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働き方改革とは?
具体的な取り組みや
新型コロナウイルスによる変化についても解説

2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の17ある目標のうちの一つに、「働きがいも経済成長も」という目標があります。この目標では労働と雇用に関する世界のさまざまな課題が示されていますが、日本における取り組みで最も注目されているのが「働き方改革」です。働き方改革は、すべての人が個々の事情に合わせて柔軟な働き方ができる社会を目指している施策です。この記事では働き方改革の概要をはじめとして、具体的な取り組みや新型コロナウイルスによる働き方への影響についてご紹介します。ぜひ参考にしてください。

働き方改革とは?

働き方改革とは、労働者が個々の事情に合わせて不自由を感じることなく働ける社会づくりを目的としたものを言います。

「長時間労働の是正」、「多様で柔軟な働き方の実現」、「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」の3つを柱とし、労働者の保護や労働時間の適正化のための措置が講じられています。

2019年4月より、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」の施行が順次始まっています。

改正労働基準法とは?

改正労働基準法とは、働き方改革関連法の1つであり、労働条件に関する最低限の基準を定めた「労働基準法」を改正するものです。

改正労働基準法のポイントは、フレックスタイム制の拡充、時間外労働の上限規制、年次有給休暇の取得義務化、高度プロフェッショナル制度の創設、月60時間超の時間外労働の割増賃金率引き上げです。

高度プロフェッショナル制度とは、高度な専門的知識を有している一定の年収要件を満たす労働者に対し、健康・福祉確保措置を講じた上で労働時間規制から除外するものです。

働き方改革が必要な理由4つ

働き方改革が必要な理由4つ 働き方改革が必要な理由4つ

働き方改革は、一億総活躍社会の実現に向けた取り組みの1つです。一億総活躍社会とは、性別や年齢にかかわらず、障害や難病のある人も含めて、皆があらゆる場で活躍できる社会のことを言います。

働き方改革には、労働環境をはじめとする様々な背景があります。ここでは、働き方改革が必要な理由を4つご紹介します。

■1:労働力人口の減少

少子高齢化による労働力人口の減少が背景にあります。

ここでいう労働力人口は、国内の生産活動を支える15〜64歳の「生産年齢人口」のうち、労働の意思があり、かつ、労働能力がある人口を指しています。2013年から2015年の3年間では、生産年齢人口が約330万人減少したのに伴い、労働力人口も減少してきています。

総人口の減少、育児や介護との両立困難による離職などが労働力人口減少の原因になっています。働き方改革では、子育て支援や社会保障制度を整えることで、労働者が働きやすい社会づくりを目指しています。

■2:出生率の低下

出生率の低下による少子化が社会問題とされています。少子化の原因として、未婚化や晩婚化のほか、不安定な就業や育児との両立が難しい職場環境などがあげられます。

少子化対策として、働き方改革では安心して出産できる環境の支援、継続的な男性の家事・育児への参画などに着目し、政策を進めています。

■3:長時間労働と過労死

長時間労働による過労死があげられます。総務省の労働力調査によると、2014年度の「週労働時間が49時間以上の者」の割合は21.3%を占めています。日本は欧米の先進国と比べて長時間労働の割合が高く、働きすぎが問題とされています。

業務の過重な負荷が過労死に繋がるため、長時間労働の解消や働き方の見直しが課題となっています。

■4:世界と比較した場合の労働生産性の低さ

公益財団法人 日本生産性本部が公表した「労働生産性の国際比較 2020」を見ると、日本の時間当たりの労働生産性は、世界の主要7ヶ国の中では最下位となっています。

労働生産性とは、労働者1人あたりまたは1時間あたりに生み出す成果の指標です。具体的には、投入した労働力に対し、どれだけの売上や利益、付加価値が得られたかを数値化したものです。

日本の労働生産性が低い原因として、労働時間の長さや1つの業務に従事する労働者数が多いことなどが挙げられます。

日本と同様にものづくり大国と称されるドイツでは効率性を重視しており、年間労働時間が日本よりも100~300時間ほど短く、高い労働生産性を誇ります。

政府が行っている 働き方改革の具体的な取り組み8つ

働き方改革では「長時間労働の是正」、「多様で柔軟な働き方の実現」、「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」という3つの柱をもとに様々な施策を打ち出しています。

