「ドイツ式 整理術」で片づけができる子に!
毎日、子どもに向かって「片づけなさい!」と言っているのに、部屋がちっとも片づかない…。こんな状況から抜け出すには、どうすればよいのでしょうか? 整理整頓の習慣を大切にするドイツ人の母や祖父母のもとで育った料理研究家の門倉多仁亜さんに、子どもでも無理なく習慣にできる「ドイツ式整理術」のコツを教えていただきました。
「なぜ片づけが必要なのか」を話し合うことからスタート
ドイツには、「整理整頓を覚え、好きになりなさい。時間と手間を省いてくれるから」ということわざがあります。本当に必要なものだけを手元に置き、暮らしを整えることを心地良いと感じる人が多いドイツでは、小さな子どもに対しても「使ったものは元に戻す」ことをしっかり教えます。学校の持ち物をそろえるのも子ども自身の責任だというのが一般的な考え方なので、日本のようにおうちのかたが手伝うことはありません。幼い頃から「自分の持ち物は自分で管理する」という意識が身につきやすい環境だといえるでしょう。
整理整頓を習慣にするには、まず「なぜ片づけをする必要があるのか」を子どもと話し合ってみることをおすすめします。ドイツの暮らしには、あらゆる物事について「これは本当に必要?」と自分なりに考える習慣が根付いていて、整理整頓に関しても「なぜ必要なのか」ということをおうちのかたはくり返し子どもに伝えます。片づけは「ママに叱られるから仕方なくやること」ではなく、「探し物をする時間と手間を省き、自分がラクになるために必要なこと」なのだということを伝えてから、次に挙げるような具体的な取り組みを進めていきましょう。
1.子どもと一緒に「何をどこにしまうか」を決める
自分の持ち物を自分で管理するには、「どこに何があるか」を子ども自身が把握しておく必要があります。日本では、子どもが「ハンカチちょうだい」と言ったときに、おうちのかたがハンカチを引き出しから出して渡してあげるケースが多いように思いますが、「ハンカチはこの引き出しに入れておくからね」と伝えて、子どもが自分で取り出せるようにしておくのがドイツ式。一つひとつの物の置き場所・しまい場所を子どもと話し合って決め、使う人が各自で取り出せるようにしておくと、おうちのかたの手間も省けます。
・一緒に使うものは一緒にまとめておく
学校に持って行くハンカチとティッシュ、宿題をやるときに使う鉛筆・消しゴム・下敷き・鉛筆削りなど、同じタイミングで必要になるものは一つの場所にまとめておくと便利です。いちいち探さずにすむように、「学校に行くとき」「遊びに行くとき」「勉強をするとき」「ゲームをするとき」など、場面ごとに必要な物の置き場所を決めておきましょう。
・使う場所に近いところに置く
リビングで勉強するのが習慣になっている場合、勉強道具を子ども部屋まで取りに行ったり戻したりするのは面倒です。リビングに勉強道具を置くスペースをつくり、使ったらそこへ戻すようにすると、わざわざ遠くまで物を運ぶ手間が省けて整理整頓をしやすくなります。
・よく使うものは出しやすいところに置く
よく使うものを引き出しやクローゼットの奥などにしまっておくと、使うときに不便ですし、片づけるのも面倒です。使う頻度が高いものは、取り出しやすいところに。子どもがよく使うものは、子どもの手が届きやすい場所に置くようにしましょう。
◆洗面所にかけてあるホウキ
ほうきなどの掃除道具も、使う場所にフックなどでかけておく。取り出す手間がないので、ゴミがあることに気づいた人がその場ですぐに掃除できる。
・分類は大ざっぱでOK
箱やファイルなどの分類を細かくしすぎると、分類すること自体が面倒になり、置きっぱなしになりがち。保管しておく必要がある書類は取りあえず1つの箱に入れておき、その箱がいっぱいになったタイミングで項目ごとに整理してファイリングすると、手間のかかる分類作業をまとめて処理できるのでラクです。子どもにも「おもちゃはこの箱に」「学校のプリントはこのファイルに」といった大まかな分類で、何をどこへしまえばよいのかを示してあげましょう。
◆「TO DO」ボックス
後日提出したり、保管のためにファイリングしたりする必要がある書類は、取りあえず「TO DO」ボックスへ。必要になったときは、このボックスの中から探せばよいのでラク。
2.1日の中での「片づけタイム」を決める
「使ったものは、しまってあった場所に戻す」のが原則ですが、常にそれを実行するのは難しいもの。そこで、1日の中で散らかってしまったものを元の場所に戻す「片づけタイム」を決めましょう。「夕食前の15分間はリビングのおもちゃや本、勉強道具などを片づける」というように決めておくと、整理整頓を歯みがきなどと同じ日々のルーティンにすることができます。
3.「片づけなさい」ではなく、具体的な指示を出す
「片づけなさい」という言い方では、子どもには何をどうすればよいのかが伝わりません。「CDはこの箱に入れてね」というように、やってほしいことを具体的に伝えることが大切です。おうちのかたが伝えたとおりに子どもが片づけられなかった場合も、「なんで片づけないの!」と叱るのではなく、何をどうしてほしいのかをもう一度説明するようにしましょう。
4.子どもの片づけの様子を見守り、できたらほめる
子どもは親にほめてもらえると、その嬉しい気持ちが「次もがんばろう」という意欲につながります。片づけの様子を見守り、子どもが一人でできたことがあれば、その場でほめてあげることを忘れずに。
ドイツには「ハンツちゃんが学習しなかったことは、ハンツ青年は決して学習できないでしょう」ということわざもあります。日々の習慣は幼い頃からの積み重ねで身につくものなので、大人になってから改めるのは難しいもの。お子さまが将来、自分が心地良く感じる暮らしを自分の手で整えていける人になれるよう、子どもの頃から少しずつ整理整頓の習慣を身につけていけるといいですね。