18歳選挙権で子どもへの教育はどう変わる?【家庭編】

今年(2016<平成28>年)7月には、18歳選挙権になってから初めての選挙が行われます。20歳から18歳へ選挙権が引き下げられたことにより、家庭ではどういったことを意識していくことが求められるのでしょうか。子どもの政治参加に詳しい、東洋大学助教の林大介先生に聞きました。

■子どもと話す機会を設けよう

手始めに、子どもの周囲のことを題材に考えさせて、社会の課題につなげていくとよいでしょう。子どもは学校で、「地域のことを学ぼう」「住んでいる地域の防災マップを作ろう」といった学びを経験しています。大人が思うよりも、地域が抱える問題について自分の頭で考える素地はできているのです。

たとえば、「自然がたくさんあるのだから、子どもが遊ぶ場所もたくさんあるだろう」と思っていたら、ボールを使って遊べるような広い場所はなく、子どもが不満を持っているなどのケースもあります。子どもは自分の視点できちんと物事を考えているのです。

そうした子どもの話をきちんと聴く機会を設けると、子どもは懸命に考え、発信していこうとします。可能であれば、子どもの発信から社会が変わっていく経験をすると、より社会に関わる楽しさや意欲は高まるはず。

ただし、実際は実現が難しいこともあるでしょう。大切なのは、子どもだからとごまかさず、「君はそう思っているけれど、一方でこんなことを言っている人もいるよ」と立場ごとにさまざまな意見や考えがあることを伝えていくとよいと思います。納得はできなくとも、状況を理解ができるよう促していくと、社会に置かれた自分の立ち位置を意識していくことができるのです。

■保護者が社会に関わっている姿を見せる

子どもに社会について考えさせる機会を増やすためには、保護者が社会に関わっている姿を見せることが大切です。投票に一緒に行くことや、ボランティアに参加することなどは有効な手立てです。また、職場での出来事を話して聞かせることも大切です。

大人社会での問題の縮尺版が子どもの社会で起こっていることはよくあります。たとえば、いじめの問題は子ども社会だけの問題ではありません。いじめは大人の社会にも存在しますし、ひいては差別の問題につなげて考えさせることも可能でしょう。保護者が考えていることや悩んでいることを伝えることで、子ども自身も思考する姿勢が養われるのです。

■保護者が社会的課題を学んでいる様子を実感させる

大人が学んでいる様子は、子どもにとって刺激となります。新聞を読んでいる姿を見せてもよいでしょうし、子どもと一緒にドキュメンタリー番組などを見てもよいでしょう。

子どもに正しいことを教えなければいけないと構える必要はありません。子どもと一緒に語り合えればよいのです。たとえば、太平洋の国々でモノやサービスを売る規定をつくる「TPP(環太平洋経済連携協定)」であれば、都心に住んでいる子どもが話すのと、地方で周囲に農家が多い環境の子どもが話すのとでは、まったく違うものになるはず。どちらが正解・不正解というわけではなく、自分に引き寄せて社会的なテーマを考えていくことが大切なのです。こうした思考を大切にすることで、政治や社会へ積極的に参加する姿勢が育まれていくのです。

家庭のなかで大人と子どもが一緒になって、社会や地域的な問題を考えてみてはいかがでしょうか。

プロフィール


林大介

東洋大学社会学部社会福祉学科助教。模擬選挙推進ネットワーク事務局長など、子どもの政治参加、主権者教育についての第一人者。総務省・文部科学省の18歳選挙制解説の副教材「私たちが拓く日本の未来 有権者として求められる力を身に付けるために」の編集にも関わる。

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