18歳選挙権で子どもへの教育はどう変わる?【学校編】

2015(平成27)年6月に、選挙権年齢の引き下げが決定しました。これにより、高校生の中で選挙権を持つ子が出てくることになります。制度変更によって何が変わるのでしょうか? そして、学校や家庭で求められる教育とは、どんなことになるのでしょうか? 18歳選挙権に詳しい、東洋大学助教の林大介先生に聞きました。

■18歳選挙権とは何か

これまで20歳以降と定められていた投票をする権利が、法改正によって18歳に引き下げられました。今年7月の参議院選挙からは、18歳で投票できるようになります。「もっと若者の声を政治に反映させたい」という意向から、18歳選挙権が実現されました。

なお、よく「選挙権年齢」と「成人年齢」が混同されますが、今回引き下がったのはあくまで、選挙権年齢です。成人年齢は、契約の主体となれる年齢のことです。ローンを組むなどの契約を結べる年齢だと捉えるとよいでしょう。
飲酒・喫煙ができる年齢は、別の法律で規定されています。成人年齢はまだ、20歳のままですが、今後、成人年齢の引き下げも検討が進められる可能性はあります。

■学校での教育の変化

学校では、政治への関心を促すような主権者教育を、一層重視していくことになります。主権者教育とは、国民としての権利を行使したり、義務を理解したりする教育のことです。
もちろん、これまでそうした教育を重視して授業をしてきた先生方もいるので、ガラリと教育が刷新されるわけではありません。また、このような教育は選挙参加を目前とした高校生だけに行えばよいというわけではなく、小学生段階から少しずつ、選挙制度を理解させたり自分の頭で考えて価値判断ができるようにさせたりするステップが大切なのです。

「学校で政治に関する教育をする」というと少し不安を感じる保護者もいるようですが、特定の政党のことを教えたり、教師の思想を一方的に伝えたりするわけではありません。授業において、子どもたちに考えさせて、自分の意見を発信させたり他人の意見を聞いたりする教育が重視されるという意味です。そうした教育が、投票権を持つ国民として政治的判断をする力を養うことにつながるからです。

■模擬選挙などの「場」を設け、発信させる機会をつくる

子どもたちが政治に興味があるのか、考える力があるのか、といった疑問の声を耳にすることがあります。たしかに、子どもたちが、自ら政治や社会のことを話し始めることはあまりありません。しかし、それは発信する「場」がないからだと私は感じています。
たとえば、私は子どもたちに模擬選挙を体験させる活動をしています。実際の選挙がある時に、「未来の有権者」である子どもたちに学校現場やウェブ上で模擬投票をさせるのです。すると、子どもたちは、自分の考えを真剣に述べて結論を導くことができます。

私たち大人はそうした機会をもっとたくさん設けて主権者を育てていかなければいけません。そして、学校でどんなことを学び、どう考えたのか家庭で子どもに尋ねていくことで、さらに子どもの政治・社会への関心を伸ばしていけると考えています。

プロフィール


林大介

東洋大学社会学部社会福祉学科助教。模擬選挙推進ネットワーク事務局長など、子どもの政治参加、主権者教育についての第一人者。総務省・文部科学省の18歳選挙制解説の副教材「私たちが拓く日本の未来 有権者として求められる力を身に付けるために」の編集にも関わる。

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