地球温暖化は
私たちの暮らしに
どう関わっているの?
その原因や影響、
世界の取り組みまでを解説
地球温暖化は人類にとって、今すぐにくい止めなければいけない緊急の課題です。2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)でも、17ある目標のうちの一つで地球温暖化に対する緊急の対策を求めています。地球温暖化の問題は、食料不足、生産と消費の問題、海洋汚染といったSDGsのほかの目標にも深く関わっています。
SDGsが目指す持続可能な社会を実現するためには、世界中の人々が団結して、地球温暖化をくい止めるために行動を起こすことが求められています。では、私たち一人ひとりができることとはどんなことなのでしょうか。
今回は、地球温暖化の原因や私たちの暮らしに与える影響、温暖化対策のためのさまざまな取り組みまでを解説します。
なぜ地球温暖化が
進んでいるの?
そのメカニズムと現状
そもそも、なぜ地球温暖化が進んでいるのでしょうか。
地球温暖化の直接的な原因は、人類の活動によって生じる二酸化炭素を始めとする温室効果ガスが急増したことです。まずは、地球温暖化が起こるメカニズムを確認しておきましょう。
■地球温暖化のメカニズムと現状
大気中には水蒸気・二酸化炭素・メタン・一酸化二窒素などの温室効果ガスと言われるガスが存在します。
太陽から降り注ぐ光が地表を温め、地表からはその熱が四方八方に放たれます。この地表の放射熱を大気中の温室効果ガスが吸収したり再放射したりすることによって、大気が温まります。
温室効果ガスと聞くと地球温暖化を引き起こしている悪者のイメージが強いかもしれませんが、実は大気の温度を保つ役割を果たしているのです。
問題はこの温室効果ガスの大気中の濃度が上がりすぎてしまったことです。産業革命以来、人類は石油や石炭などの化石燃料を燃やすことで発生するエネルギーを利用して、産業を発展させてきました。化石燃料を燃やすと二酸化炭素が大量に発生します。現在、大気中の二酸化炭素濃度は、産業革命前に比べて40%も増加しているとされます。
大気中の温室効果ガスの濃度が上がったことにより、大気を温める効果も強くなって、地上の気温が上昇している。これが地球温暖化です。
地球温暖化に関する資料に、国連気候変動に関するIPCC(政府間パネル)という組織の報告書があります。世界の科学の専門家が地球温暖化について分析し評価をまとめているこの報告書は、地球温暖化について考えるための世界的な指標です。このIPCC(政府間パネル)の第5次報告書によると、現在、大気中の温室効果ガスは過去80万年で前例のない水準まで増加しており、これは人類の活動が引き起こしている可能性は95%以上であるとされています。
■世界の平均気温の上昇について
国連気候変動に関するIPCC(政府間パネル)の報告によると、世界の平均気温は1880年から2012年までに0.85℃上昇しています。
0.85℃と聞くと、どれだけ影響があるのかわかりにくいかもしれません。専門家からは、現在進行中の地球温暖化によって、生態系の一部にはすでに大きな被害が出ていると発表されています。たとえば温水域のサンゴ礁は、1.5℃で今よりさらに70~90%、2℃で99%以上が失われると予想されています。このように世界の平均気温が1~2℃上がることは、地球にとって大変深刻な問題なのです。
確実に地球の平均気温は上昇し続けており、このまま何も対策をしなければ2100年には最大4.8℃上昇すると予測されています。厳しい温暖化対策をとった場合でも0.3℃~1.7℃上昇する可能性があるとされています。
地球温暖化が進み最悪の状況になってしまうことをくい止めるためには、2050年までに温室効果ガスの排出量を「2010年に比べて40%~70%削減する必要がある」ということも示されています。
■海面上昇について
地球温暖化の影響で氷河が溶けたことなどにより、1901-2010年の間に海面の水位は19センチメートル上昇しました。このままでは、2100年には最大82センチメートルも上昇する可能性があると予測されています。
■地球温暖化による気候変動と生態系の破壊について
地球温暖化によって気候変動も起こっています。たとえば、日本の春夏秋冬のような気候のパターンが崩れれば、その地域ならではの地形と生物や植物が形づくる豊かな生態系も壊れてしまいます。こうした生態系は私たちの生活を支える大切なものですが、失った自然を完全に取り戻すことはほぼ不可能です。
また、温暖化による気候変動によって、猛暑・干ばつ・山火事・台風・豪雨・洪水といった異常気象により、今までにない大きな災害が頻発しています。
SDGs
(持続可能な開発目標)を
例に、
地球温暖化の
対策を解説
