「発達障害」とは?知っておきたい症状と特徴について

文部科学省の調査により、発達障害の子どもは近年増加傾向にあることがわかりました(※1)。発達障害にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる特徴を持ちます。そのため、発達障害の種類によって、望ましいコミュニケーションの方法も異なります。
今回は、発達障害の種類や症状、特徴などについてご紹介します。

発達障害っていったいどんな状態?

発達障害は、発達障害者支援法において、次のように定義されています。「自閉症、アスペルガー症候群そのほかの広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などこれに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」(※2)。このように発達障害には、さまざまな種類があります。症状は発達障害の種類によって異なりますが、言語や知的な発達が遅れたり、人とのコミュニケーションや社会性などに問題が起きたりします。

発達障害の原因には、生まれつきの脳の特性や感染症などが挙げられています。発達障害の種類によって異なります。発達障害の分類と種類、主な原因は次のとおりです。

・ダウン症候群
ダウン症候群は、染色体異常によって起こる発達障害に分類されます。染色体は、遺伝情報を伝えたり発現させたりする役割を持ちます。染色体には、22対の常染色体と1対の性染色体があり、常染色体の1つ「21番染色体」が通常よりも1本多くなると、ダウン症候群となります(※3)。

・自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症(ASD)は、自閉症やアスペルガー症候群の総称で、広汎性発達障害とほぼ同義とされています。
自閉症は、言葉の発達が遅れるほか、コミュニケーションや対人関係などにおいて障害がみられます。原因は特定されていませんが、脳の機能障害によって起こると考えられています。また、周産期に起きたなんらかのトラブルも関与しているという意見もあります。ちなみに保護者の育て方は影響しないようです(※4)。

・アスペルガー症候群
アスペルガー症候群は、比較的症状が軽度の自閉症として扱われています。そのため、自閉症と同様に対人関係に障害がみられます。しかし、言葉の発達の遅れはみられません。原因についても、自閉症と共通していると考えられています。

・学習障害(LD)
学習障害は、知的な発達に問題がないにもかかわらず、読み書きや人の話を聞いたり話したりすることが難しいことが特徴です。AD/HD・高機能自閉症などを伴う場合は、それらも含めて考慮した学習支援が必要となります(※5)(※6)。

・知的障害
知的障害は精神遅滞とも呼ばれ、知的な発達が遅れることが特徴です。症状が重い場合は子どものころに気づかれることが多いのですが、症状が軽い場合は診断が遅くなります。原因としては、染色体異常や先天性代謝異常症、中枢神経感染症、胎児期にかかった感染症、脳の奇形などが挙げられます(※7)。

それぞれの障害の特性について、発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)が以下のようにわかりやすくまとめています。

これらの障害を持つ方々の教育を支援するために、文部科学省では「発達障害者支援法」を定めています。発達障害の症状が現れてから、できるだけ早い段階で発達支援を行うことを重要と考え、学校教育や就労などさまざまな場において支援することが目的です。この法律に従い、各自治体では発達障害を持つ子どもの発達支援をしています。
具体的には、発達障害を持つ子どもの保護者が相談できるよう環境を整備し、必要に応じて医療機関や専門機関を紹介しています。子どもの発達障害が疑われる場合に、すぐに医療機関を受診するのではなく、まずは自治体に相談してみてはいかがでしょうか(※9)。

子どもの発達障害のより詳しい症状について

子どもの発達障害のより詳しい症状について、ご紹介します。

・ダウン症候群
ダウン症候群の特性としては、全身の筋肉の緊張度が低下したり特徴的な顔つきになったりします。また、消化器系の病気や中耳炎などを合併しやすいといわれています。知的発達が遅れますが、成長の道筋はダウン症ではない子どもとほぼ同じです。また、人なつっこく明るくてやさしい性格をしている傾向があります(※10)(※11)。

・自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症(ASD)に分類される自閉症は、言葉の発達が遅れるほか、コミュニケーションをうまく取れない、良好な対人関係の構築が難しい、社会性に欠ける、特定の物事に対する強いこだわり、行動のパターン化などがみられます。いずれかの症状が3歳までに現れるといわれています。また、知的障害を伴うこともあれば、知能に遅れがみられない場合もあるなどさまざまです。自閉症の子どもは、目を合わせない、1人遊びを好む、かんしゃくを起こすことが多い、表情の変化に乏しい、名前を読んでもこちらを向かない、ほかの子どもに興味がないなどの特徴がみられます(※12)(※13)。

・アスペルガー症候群
アスペルガー症候群は、対人関係の障害と強いこだわり、趣味や活動のパターン化がみられます。自閉症とは違い、言葉の発達の遅れはありません。また、知的障害を伴うケースもほとんどないといわれています。アスペルガー症候群の子どもは、集団で遊ぶより1人で遊ぶことを好み、その遊びをくり返す傾向があります(※14)(※15)。

・学習障害(LD)
学習障害の子どもは、読み書きや算数などに関する発達に障害があります。単語ごとに文節を区切って読んだり、勝手に文末の言葉を変えて読んだりするなど、症状は多種多彩です(※16)。

・知的障害
知的障害の子どもは、食事の準備や排尿・排便、対人関係の構築、お金の管理など、社会生活に必要な適応機能が年齢に対して低くなっています。そのため、同年齢の子どもができることができず、まわりの人のサポートが必要となります(※17)。

発達障害の症状によって、更なる問題が起こる場合があります。これを二次障害といい、対人関係を構築できないためにまわりに馴染めず、不登校になったり、暴力をふるったりすることなどが挙げられます。発達障害を早期に発見して、適切に発達支援をすることが二次障害の予防に役立つと考えられています(※18)。

