起こりうることです。そんなとき、保護者はどういう声かけをしたらよいのでしょうか。さまざまな心理学をベースに独自の教育法を導き出した坪田信貴先生にお話を伺いました。

この記事のポイント

「学校に行きなさい」ということばの根本にある、親の思いを見直す

——子どもが学校に行きたがらない時に、どういう声かけをしたらいいでしょうか。つい「学校に行きなさい」と言いたくなりますが、このことばに効力がないのはなぜでしょう。

坪田 「学校に行きなさい」というのは命令形で、自分が思っている方向へ人を誘導するための声かけです。だから相手に響きません。そもそも、子どもが「学校に行きたくない」と言っているのに、親の言うとおりに子どもを動かそうと考えている時点で、子どもはそのとおりには動きません。

まず考え直してほしいのは、「学校に行きなさい」ということばが表している「親の思い」です。そこには大前提として「学校に行かせたい」という思いがあり、親の価値観が現れているということに気付いてほしいです。

お父さん・お母さんは、自分が話すことに耳を傾けてくれるという安心感が大事

子どもの立場に立ってみてください。大事なことは、なぜ行きたくないのかを聞くことです。行きたくない理由を解決することと、学校に行かせようとすることは切り離して考えましょう

子どもの話を聞いて、「そうか、そういう気持ちだったら学校に行きたくないよね」と心から思い、「それだったら学校には行かなくてもいいよ」と言えるくらいまで、子どもに寄り添って話を聞くことが重要なのです。そうすることで、お父さん・お母さんは「自分が思っていることを話しても怒らないし、聞いてくれるんだ」ということが子どもに伝わります。
家庭での心理的安全性が確保されることで、いつでも帰ることができる安心する場所があるから、外に出てみよう、学校に行こうというチャレンジも生まれていきます。

学校に行きたくない理由はいろいろあるでしょう。いじめがある、勉強についていけない、友達とうまくいっていない、先生と合わない、あるいは単純に眠いからということもありますよね。自分では気付いていないけれど、自律神経失調症や起立性調節障害で朝起きられないということもあります。子ども自身にも、明確な理由がわからない場合も少なくありません。

子ども自身、理由がわからない状態で、学校へ行かせるように親がコントロールしようと思っても、それは無理なこと。子どもの思いをとことん理解して、少なくとも親は味方だとわかって安心できることが、何よりも重要です。

保護者自身がどういう価値観を持っているかを確認すると、親子関係も変わってくる

——たしかに、子どものためにと思いながらも、学校に行かせることばかり考えていたかもしれません。子どもの思いをとことん理解するのは、実は難しいものですね。

坪田 保護者は、自分の子どものことなら何でもわかると思っているようですが、実はほとんどのケースで全然わかっていなかったりします。学校に行きたがらないかどうかは別にしても、一度、子どもの話をじっくり聞いてみてください。

たいていの場合、子どもの自己認識と、保護者から見た子どもの認識はズレています。たとえば保護者のかたに「お子さんはどんな子ですか?」と聞くと「すごくせっかちな子」と答えるのに、子ども自身は、自分は「おおらか」だと思っているということがあります。すると、親は子どもに「あなたはせっかちなんだから、もうちょっとゆったりしたら」と言うのですが、そう言われた子どもは「いや自分はおおらかだし、ゆったりしているから」と思っていて話がかみ合わない、ということが起こります。

——子どものことを正しく認識できているかどうか、どうしたらわかりますか?

坪田 自己分析をするための心理テスト「20答法」という方法があります。「私は」で始まる自分についての短文を20個、子どもに書いてもらいます。同時に、親から見た子どもを主語にして「○○(子どもの名前)は」で始まる短文を20個書きます。この2つを合わせて見て、どういうキーワードが並んでいるかを見てみましょう。
似たようなことばが並んでいれば、親から見た子どもと、子ども自身の自己イメージが一致している、ということになります。どこが違っているのかをよく見ることが、親にとっての子どもの見方を変えるヒントになるでしょう。

それと同時に、今度は保護者が自分自身について「私は」で始まる、子どもには「お父さんは・お母さんは」で始まる20の短文を書き出してみましょう。いちばん見えづらいのは自分自身のことです。
親自身が、実は自分はこういう価値観を持っていたんだ、と気付くことで、子どもへの声かけのしかたは違ってくるものです。子どもを学校に行かせることだけが大事だと思っているのか? ということに気付けば、きっと学校に行きたがらない子どもへの声かけは「学校に行きなさい」ということばとは、違うものになっていくでしょうね。

まとめ & 実践 TIPS

「学校に行きたくない」という子どもには、「学校に行かなくてもいいよ」と言えるくらいまで子どもの話をとことん聞くことが大切。それができるようになるためには、親自身の考え方、価値観を見直す必要があります。ほんとうの意味で子どものやる気を引き出す声かけは、Aと言ったことをBと言い換えるといった単純な魔法のようなものではありません。なぜ自分がそのことばを選んで子どもに言っているのか、一度立ち止まって考えてみることから、子どもへの効果的な声かけへと変わっていくということでしょう。

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坪田信貴先生の最新刊、「『人に迷惑をかけるな』と言ってはいけない」(SBクリエイティブ)では、子どもに向けてつい言ってしまうひとことを、視点の違うことばに変えるだけで親子関係も変わってくる、そんな声かけのポイントを解説している1冊です。

プロフィール


坪田 信貴

坪田塾塾長。心理学を駆使した学習法により、これまでに1300人以上の子どもたちを「子別指導」し、偏差値を上げてきた。起業家としての顔を持ち、人材育成、マネージャー研修なども行う。テレビ、ラジオ、講演会で活躍中。著書に「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学現役合格した話」(KADOKAWA)など多数。最新刊は10月に発行された「『人に迷惑をかけるな』と言ってはいけない」(SBクリエイティブ)。

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