好きなことに熱中すると切り替えができない[教えて!親野先生]

教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。

【質問】
電車模型、ブロック、粘土、読書など、好きなことに熱中すると、夕食、お風呂、就寝時間などになってもやっています。いつも大きな声で叱らないと切り替えができません。
このままでは大人になってから困るので、もっとてきぱき行動できるように直したいのですが…。

相談者:はちみつさん(小2男子)

【親野先生のアドバイス】
拝読しました。

生活の中では毎日やるべきことがたくさんあり、子どもがそれをてきぱきやってくれないと親としては困りますね。

特に男の子脳の度合いが高い子は、やりたいことが最優先であり、やるべきことや嫌なことは後回しになりがちです。

でも、子どももいろいろですから、そういうことがてきぱきできる子もいます。
そういう子は育てやすいので、親としては助かります。

ただ、そういう子ばかりがよいとも限らないのが人生の妙というものです。
そういう子は、もしかしたら、自分が好きなことに熱中する力が弱いのかもしれません。

親の気持ちを忖度してばかりいるうちに、自分がやりたいことをぐいぐい実行していく自己実現力が弱くなってしまう可能性もあります。

将来、「親や先生に言われたことはやれる。上司に言われたことはやれる。だけど自分でやりたいことは特にない」という状態になってしまう可能性もあります。

その点、はちみつさんの息子さんのように熱中力がある子は将来有望です。
こういう子がひとかどの人間になって活躍するのだと思います。

ただいま小学2年生とのことなので、まだまだ同じような状態が続くと思いますが、長い目で見ながら待ってあげてください。

「このままでは大人になってから困る」とのことですが、そのうちに自己管理力もついてきますから大丈夫です。
もちろん、いつとははっきり言えませんが、自分の生き方、将来、人生について真剣に考えるようになれば変わってきます。
ですから、早くても思春期以降の話です。

今できないことや苦手なことについては、まずは合理的な方法を工夫して、やりやすいようにしてあげることです。
それでも無理なら、一緒に手伝ってあげたり、あるいはやってあげたりしてください。

「やってあげると自立ができない」という昔からの思い込みに支配されている人が多いのですが、実はこれは最新の児童心理学では否定されています。

最新の児童心理学では、「子どもがどうしてもできないことは、一緒に手伝ったり、あるいは親が上手にやってあげたりしてください。やってあげると自立できなくなるということはありません。もちろん、子どもがやる気があって、時間的な余裕もあるときは待ってあげてください。そういう時もやってしまっていては、当然ながら自立の妨げになります。でも、そうでないときはやってあげてください」と、非常にはっきり言っています。

上手にやってあげるというのは、いちいち叱ったり小言を言ったり、恩着せがましい嫌みを言ったりしないで、明るい雰囲気でやってあげるということです。

すると、子どもは親に感謝しますし、親の愛情を実感することもできます。
親のことがますます大好きになって、無意識のうちに「大好きな親の気持ちに応えたい」という思いも高まります。

それでも実際はすぐには変われないのですが、ちょっとでも調子のよいときはがんばります。
それで、だんだんできるようになるのです。

この逆に、子どもができないことを手伝ったりやってあげたりすることなく、口で叱ってやらせることを優先していると、かえって子どもは自立できなくなります。

というのも、叱られることで子どもは「どうせ自分はダメな子だ。自分にはできないよ。無理だよ」という思い込みに支配されるようになるからです。

同時に、叱ってばかりの親に対して、子どもはよい感情を持てなくなります。
すると、親の言うことを素直な気持ちで受け入れてがんばろうという気持ちがなくなります。

例えば、大人の職場において、ジコチュウで嫌みな上司に「さあ、のりしろのある仕事をしましょう。○○さんもがんばってください」と言われても、素直に聞く気になれないのと同じです。

「何」を言われるかより、「誰」に言われるかが大事なのです。
「この人に言われたら応えたくなる」という関係をつくることを優先してください。

ということで、もう一度言いますが、叱ることにエネルギーを使って親子で消耗するより、工夫しても無理なことは上手にやってあげてください。

そして、親のエネルギーはもっと別のところ、つまり子どもが好きなことを応援する方に注いでください。

親が応援して、子どもがもっと深められるようにしてあげることが大事です。
親の応援がないと必要な物も買えないし、情報も得られないし、体験もできないし、ほめてももらえないし、ということで「ちょっと好き」で終わってしまいます。

親の応援があればどんどん深められて、「誰よりも好きで得意」になって自信がつきます。
好きなことに熱中する力が育ち、深め方も身につきます。

自分がやりたいことを、自分で見つけて、自分で実現していく自己実現力もつきます。
これが真のアクティブラーニングであり、それができる人が将来有望な人なのです。

好きなことに熱中して頭をフル回転させているときに、シナプスがどんどん増えて頭の性能がよくなります。
好きなことを応援してくれる親に感謝する気持ちが高まり、親子関係がますますよくなります。

まさに、いいことずくめです。

私は小学校教師として、息子さんのような子を間近でたくさん見てきました。
例えば、私の教え子のK君もまったくてきぱきしていなくて、切り替えも苦手な子でしたが、今は医療関係の仕事でばりばりがんばっています。

ですから自信を持って言えます。
長い目で見てあげてください。

私ができる範囲で、精一杯提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
みなさんに幸多かれとお祈り申し上げます。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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