発達障害の子どもとのコミュニケーション術

発達障害の影響によって、コミュニケーションがうまくとれなかったり、音や光に過敏になったりすることがあるので、保護者やまわりの人が適切に対処することが求められます。適切にコミュニケーションを取って対処することで、子どもの発達にいい影響を与えられるかもしれません。具体的な事例を挙げて解説します。

・障害によってコミュニケーションがうまくできないことがある
発達障害によって、人とコミュニケーションをうまく取れない場合、ほかの子どもと比較したり、大声で叱ったりしてはいけません。子どもは、コミュニケーションを取りたくても取れない状況にあるため、このような対応は子どもを傷つけてしまう可能性があります。また、「この子は発達障害だから」と見放すことも、子どもの心に悪影響を及ぼすかもしれません。

単純に叱るのではなく、どのようにしてまわりとコミュニケーションを取ればいいのかを伝えましょう。言葉のコミュニケーションだけにこだわるのではなく、サインや身振り手振り、カードを使うなど、その子どもに合ったコミュニケーションの取り方を教えてはいかがでしょうか(※19)。

また、それだけですぐにコミュニケーションを取れるようになるわけではないので、幼稚園や保育園、小学校の先生などまわりの人に対して、「うちの子はゆっくりのペースでお願いします」と伝えておくなど、子どもが過ごしやすい環境をつくることも大切です。

・音や光に過敏なことがある
発達障害の子どもは、音や光に過敏な場合があります。大きな音や強い光にさらされることで、パニックを起こすこともありますが、このような場合にも子どもを押さえつけるようなことは避けた方がいいでしょう。なぜそのような大きな音がするのか、理由を伝えることをおすすめします。過敏なものに対する理解を深めることで、次第にパニックを起こしにくくなるかもしれません。

・得意分野をみつけること
発達障害があるために、同年齢の子どもと同じことができない場合があります。それにより、ほかの子どもと比べることで、自信を失ったり喪失感を覚えたりする場合もあります。「なぜ、ほかの子どもはできてうちの子はできないのか」とイラ立ちを覚える保護者も少なくありません。しかし、自信を失っている子どもに対し、「なぜできないのか」と叱ると、さらに子どもが自信を失ってしまう可能性があります。

まずは、その子どもの得意分野を見つけるようにしましょう。子どもが自分の得意分野を認識することで、その分野に関して自信を持てるようになります。これが、自尊心を育む第一歩になると考えられます。

まわりの人の助けを借りて子どもと向き合おう

発達障害の種類はさまざまで、アスペルガー症候群のように、子どものころに発見しづらい症状もあります。現代では発達障害者支援法により、教育や就労などさまざまな場でサポートを受けることができるので、「もしかして発達障害かも?」と思ったら、まずは自治体に相談しましょう。

参照元
(※1)参照:『放課後等の教育支援の在り方に関する資料』(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/03/16/1355830_1.pdf P.51~52

(※2)参照:『特別支援教育について』(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/hattatu.htm

(※3)参照:『ダウン症のあるお子さんを授かったご家族へ』(公益財団法人日本ダウン症協会)
http://www.jdss.or.jp/family/index.html

(※4)参照:『自閉症について』(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-005.html

(※5)参照:『学習障害』(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-004.html

(※6)参照:『発達障害者支援に関する行政評価・監視-結果報告書』(総務省)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000458776.pdf :P.9

(※7)参照:『知的障害(精神遅滞)』(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-004.html

(※8)画像引用:『発達障害を理解する』(発達障害情報・支援センター)
http://www.rehab.go.jp/ddis/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%82%92%E7%90%86%E8%A7%A3%E3%81%99%E3%82%8B/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%A8%E3%81%AF/

(※9)参照:『特別支援教育について』(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/001.htm

(※10)参照:『ダウン症のあるお子さんを授かったご家族へ』(公益財団法人日本ダウン症協会)
http://www.jdss.or.jp/family/index.html

(※11)参照:『ダウン症』(滋賀県立小児保健医療センター)
http://www.pref.shiga.lg.jp/mccs/shinryo/sekegeka/shikkan/sentense/down.html

(※12)参照:『発達障害者支援に関する行政評価・監視-結果報告書』(総務省)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000458776.pdf :P.9

(※13)参照:『自閉症について』(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-005.html

(※14)参照:『発達障害者支援に関する行政評価・監視-結果報告書』(総務省)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000458776.pdf :P.9

(※15)参照:『アスペルガー症候群について』(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-006.html

(※16)参照:『学習障害』(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-004.html

(※17)参照:『知的障害(精神遅滞)』(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-004.html

(※18)参照:『発達障害者支援に関する行政評価・監視-結果報告書』(総務省)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000458776.pdf :P.25

(※19)参照:『どうしたらいいの?~子どもとの接し方(幼児期~学童期』(大阪府)
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/1206/00027606/eeyan_jido2.pdf P.17

プロフィール



1959年神奈川県生まれ。1985年、東京大学医学部医学科卒。医学博士、精神保健指定医。都立松沢病院、東京大学附属病院精神科、埼玉医科大学精神科などを経て、2012年より昭和大学医学部精神医学講座主任教授に。2015年より昭和大学附属烏山病院院長を兼任し、ADHD専門外来を担当。精神疾患の認知機能、司法精神医療、発達障害の臨床研究などを主な研究分野としている。『心の病が職場を潰す』(新潮新書)、『大人のADHD もっとも身近な発達障害』(ちくま新書)、『発達障害』(文春新書)など、著書多数。

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