季節の変わり目は要注意!扁桃炎の原因と治療法

 扁桃炎は風邪とよく似ていますが、のどのはれが強く呼吸や食事がしづらくなるなど、のどに特徴的な症状が現れます。小学校低学年くらいまでの子どもが、季節の変わり目によくかかる病気ですが、原因菌によっては人にうつしてしまったり、しっかり治さないと悪化して大変なことになることも。そうならないために、この病気の特徴と治療法をおさえておきましょう。

のどがはれることで、ウイルスや細菌の侵入を防ぐ

 扁桃炎は、免疫機能が未発達な子どもがかかりやすい感染症です。とくに8〜9歳くらいまでの子どもが感染しやすく、原因となるウイルスや細菌はさまざまで(後述)、気温差が激しい季節の変わり目、疲れているとき、寝不足のときなどに発症しやすくなります。

扁桃炎の主症状は、のどの奥の左右両側にある扁桃とよばれているところ、正確には口蓋扁桃(こうがいへんとう)がはれて大きくなり、痛みがひどくなったり、息苦しくなったり、ものを飲み込みづらくなったりすることです。そのほかの症状は、発熱(38度以上)、寒気や震え、首のリンパ節のはれ、身体のだるさ、頭痛、関節痛などがあります。

また、はれた扁桃に白っぽいものがついていることがありますが、これはウイルスや細菌の死骸です。扁桃はアーモンドの和名で、表面にはアーモンドの殻のようにたくさんのへこみがあります。扁桃には免疫細胞が多く存在し、のどにやってくるウイルスや細菌を凸凹の表面になるべく多くくっつけて、そこで戦い、体の中に入れないようにしているのです。

免疫機能が未発達な子どもにとって、扁桃は大切な免疫器官です。中学生くらいまでは、大人に比べて扁桃が大きいのはそのためで、大人になって免疫機能が完成すれば、扁桃の役割の重要度は落ちるので自然に小さくなります。

原因となるウイルス・細菌によって異なる治療法

 扁桃炎は多くのウイルス、細菌が原因となります。多くはウイルスの感染によって発症しますが、ウイルスの場合は症状が軽ければ家で安静にしていれば治ることがほとんどです。しかし細菌の場合は、抗生剤を使って治す必要があります。そのため、のどがはれてきたら、まずは病院に行って診断してもらいましょう。
受診する科は小児科か耳鼻咽喉科です。呼吸が苦しそうなとき、水分も飲めないときは重症の場合が多いので、待たずに受診させましょう。

●扁桃炎を起こすおもなウイルス、細菌(カッコ内は扁桃炎以外になるおもな病気)
・アデノウイルス(アデノウイルス感染症、いわゆるプール熱)
・溶連菌(溶連菌感染症)
・EBウイルス(EBウイルス感染症、伝染性単核球症)
・肺炎球菌(肺炎)
・インフルエンザ菌(敗血症、髄膜炎など)※インフルエンザウイルスとは異なります

病院では、医師が診察して必要だと判断すれば、のどを綿棒でこすって、溶連菌やアデノウイルスの迅速検査(約15分で結果がわかる)をしたり、のどの粘液を培養することで原因を特定し、溶連菌が原因なら効果のある抗生剤を使います。

細菌の中でも溶連菌による扁桃炎は、「急性糸球体腎炎(体がむくみ、尿が出なくなったり、血尿やたんぱく尿が出る)」「アレルギー性紫斑病(打撲したときのような皮膚の下の出血の跡や関節痛、腹痛が起こる)」「リウマチ熱(発熱、関節痛、心臓の炎症などを起こす)」などの重篤な合併症を起こす可能性があるので、病院でしっかり診断・治療してもらいましょう。
なお、溶連菌に感染していることがわかれば、他の人にうつす可能性が高いので、医師の許可が下りるまで登園、登校できません。また兄弟姉妹にうつることも多いので、子どもが扁桃炎にかかったら、兄弟姉妹もいっしょに受診するようにしましょう。

アデノウイルス感染症は、扁桃炎、高熱、結膜(白目)の充血が特徴です。EBウイルス感染症は、扁桃炎、高熱、首のリンパ節や内臓(肝臓、脾臓)がはれる病気です。

季節の変わり目。気になる症状があったら、注意してみてあげると安心ですね。

監修:東京家政学院大学 現代生活学部 健康栄養学科 教授
   東京都立広尾病院 小児科  原 光彦 医師

プロフィール


原 光彦

東京都立広尾病院小児科部長。日本肥満学会評議員、日本臨床スポーツ医学会評議員などを務める。専門は小児の生活習慣病、メタボリック・シンドローム、循環器、運動生理。著書に『こどものメタボが危ない!小児科医からの緊急提言』(主婦と生活社)などがある。

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