2015年9月に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、これからも私たちが豊かに暮らしていくために、世界のさまざまな課題の解決に取り組もうとする世界共通の目標です。17ある目標のうちの一つ「目標13.気候変動に具体的な対策を」は、世界中の人々が今すぐに地球温暖化と気候変動に対応することを求めています。
地球温暖化の対策には、地球温暖化そのものをくい止めるために温室効果ガスの排出量を減らすことと、気候変動による異常気象や災害に対応することの2つの取り組みが挙げられます。
■温室効果ガス削減のための取り組み
温室効果ガスを削減するための世界の取り組みとして代表的なものが、2015年12月に採択されたパリ協定です。パリ協定では「世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べて少なくとも2℃未満に抑える」という世界共通の目標となる数値が設定され、そのために、各国ごとに二酸化炭素排出量の枠が決められました。
この取り決めにもとづいて、各国の政府が自国での二酸化炭素排出量の削減目標を定め、規制や政策を整備して地球温暖化をくい止めるための取り組みを続けています。日本では温室効果ガスの排出量を2013年に比べて、中期的には2030年までに26%減らすこと、長期的には2050年までに80%減らすことが目標として決められています。
こうした国際社会や各国の政府の動きを受けて、世界の企業の間でも、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーの開発に力を入れたり、従来より少ないエネルギーで使うことができる省エネルギータイプの商品を売り出したり、製造過程や流通の面でも省エネルギーを心がけたりと、温室効果ガスを削減するための取り組みが活発に行われています。
■気候変動による災害に対応するための取り組み
温室効果ガスの削減とともに重要とされている対策が、実際に起こっている災害に対応するための取り組みです。これは主に、災害に強く、防災や減災に着目したインフラや街づくりという形で取り組まれています。さらに、災害の被害を緩和するために、大きな災害や防災に関する知識を広めることも一つの取り組み方になります。
日本では近年、豪雨による浸水や洪水の被害が多発しているため、ダムや堤防といった治水インフラの整備に力が入れられています。また、土砂崩れを防止するために、危険度が高い斜面に木を植えるといった取り組みも多く行われています。
■コロナショックと地球温暖化
2020年から始まった新型コロナウィルス感染症の流行により、感染の拡大を防ぐため、世界の多くの都市でロックダウン(都市封鎖)が行われました。人々は家にいることを余儀なくされ、国と国との間の移動は徹底的に制限されています。このような状況の中、ヨーロッパの2020年の温室効果ガス排出量が約24%減となる見込みであるとされています。
ロックダウンや外出自粛により、オフィスからは人がいなくなり、自動車での移動が減り、産業は活気を失っています。自動車や鉄鋼の生産をほとんど停止している国もあります。経済が停滞することで温室効果ガスの排出量も減る形となっていますが、これは一時的なものであり、経済の回復とともに排出量が増えることが予想されます。
2008年にアメリカで起きたリーマンショックのときも、一時的に温室効果ガスの減少が見られたものの、経済の回復とともに増え、その後も増加し続けている状況です。
こういった危機によってもたらされる経済活動の停滞は、奇しくもいかに人類の活動が温室効果ガスの排出に影響を与えているかを教えてくれます。
しかし、感染症の流行や大恐慌によって温室効果ガスの排出量が削減されていることは、本来望ましいことではありません。私たちは経済活動を維持しながら、温室効果ガスの排出量の削減に取り組んでいかなければならないのです。
地球温暖化が
私たちの暮らしに
与える影響と
私たちにもできる
地球温暖化対策
地球温暖化で世界の平均気温が上昇していることによって、海と陸の生態系、人々の暮らしに至るまでさまざまな影響が出ています。
■自然環境への影響
海は、人の活動によって大気中に排出された二酸化炭素の約30%を吸収していると言われます。これにより海の酸性化が進んでいて、海の生き物に悪影響を与えています。特にサンゴは酸性化に弱く、広範囲のサンゴ礁が死滅していることは、海洋汚染を象徴する出来事です。
2019年から2020年にかけて起こった、オーストラリアの森林火災も気候変動が要因となった大規模な災害の一つです。2019年、オーストラリアでは平均降水量が観測史上最も少なく、森林火災が拡大する前には記録的な熱波に襲われるなど、火災が拡大しやすい条件がそろっていたと言われています。2019年9月ごろから始まった山火事は全土に燃え広がり、森林とそこに住む動物に大きな被害が出ました。
このように、地球温暖化と気候変動に伴って、世界各地で生態系とそこに住む生き物に影響があり、多様な生態系が失われつつあることが問題となっています。