政府が実際に行っている働き方改革の具体的な取り組みについて見ていきましょう。

■1:長時間労働の見直し

長時間労働を見直すことで、働きすぎの防止やワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現を図ります。

具体的には、残業時間の上限規制、勤務間インターバル制度の導入、年次有給休暇の取得義務化などがあります。

残業時間の上限は、月45時間・年360時間に設定されました。特別な事情があり労使が合意する場合は例外となりますが、「年720時間」、「複数月平均80時間」、「月100時間未満」、「月45時間超は年間6ヶ月まで」という規制があります。

勤務間インターバルとは、労働者の生活時間や睡眠時間を確保するため、勤務終了後に一定時間以上の休息時間を設けるものです。

取得率が低い年次有給休暇については、年5日の取得を企業に義務付けています。労働者の希望を踏まえた上で、企業が取得時季を指定するという流れになりました。

■2:柔軟に働くための環境整備

より柔軟に働けるよう、テレワークや副業・兼業といった環境整備の支援が行われています。

テレワークは情報通信技術を活用することで、時間や場所にとらわれずに柔軟に働ける勤務形態です。厚生労働省は「テレワーク総合ポータルサイト」を解説し、テレワークを導入または検討している企業に向けて情報提供しています。

また、労働者の所得増加やキャリア形成、優秀な人材確保の観点から副業・兼業が促進されています。企業も労働者も安心して副業・兼業ができるように、厚生労働省のガイドラインによって明確なルールが設けられています。

■3:ダイバーシティ推進

ダイバーシティとは、国籍や性別、年齢、価値観、キャリアや働き方などの多様性を意味します。ダイバーシティ推進は、多様な人材を登用して活躍できる場を提供することで、新たな価値や技術を生み出すものです。

育児、介護と仕事の両立、障害のある人が自立した生活を送るための雇用対策、外国人労働者への職業紹介や雇用管理など、様々な立場の人が働きやすい環境を支援しています。

■4:公正な待遇体制の見直し

「同一労働同一賃金」の導入により、公正な待遇体制の確保を目指しています。同一労働同一賃金は、同一企業や団体における正規雇用・非正規雇用の労働者間の不合理な待遇差をなくすものです。

基本給や賞与、各種手当だけでなく、教育訓練や福利厚生などを対象に、非正規雇用の処遇改善が求められています。

厚生労働省は、待遇差が不合理であるかどうかを判断するための原則となる考え方や具体例をまとめたガイドラインを設けています。これに該当しないケースは、各企業の労使において検討することが望まれます。

■5:賃金の引き上げと生産性の向上

賃金引き上げに向けた生産性向上の支援が行われています。働き方改革実行計画では、年率3%を目途に最低賃金を引き上げ、全国加重平均1,000円を目指しています。

最低賃金引き上げに際し、中小企業や小規模事業者の業務改善を支援するために、「業務改善助成金」が設けられました。生産性向上の目的で設備投資を行い、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げた場合、経費の一部が助成されます。

■6:ハラスメントを防止する対策の強化

職場におけるハラスメント対策が義務化されました。

パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業・介護休業などに関するハラスメントを防止するための措置を講じることが事業主の義務となります。

厚生労働省では、ハラスメントの発生状況や対策の進捗を把握するため、全国の企業や労働者を対象とした実態調査を行っています。

■7:再就職希望者への支援と人材の育成

働き方改革では、転職・再就職支援と人材育成にも力を入れています。

離職3ヶ月以内の無期雇用労働者を受け入れる「早期雇入れ」、中途採用率の向上、45歳以上をはじめて中途採用する「中途採用拡大」を行った企業は助成金の対象となります。

また、公的制度「ハロートレーニング」を受けられます。一定の要件を満たした場合は、各種手当や給付金が支給されます。

■8:働き方改革に関する取り組みの事例紹介

働き方・休み方改善ポータルサイトでは、取り組みの事例を見ることができます。制度やルールの導入や策定に際して参考にするとよいでしょう。

とある会社では、個人別・労働日単位でのシフト勤務パターンの選択を可能とし、テレワーク拡充や休暇取得にも力を入れています。

義務化された年5日の年次有給休暇取得以外に月1回の休暇取得を推進し、育児休業対象となる男性社員には7日以内の短期育児休業が有給で取得できる環境を整えています。

新型コロナウイルスの感染拡大が働き方に与えた影響4つ

新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の働き方にも変化が生まれました。

感染リスク回避の観点から、新しい働き方が推進されています。新型コロナウイルスの感染拡大が働き方に与えた影響を4つご紹介します。

■1:テレワーク導入企業が増加

情報通信技術を活用したテレワークを導入する企業が増えました。

通勤せずに自宅で勤務可能なため、感染リスクを抑えられるほか、通勤時間がなくなる分、自分の時間が増える、優秀な人材の確保や事業継続といったメリットがあります。

新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークを導入する中小企業には「働き方改革推進支援助成金」が支給されており、テレワークが推進されています。

