気づいていますか?子どもの不定愁訴

不定愁訴とは、病気などの明確な原因がないにもかかわらず、さまざまな不調が日によって身体のあちこちに出ることをさします。従来は更年期の女性に多く見られるものだといわれていましたが、最近では小学生が同様の症状を訴えることも珍しくありません。小学校で27年間にわたって養護教諭を務めた経験をもつ、帝京短期大学教授の宍戸洲美先生に、子どもの不定愁訴を解消するためのポイントを伺いました。

「おなかが痛い」「眠れない」「イライラする」など、症状はさまざま

子どもの不定愁訴で、身体に表れるものとしては「頭が痛い」「おなかが痛い」「気持ちが悪い」「眠れない、あくびがたくさん出る」「だるい、横になりたい」「肩がこる」「首が痛い」「腰が痛い」「口がかわく」といったような訴えが多く、日によって訴える症状が変わるケースもよく見られます。また、「むかつく」「イライラする」「一人になりたい」「やる気が出ない」といった、心の面での変化が見られることもあります。

このような不調を抱える子どもは、家庭では「朝なかなか起きられない」「食欲がない」「登校前に頭やおなかが痛いと言う」「帰宅後は遊びに行かずにゴロゴロしている」「イライラしている」「親の質問に答えてくれない」といった様子が見られるケースが多いようです。特に、睡眠・食欲・日中の活動の様子に変化が見られる場合は、子どもの様子をよく観察する必要があるでしょう。

まずは小児科で身体に異常がないかをチェック

これらの不調が何日も続く場合は、重大な病気が隠れている可能性もあるので、まずは小児科を受診して身体に異常がないかを調べることが大切です。熱はないか、おなかが張ったり冷たくなっていたりしていないか、子どもの身体に手を当てて確かめると共に、体重が減っていないかも確認しましょう。学校では授業に集中できているか、友達と元気よく遊べているかといったことも、子どもの体調を知る手がかりになります。できれば担任の先生に学校での様子を聞いてみて、その情報も小児科の医師に伝えるとよいでしょう。

「睡眠」と「食事」を見直して、生活リズムを整える

小児科を受診して身体には異常がないことがわかったら、「睡眠」と「食事」に関する次のポイントに着目して、生活リズムが乱れていないかを見直してみましょう。

・睡眠時間は低学年なら9~10時間、高学年なら8~9時間を目安に

骨や筋肉の発達を促す成長ホルモンは眠っている間に分泌されるので、成長期の子どもにとって睡眠はとても重要です。どのくらいの睡眠時間が必要かは個人差もありますが、低学年は9~10時間、高学年は8~9時間を目安に十分な睡眠時間を確保して、子どもが朝スッキリした状態で起きられるようにしましょう。

・寝る前のテレビ・ゲーム・スマホの使用は控える

眠気を起こすホルモンである「メラトニン」は暗くなると多く分泌されるので、眠るときは寝室を暗くすることも大切です。眠る直前までテレビやゲーム、スマホなどの画面から光の刺激を受けていると、なかなか眠れなくなってしまうので、寝る前には読み聞かせなど落ち着いた過ごし方をするのが望ましいといえます。

・夜型なら「早起き」から始め、朝に太陽光を浴びる

早寝早起きが大切です。夜ふかしが習慣になっている場合は、「早起き」から始めましょう。朝になったらカーテンを開けて太陽光を浴び、窓を開けて風を入れると、自然な刺激で目が覚めやすくなります。気分が明るくなる音楽を流すのもいいですね。最初はつらいかもしれませんが、早起きをすれば自然と夜は早く眠くなるので、起きる時刻になったらしっかり起こすことが大切です。

・朝食をしっかりとり、身体を活動モードに

起床後は、朝食をとることを習慣にしましょう。朝食をとると脳にエネルギー源となるブドウ糖を送り込むことができ、体温も上がり、腸も動き始めて排便しやすくなるというように身体が活動モードに切り替わります。