■人の暮らしへの影響
海面水位が上昇することにより、沈みつつある小さな島がいくつもあります。こうした島では、住まいなどが浸水し、住み続けることができなくなるだろうと言われています。
気温が上昇することで気候パターンが変化することによって、農作物がうまく育たなくなったり、海の生態系が変化することによって海産物が今までのようには獲れなくなったりしています。私たちの毎日の食事を支えている農業や漁業への影響は、食料不足につながることが懸念されています。
また、干ばつなどによって砂漠化が進んでいて、農地に利用できる土地が減ったり、水不足に陥ったりしている地域もあります。
気候変動による健康被害も起こっています。日本でも、最高気温が30℃を超える真夏日や35℃を超える猛暑日が増え、熱中症のリスクが高まっています。
■私たちにもできる地球温暖化対策
経済と産業が大きく発展した20世紀は、大量消費型社会と言われ、大量に生産し、大量に消費し、大量の廃棄物が排出されてきました。石油や石炭などの化石燃料に頼って、エネルギーを得てきた結果、大量に排出された二酸化炭素が地球の環境を変えてしまいました。
最も重要なことは地球温暖化の大きな原因となっている二酸化炭素の排出量を減らすことです。そのためには、一人ひとりが二酸化炭素の排出量をおさえようという意識を持ち、日常的な行動を変えることが大切です。
日本の二酸化炭素排出量の約2割は、暖房や給湯・調理のためのガスの使用、家電による電気使用、自家用車の利用といった各家庭からの排出が占めています。残りの8割は、製造業、建設業、農業や漁業などの産業から、運輸・流通・小売業といったサービス業に至るまでの経済活動によるものです。
では、私たち一人ひとりには何ができるのでしょうか。身近な取り組み方には、省エネルギーを心がけること、リサイクルによって資源の節約を心がけることなどが挙げられます。
- 照明を消費電力が小さく長期間利用できるLED照明に替える
- シャワーなどお湯を出しっぱなしにしない
- エアコンや冷蔵庫などの家電は消費電力が少ない省エネルギータイプのものを選ぶ
- 自動車での移動を減らし、公共交通機関や自転車を使う
- 冷房や暖房の温度を控えめに設定する
- マイバッグを持参してレジ袋をもらわない
化石燃料に代わるエネルギー資源として、水力・風力・太陽光といった再生可能エネルギーが注目されています。こうした中、住宅用のソーラーパネルも増えています。さらに、モノとモノをインターネットでつなぐIoT技術の進化によって、スマート家電が話題になっていますが、家中の家電をインターネットにつなぎ、消費電力をコントロールしながら快適に暮らせるスマートホームも登場しています。こうした製品やサービスを選ぶことも、地球温暖化をくい止めるための選択肢の一つです。
温室効果化ガスの削減のため、また資源を節約しながら快適な暮らしを送ることができるように、世界中の企業がこうした新しい技術の開発に取り組んでいます。再生可能エネルギー・省エネルギー・省資源といったキーワードから、自分の身の周りにどんな製品があるのか調べてみることも、地球温暖化の対策の第一歩となるでしょう。
[参照元]
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第1WG | IPCC 第5次評価報告書 特設ページ
https://www.jccca.org/ipcc/ar5/wg1.html地球温暖化対策 なぜ1.5℃未満を目指すのか -IPCC特別報告書を読む|(江守正多・国立環境研究所 地球環境研究センター 副センター長) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/emoriseita/20181104-00102886/パート1 地球温暖化対策の新たなステージ|環境省
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h28/html/hj1601010101.html気候変動に具体的な対策を|国際開発センター
https://idcj.jp/sdgs/img/IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL13.pdf新型コロナウィルスと地球温暖化問題 – NPO法人 国際環境経済研究所|International Environment and Economy Institute
http://ieei.or.jp/2020/03/opinion200318/HEMSでかしこく、上手にエネルギーを使いましょう | スマートライフとは | 省エネ家電 de スマートライフ -温暖化の影響と防止- (一般財団法人 家電製品協会)
http://www.shouene-kaden2.net/smart_life/hems.html