■2:働き方を見直す意識の変化

コロナ禍では、働く人々の意識に変化をもたらしています。

内閣府による「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」では、感染症拡大前と比べて仕事への向き合い方に変化があったと答えた人は、全体の57%でした。

仕事よりも生活を重視するようになった人は約50%で、よりワーク・ライフ・バランスの重要性が高まったといえます。

また、20・30代では資格取得や転職・起業に取り組む割合が大きく、自身のスキルアップやキャリア形成など、新しいことへチャレンジする人が多く見られました。

■3:一部業種での労働時間の減少

テレワーク実施率が高い業種では、労働時間が減少傾向にあります。

また、飲食や宿泊業などのサービス業は、緊急事態宣言による営業自粛を受けて労働時間が大幅に減少しています。

■4:労働生産性向上への注目の高まり

労働生産性向上への意識が高まっています。

内閣府の「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」にて、コロナ禍で仕事の効率性や労働生産性が減少したと答えた人は全体の47.7%で、サービス業や製造業においては過半数を占めました。

このような中で、働き方改革の目的でもある労働生産性の向上について注目されています。中小企業庁では、中小企業の生産性向上を推進するため、先端設備等導入制度による支援を行っています。

今後私たちの生活に変化を与える働き方改革をしっかり理解しよう

働き方改革を推進する政府の動きと中小企業の取り組み 働き方改革を推進する政府の動きと中小企業の取り組み

働き方改革は、少子高齢化や労働力不足、過労死などの問題を解消し、柔軟かつ多様な働き方を可能にするものです。

新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の事態の中、新しい働き方に取り組む企業が増えています。私たちの生活に変化を与える働き方改革の内容をしっかり理解しましょう。

【この記事に関連する目標】

※他の目標とも関連していますが代表的なものをあげています。

[参照元]

『「働き方改革」の実現に向けて』(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

『働き方改革~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~』(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/000474499.pdf

『働き方改革関連法のあらまし(改正労働基準法編)』(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/000611834.pdf

労働基準法 第一章 総則 (労働条件の原則)第一条

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

『労働力調査(基本集計)2020年(令和2年)平均結果の要約 』(総務省)

https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index1.pdf

(4) 時間当たり労働生産性の国際比較(公益財団法人 日本生産性本部)

https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/report_2020.pdf

『働き方改革の実現に向けて』(内閣府)

http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/k_40/pdf/s8_1.pdf

『第2章 なぜ少子化が進行しているのか』(内閣府)

男性の暮らし方・意識の変革に向けた課題と方策(男女共同参画局)

https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/kurashikata_ishikihenkaku/pdf/0310houkoku_i.pdf

『過労死等の現状』(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/16/dl/16-1-1.pdf

『労働生産性の国際比較2020』(公共財団法人 日本生産性本部)

https://www.jpc-net.jp/research/detail/005009.html

『労働時間やメンタルヘルス対策等の状況』(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/19/dl/19-1-1.pdf

『仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章』(内閣府)

http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/charter.html

『テレワーク普及促進関連事業』(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/telework.html

『副業・兼業の促進に関するガイドライン』(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf

『ダイバーシティ経営の推進』(経済産業省)

https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/

『同一労働同一賃金特集ページ』(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

『賃金引上げ、労働生産性向上』(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/chingin/index.html

『職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)』(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html

労働移動支援助成金(中途採用拡大コース)(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160737.html

『ハロートレーニング』(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188045.html

『取組・参考事例検索』(働き方・休み方改善ポータルサイト)

https://work-holiday.mhlw.go.jp/case/

『令和元年通信利用動向調査の結果』(総務省)

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/200529_1.pdf

『働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)』(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisikitelework.html

『~新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワーク実施~』(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/000777425.pdf

『新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査』(内閣府)

『経営サポート「先端設備等導入制度による支援」』(中小企業庁)

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/seisansei/index.html