子ども用ハーネスはあり?なし?[教えて!親野先生]

教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。

【質問】

4歳の息子は、何か見つけると急に猛ダッシュで走り出します。事故防止のためにハーネスを使いたいと思うのですが、身近な人に「そんなの恥ずかしい。犬じゃあるまいし。ちゃんと言い聞かせるのがしつけだ」と反対されています。

相談者・エアコンスマイル さん (年少 男子)

【親野先生のアドバイス】

エアコンスマイルさん、拝読しました。

子ども用ハーネスについては、「犬じゃあるまいし」「恥ずかしい」「奴隷みたい」「子どもの人権無視だ」「虐待じゃないの」「子どもがかわいそう」「世間体が悪い」「昔はこんな事をする親はいなかった」など、否定的な見方をする人もけっこういますね。

そのせいで、子育て中のママ・パパたちの中には必要性を感じながらも躊躇している人も多いようです。
でも、これは子どもの命に関わることなので躊躇している場合ではないと思います。
子どもというのは、突然思いも寄らない行動をすることがあるので、ハーネスは命綱といっていいくらい大切なものです。

私が小学校の先生だったとき、小学4年生の子どもたちを連れて遠足に行ったことがありました。
子どもたちは2列で道路脇の歩道を歩いていたのですが、突然1人の子が道路に飛び出しました。
危うくバイクにぶつかりそうになりましたが、間一髪のところでバイクがよけてくれました。
本人が言うには、「道路に空き缶が転がっていたので、拾って捨てようと思った」とのことでした。
もちろん、事前に遠足で守るべき注意点を指導しておいたのですが、それでもこういうことがあるのです。

しかも、4年生でもあるのです。
ましてや、園児やそれより小さい子では、何をするかわかったものではありません。
興味を引く物を見つけて走り出す子もいれば、何もなくても取り敢えず走り出す子もいます。
親が子どもと手をつないでいたとしても、急に振りほどいて走り出すこともあります。

お母さんが落としたものを拾おうとして、屈んだ瞬間に手を振りほどいて猛ダッシュ。
着信音がなったので、バッグの中から携帯電話を出すために、一瞬子どもの手を離した隙に猛ダッシュ。
後先見ずに走り出して、そのすぐ先に道路がある、線路がある、川がある…。
こういう状況で肝を潰したことのある人も多いはずです。

「ちゃんと言い聞かせるのがしつけ」と言われたとのことですが、いくら事前に言い聞かせても、こういうことは起こります。
何度約束しても、そのときになると忘れてしまう子もたくさんいるのです。
子育て経験者で、「自分が子育てするときは、そんなものは使わなかった」と言う人もいます。
でも、一口に子どもと言ってもその個人差はものすごく大きいので、自分の子育て経験だけで結論づけてはいけないのです。

たぶん、その人の子どもは行儀がよくて親の言い付けをしっかり守るタイプだったので、ハーネスの必要性を感じなかったのでしょう。
でも、そういう子ばかりではありませんので。
わが子に必要かどうかなどは他人にはわからないことです。
ですから、他人が何と言おうがわが子のために必要なら使うべきです。

「平成24年人口動態調査 不慮の事故の種類別にみた年齢別死亡数」(厚生労働省の調査)によると、1歳~4歳の子どもが不慮の事故で亡くなる場合、その原因のトップは交通事故で、実に38%にものぼりました。

この年代の子どもは身体機能が発達して行動範囲が一気に広がります。
でも、その一方で、危険を予知するための知能は十分に発達していません。
ですから、ハーネスは命の綱なのです。

次に、ハーネスを選ぶときの注意点です。
中には粗悪品もあるかも知れませんので、気をつけてください。
子どもが猛ダッシュしたときに、留め具が外れたりしては意味がありませんので。

ですから、本当は、ハーネスの安全基準も作って欲しいですね。
自動車のチャイルドシートと同じく、子どもの命を守るための物なのですから。
そして、厚生労働省などがもっと積極的にハーネスの効果とその必要性を世間に啓発するとよいと思います。
そうすれば、「犬じゃあるまいし」「子どもがかわいそう」などの偏見もなくなるでしょう。
子どものためにも、親のためにも、ドライバーのためにも、そうなって欲しいものです。

もっと多くのママ・パパが、普通に当たり前のように使うようになれば、子育てがほんの少しは楽になります。
チャイルドシートにしても、出始めた頃は、「窮屈で子どもがかわいそう」「そんなもので子どもを縛り付けるより、親が抱っこした方がいい」などと言う人もいました。
でも、今は当たり前になっています。
ハーネスもそうなるといいと思います。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。

(筆者:親野智可等)

プロフィール


親野智可等
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・『子育て365日』(ダイヤモンド社)
・『反抗期まるごと解決BOOK』(日東書院本社)


長年の教師経験をもとに勉強法・家庭教育・親子関係などについて具体的に提案。
Instagram、Threads、X、YouTube「親力チャンネル」、Blog「親力講座」などでも発信中。ドラゴン桜の指南役としても著名。『子育て365日』『親の言葉100』などベストセラー多数。全国各地の教育講演会でも大人気。詳細は「親力」で検索

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