【英語4技能】英語「4技能」の力って?

 2020年度から施行の現行学習指導要領では、「聞く」「読む」「話す」「書く」という英語の4技能の力を育むために、3年生から外国語活動をスタートし、5・6年生では英語も教科として学ぶようになりました。
 英語の4技能の力を育てるために、小学生の今だからこそ大切なことについて、ベネッセ教育総合研究所 加藤由美子主席研究員にお話を聞きました。

この記事のポイント

— なぜ今、英語の4技能が注目を集めているのでしょうか?

 2020年度から施行の現行学習指導要領では、「聞く」「読む」「話す」「書く」という英語の4技能の力を育むことがこれまで以上に重視されています。学習指導要領は、子供たちが社会で活躍する未来を想定して、子供が学校教育を受ける段階で、どのような力をつけていくとよいかを考えて作成されています。今の小学生が大人になる頃にはますますグローバル化が進み、環境問題や国際的な社会問題などについても、異なる文化や言語をもつ人たちと協力し合って解決していくことが求められるようになります。そのような中で、より良い解決策を出していくためには、生活の中で実際に「使える英語」の力を身につけることがとても大切です。そのために、「聞く」「読む」「話す」「書く」という4技能の力をしっかりと育み、それらを自由に発揮して「使える」レベルにまで押し上げていこうとしているのです。

—「使える英語」の力というのは、実際、どんな力なのでしょうか?

 「使える英語」とは、私たちがふだん日本語でしているように、人との会話やニュース、新聞・書籍などから必要な情報を聞き取ったり読み取ったりして考え、それをもとに話し合うなどして課題を解決できる英語の力を意味しています。例えば、海外旅行先の空港でアナウンスを聞き取って適切に行動できる、病院で症状を伝える、銀行で口座を開くなどの少し難しい日常のシーンでも英語で対応することができる力です。さらに専門的に学ぶ人ならば、国際的な時事問題や社会問題について英語の論文を読み、討論や発表ができるなど、置かれている状況や人によってレベルは違えども、英語で課題を解決するために「聞く」「読む」「話す」「書く」という4つの技能の力を総合的に発揮することができる力です。

—「使える英語」を身につけるために、小学生から4技能の力を育んでいくということですが、「聞く」「読む」「話す」「書く」を同じバランスで学ぶべきでしょうか?

 小学校では、たくさんの英語の音に楽しくふれることから始めて、赤ちゃんが母語の言葉を覚えるときのように自然に「聞く」力から「話す」力、さらに「読む」「書く」力へと、段階を追って4技能の力を育んでいこうとしています。
 ただ単語や表現をたくさん知っているだけでは不十分です。英語は勉強として暗記するだけのものではなく、コミュニケーションの道具であり、「言葉」です。そのために、小学生の今こそ「英語という『言葉』を使って、内容の伝え合いをしたい!」という心と、まちがえてもいいから「なんとか英語で伝えよう!」という勇気を育むことが何より大切です。

—2020年度から施行の現行学習指導要領では、5・6年生から英語も「教科」となり、成績がつくようになりました。どんな力を評価されているのでしょうか?

 小学校では、まずは「英語でコミュニケーションをしよう!」という意欲や態度そのものが評価されます。加えて、5・6年生で「教科」として学ぶときには、「聞く」「話す」と初歩的な「読む」「書く」がどれくらいできるようになっているかも評価されます。そこで求められる具体的な力や評価の基準は、国の指針はありますが、学校や先生によって異なる場合があります。「どんな力をどんな基準で評価しているのですか?」と小学校に聞いてみるのもよいでしょう。

—保護者世代が経験した英語の学習とはずいぶん変わってきているのですね。お子さまの学習を見守るうえで、保護者世代が注意しておくとよいことはありますか?

 保護者世代では、単語や文法を覚えることが何より大事といった教育を経験されたかたも多いのでは? そのため、単語や文法を身につければ安心、と感じられることもあるかと思います。単語や文法はもちろん重要ですが、それらをただ暗記するだけでは「使える英語」にはなりませんし、それでは学ぶ意欲も高まりにくいものです。逆に、英語は「言葉=コミュニケーションの道具である」ことがわかれば、英語を学ぶ目的もわかり、学習を楽しく感じることもできるでしょう。そうすれば、「もっと英語を学んでみたい!」と意欲も増していくことでしょう。

 そのうえで「英語の音がおもしろい!」と思うお子さまなら音からどんどん単語や表現を覚えていくこともあるでしょうし、「日本語だと『テーブルの上のカップ』なのに、英語だと言葉の順番が逆になって『a cup on the table』ってなるんだね」などと語順や文の構造などをおもしろいと思うお子さまなら自然に文法に興味をもつこともあるでしょう。このように、保護者世代のかたが一律に学ばれた方法からいったん離れて、お子さまの強みや興味に合わせて楽しく英語を学ぶことができるよう導いていくのが良いと思います。

—さらに、子供たちが4技能の力を楽しく身につけていけるよう、家庭でサポートできることはありますか?

 ご家庭でも、「英語は言葉であり、コミュニケーションをするための道具なんだ」ということを楽しく伝えていけるとよいですね。例えば、テレビから英語が聞こえてきたら「あ、英語だね! なんて言っているのかな?」と、現実に使われている言葉であることに興味を向けさせたり、「今”first”って聞こえたけど、どういう意味かな?」などと身近な英語に興味を向けて、話し合ったりするのもおすすめです。

 また、小学校の授業では教材や教科書が用意されているので、教科書を見ながら「今日は何をやったの? どこがおもしろかった?」「困ったところはない?」と声をかけ、できているところはほめ、困っているところは一緒に考えたり励ましたりするなどのサポートをしていきましょう。

 とはいえ、英語は「言葉」なので、「なんとなくわかる」という状態から、話せる・書けるなど目に見えてできる状態になるまでには時間がかかります。個人差もあるので、お子さまのペースを見守りながら、おおらかな気持ちで将来につながる「使える英語」のベースを築いてあげてください。

プロフィール

加藤 由美子

【お話】

加藤 由美子(かとう ゆみこ)

ベネッセ教育総合研究所 主席研究員。ベルリッツ・シンガポール駐在を経て、ベネッセのさまざまな英語教育事業の開発に携わる。研究部門に異動後は、幼小中高大の英語教育研究に携わる。現在は、英語学習におけるICTやAI活用の研究に取り組んでいる。