片付けって楽しいね! 片付けやすい環境をつくろう

ベネッセ教育情報サイトには、お子さまの片付けに関する悩みや相談が、数多く寄せられています。中でも、「子どもの物は子どもが自分で片付けてほしい」と考えている保護者のかたが多いようです。ただ、実際に子どもに片付けをさせるとなると、「何を片付ければよいのか」「どこから片付ければよいのか」「親はどこまで手伝うべきか」など不安な点も多いようです。
そこで、ライフオーガナイザーとして片付けと収納のアドバイスを行い、子どもの片付け方に関する書籍などで活躍中の鈴木尚子先生に、保護者のかたからの相談にお答えいただきます。また、子どもにとって片付けやすい収納方法や、片付けを続けるためのコツをご紹介します。

片付けやすい環境づくり3つのポイント(1) 子どもが1人で片付けられる量であること

保護者のかたが手伝っても10分以上かかるようであれば、おもちゃの量が多すぎ、お子さまの管理能力を超えているのかもしれません。まずは、片付けられる量であるかどうかを考えましょう。保護者のかたが一緒に片付けて、5分以内で終わる程度が目安です。量の管理は保護者のかたの仕事です。また、物の量と収納スペースがマッチしているかどうかも考えてみてください。

お子さまの物が片付かないというご家庭では、本来置く場所ではないところに物が置かれている場合があり、空間が乱雑になってしまっています。しまう所に対して、明らかに物の量が多い場合には、片付けられるはずがありません。そこで、物を収納スペースに合わせた量に減らすか、新たに収納スペースを作る必要があります。

片付けやすい環境づくり3つのポイント(2) 片付ける場所が決まっていること

「片付ける場所が決まっている」とは、お子さまの持ち物のための場所を作るということです。もともとおもちゃの置く場所が決まっていないご家庭の場合、物が増えるたびに家具と家具の間に置くなどして、所々に散らばっているかもしれません。物を置くスペースとして、隙間などはふさわしくありません。お子さまが「ここは自分の物を置く場所」だと自覚できるスペースを提供してあげてください。ご家庭によって、子ども部屋を作れる場合もあれば、作れない場合もあると思います。部屋の一角でも、棚の一段だけでもかまいません。小さくても自分のスペースがあれば、自分で責任を持って片付けようと思うことができます。お子さまにとって、自分だけのスペースがあることは、うれしいものです。

ただし、お子さまのスペースに保護者のかたの持ち物を混在させないように注意してください。自分用のクローゼットに保護者のかたの洋服が入っていたら、お子さまは責任を持って片付けようという気にはなれなくなってしまいます。「ここは責任を持って片付けてね」といえる場所を、少しずつ増やしていきましょう。まずはおもちゃから始め、学用品や、洋服の管理ができるようになるとよいですね。

片付けやすい環境づくり3つのポイント(3) 片付ける方法が難しくないこと

物を置く場所が、押入れの奥やソファの裏では、しまいにくいので、片付けるのが嫌になってしまいます。特に片付けるのを嫌がるお子さまの場合、まずは「戻しやすさ」が優先です。放り込むだけの「カンタン収納」がおすすめです。これができるようになってから、もっときれいにしまったり、もっと細かく分類してしまったりすればよいのです。お子さまが片付けやすい環境をつくるためには、お子さまが楽しく片付けられるように、保護者のかたが工夫してあげることが大切です。

保護者のかたはお子さまに片付けを促す時に、「片付けなさい」と怒鳴ったり、「どうしてこんなこともできないの」と言ったり、お子さまのやる気を損ねてしまいがちです。しかし、お子さまは保護者のかたに叱られると、ますます片付けが嫌いになってしまいます。

叱るのではなく、楽しく片付けができるように促すには、声かけのタイミングが大切です。楽しく遊んでいる時に「片付けなさい」と言われても「今遊んでいるから、あとで」とお子さまは思うでしょう。ですから、遊び終わった瞬間など、お子さまにとって取りかかりやすいタイミングで声かけをしてあげてほしいと思います。

また、「何時になったら片付ける?」などと尋ねて、お子さま自身に片付けの時間を決めさせてください。自分との約束を守ることで、習慣ができるとよいですね。そのうえで、少しでもできたら褒めてあげます。褒めることで片付けの力を伸ばすことを考えてください。褒められるとうれしいので、お子さまは「次もがんばって片付けよう」と思うでしょう。

年齢に応じた片付け方のポイント

お子さまの年齢によっては、注意するポイントが違ってきます。

●就学前

意思の疎通ができ、物をつかんだり離したりできるようになる1歳半ごろが、片付けのスタート地点です。「使ったおもちゃをしまおうね」と、おもちゃを箱に投げ込んでもらうことが片付けの第一歩です。3歳くらいまでは保護者のかたがお手本を見せて、一緒に片付けましょう。一つでも片付けることができたなら、「よくできたね」と褒めてあげてください。「片付いていると気持ちがよい」という感覚を、この時期に身に付けられるとよいですね。

●就学後から小学生

少しずつ身の回りのことができるようになっていくこの時期には、翌日の時間割に合わせて、教科書やノートをそろえることもできるようになっていきます。家の中でも、自分のスペースは自分で片付けられるようになりますので、片付けやすい環境づくりを目指しましょう。自分の物を自分で片付けられるようになることは、自立心や責任感を育むことにもつながります。

●思春期以降

「我が子はもう高学年なのに、まだ片付けられない」と感じる場合には、「ここまで教えてこなかったから、ここからがスタートだ」という気持ちで、片付けやすい環境づくりをやり直しましょう。その際、「片付けることの意味」についても、お子さまに伝えてあげてください。この時期には、片付けないことが、保護者のかたへの反抗の手段(ストライキ)になっている場合も考えられます。友人関係や勉強など、他に大切なことがあり、片付けどころではない場合もあるでしょう。そんな時はおいしい食事などを用意して、心と体を満たしてあげるくらいしかできないかもしれません。しかし、口も手も出さないかわりに、心を離さないことが大切です。もし、部屋に入って手伝うことができるのであれば、一緒に片付けて「キレイって気持ちがよいな」と感じさせてあげることが大切かもしれません。


  • <動画>片付けって楽しいね! 片付けやすい環境をつくろう

プロフィール


鈴木尚子

アパレル業界で勤務後、ライフオーガナイズを学び、現在は片付けと収納のアドバイスや講演を全国で行う。子どもの片付け方に関する書籍の執筆や、女性誌などでも活躍中。

子育て・教育Q&A