・「個食」「固食」「孤食」が続きすぎないように

最近は弁当や総菜を買って食事を済ませることもできるので、一人ひとりが好きなものを食べる「個食」、いつも同じようなメニューを食べる「固食」、家族がバラバラのタイミングで食事をとる「孤食」が増える傾向にあります。この傾向は栄養バランスの偏りが気になるほか、家族で食卓を囲むことで子どもが安らぎを感じる時間が減ったり、親が子どもの食欲や表情の変化に気づくのが遅くなったりするおそれがあるという点でも心配です。それぞれの家庭の事情に応じて無理のないペースでよいのですが、素材から作った料理を家族そろって食べる日もあるといいですね。

・長期休暇は終わる数日前から生活ペースを元に戻す

冬休みや夏休み、ゴールデンウィークなどの長期休暇明けは、生活リズムの乱れから不定愁訴の症状が出やすい時期です。長期休暇は最終日まで外出や遊びの予定を詰め込むのではなく、休みが終わる数日前から起床・就寝の時刻を学校がある日と同じにして、余裕をもった過ごし方をすることで生活のペースを取り戻せるようにしましょう。

「どうしたの?」と問い詰めず、「いつでも相談に乗るよ」の声かけを

友達関係のトラブルやいじめ、授業についていけないといった悩みを抱えている場合、子どもには「親に知られたくない」というプライドもあるため、素直に打ち明けられないこともあります。そんなとき、「どうしたの?」「何があったの?」と子どもを問い詰めると、プレッシャーを与えてしまうので逆効果。親は「困ったことがあればいつでも相談に乗るからね」ということを伝え、次のような点を心がけましょう。

・子どもと何気ない会話をする時間をもつ

一緒にご飯を食べる、テレビを見る、お風呂に入るなど、子どもと「一緒に」何かをしながら何気ない会話をする時間をもちましょう。週に一度、家族で一緒に台所に立ち、できた料理をみんなで食べるのもおすすめです。家族みんなで1つのことに取り組むと自然と会話が増え、「実は学校でこんなことがあって…」ということも話しやすくなります。

・勉強のつまずきはノートや宿題で早めに発見

子どもにとって「授業の内容がわからない」ということはストレスになる場合が多いので、そのままにしないことが大切です。学習の遅れが気になる場合は、学校のノートがしっかりとれているか、宿題ができているかをおうちのかたがチェックして、つまずいているところがあれば一緒に復習に取り組むとよいでしょう。

・子どもの前で先生のことを悪く言わない

学校に相談したいことがある場合は、基本的には担任の先生に連絡をとりましょう。子どもが担任と相性が合わずに悩んでいるケースでは、養護教諭やスクールカウンセラーに相談してみるのも1つの方法ですが、その場合も子どもの前で担任を批判するようなことを言うのは控えましょう。「おうちのかたと先生が協力しながら自分のことを支えてくれるから大丈夫」と子どもが思えるような良い雰囲気をつくり出していくことが大切です。

・夫婦げんかをしたら「仲直りした」ことも伝える

夫婦げんかなど、家庭でのストレスが子どもの体調不良の原因となるケースも少なくありません。できるだけ子どもの前でけんかをすることは避けてほしいのですが、やむを得ずけんかをしてしまった場合は、親の気持ちが落ち着いた時点で「心配かけてごめんね。もう仲直りしたから大丈夫だからね」ということを必ず言葉にして伝えてください。

・おうちのかたが自分自身のストレスを発散する時間をつくる

親が緊張や不安、イライラした気持ちを抱えていると、それが子どもにとってストレスになってしまうこともあります。周囲の人の手を借りて、時には子どもから離れる時間をつくり、友人と話をしたり、趣味に打ち込んだりしておうちのかた自身も気分転換を図りましょう。

日頃から子どもの様子をよく観察し、「睡眠がとれているか」「食欲はあるか」「日中に元気よく活動できているか」といった点に気を配っていると、不定愁訴につながる心身の不調のサインを早めにキャッチすることができます。生活リズムを整え、必要に応じて小児科医や学校の先生とも連携をとりながら、子どもの健康をサポートしていきましょう。

プロフィール


宍戸洲美

帝京短期大学 生活科学科 学科長・教授。看護師、保健師を経て、3つの小学校で27年間にわたって養護教諭として勤務した経験をもつ。現在は大学で養護教諭をめざす学生たちの指導にあたると共に、NPO法人子育てアドバイザー協会の講師なども務めている。

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