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【SDGs】
マイクロプラスチック
問題とは?
海洋プラスチックの
問題を考える

私たちの暮らしの中で毎日大量に出るごみ・排水・二酸化炭素などによって、海洋汚染が進み、海の豊かな環境や生態系が壊れつつあり、世界的な問題となっています。私たちが将来も豊かな暮らしを続けていくための世界共通の目標として、国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)でも、「目標14.海の豊かさを守ろう」という目標が立てられているほどです。

特に深刻なのは、海を漂う大量のプラスチックごみの問題です。海のプラスチックごみは「海洋プラスチック」と呼ばれ、海の生き物に深刻な被害をもたらしています。最近では「マイクロプラスチック」と呼ばれる、ごく小さなプラスチックが、海の生き物だけでなく人体にも影響があるのではないかと心配する声も上がっています。

「海の汚染が深刻になっている」「海の豊かさを守ろう」と耳にしたことはあっても、実際に海を守るために何をすればよいのかはっきりと答えられる人は少ないかもしれません。プラスチックごみが海の生態系にどのように影響を与えているのかについて学び、どうすれば海の豊かさを守れるのか考えてみましょう。

増え続ける
プラスチックごみが、
自然環境に与える
深刻な悪影響

増え続けるプラスチックごみが、自然環境に与える深刻な悪影響(マイクロプラスチック) 増え続けるプラスチックごみが、自然環境に与える深刻な悪影響(マイクロプラスチック)

■微生物に分解されないプラスチックが海にたまり続けている

プラスチックの生産量は年々増えていて、ごみとして捨てられるプラスチックもまた増え続けています。ごみの処理には、焼却する、埋め立てる、あるいはリサイクルするといった方法があります。このように適切に処理されれば問題ないのですが、ごみが増えれば増えるほど適切に処理されないプラスチックごみも増えてしまうのが現状です。

たとえば、落ち葉や動物の死骸などは微生物によって二酸化炭素や水、土壌に含まれる物質などに分解されて、最終的にはあとかたもなくなってしまいます。しかし、プラスチックは微生物によって分解されることがないため、多くは数百年もの間、環境の中に残り続けます。

プラスチックごみが適切に処理されないと、川の流れや風に運ばれて海にたどり着きます。こうして、自然に還ることのないプラスチックが海にどんどんたまってしまい、海や海岸を汚し、さらに海の豊かな生態系を壊す原因になっているとして、世界的に問題視されています。

海に存在するごみを海洋ごみと言います。海洋ごみのうちの60%ほどが、プラスチックごみだとも言われています。

■海を漂うプラスチックごみが海の生き物に与える影響

海に行った時に、ペットボトルや食品の包装容器、プラスチック製のレジ袋など、さまざまなプラスチックのごみが海岸に山のように打ち上げられているのを見たことはありませんか?こうしたごみは海を訪れた観光客がポイ捨てしたものもあれば、外国から波に乗って流れ着いたものもあります。みんなが使うビーチがごみで汚れていると、嫌な気持ちになりますね。

しかし、海の生き物にとっては、こうした大量のプラスチックごみが、生死に関わる問題になっています。嫌な気持ちになるどころの問題ではありません。

魚や、海鳥、クジラやウミガメなどの多くの海の生き物が、海に漂うごみに絡まったり、これをエサと間違えて食べてしまったりすることで、傷ついたり死んでしまったりしています。こうした例のうち、92%がプラスチックごみの影響によるものと言われています。※1

※1…出典:Gall, Sarah C., and Richard C. Thompson. "The impact of debris on marine life." Marine pollution bulletin 92.1-2 (2015)
https://indicit-europa.eu/cms/wp-content/uploads/2017/07/Gall-Thompson-2015-MarPollBull_Impact-of-debris-on-marine-life.pdf

たとえば、2019年にスコットランドで見つかったクジラの死体を解剖したところ、胃の中から大量のプラスチックごみが見つかりました。その重さはなんと100キログラムもあったそうです。※2

※2…出典:クジラの胃に100kgのごみ、なぜプラごみ食べる? | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/120900714/

また、ウミガメがエサにしているクラゲと間違って、プラスチック製の袋を飲み込んでしまうという例もたくさん報告されています。

さらに、漁業に使う網やレジャーで魚釣りをする時の釣り糸も、プラスチックごみの一つです。魚の釣り糸が絡まって足が傷ついてしまったり、エサをとれなくなってしまったりした、海鳥の姿をニュースで見たことがある人もいるのではないでしょうか。

■マイクロプラスチックが生態系に与える影響

海のプラスチックごみの中でも、最近、特に注目されているのがマイクロプラスチックです。マイクロプラスチックとは、大きさが5mm以下の小さなプラスチックごみのことを言います。海を漂うプラスチックごみが波や紫外線の影響で細かく砕かれたものや、化粧品や歯磨き粉に研磨剤として含まれるごく小さなプラスチックの粒などが、マイクロプラスチックと呼ばれます。

ごく小さなプラスチックの破片や粒ですから、海の生き物が海水と一緒に飲み込んでしまったり、エサと間違えて食べてしまったりします。プラスチックは消化できないため、体内に残り続けます。また、こうした生き物をエサにしている海鳥や大型の魚などにも、マイクロプラスチックがたまっていくことになります。

マイクロプラスチックが消化器官にたまってしまうと、消化器官を傷つけたり、栄養を吸収する働きが弱くなったりしてしまうと考えられます。

もう一つ心配されているのは、マイクロプラスチックに含まれる有害な化学物質です。そもそもプラスチックは製造の過程で、用途によってさまざまな化学物質が添加されています。こうした化学物質の中には、有害性が指摘されているものもあります。さらに、マイクロプラスチックには化学物質を吸着しやすい性質があるため、海に流れ出た排水に含まれる農薬や殺虫剤に使われるような有害な化学物質を吸収していると言われています。

こうした有害な化学物質を含むマイクロプラスチックが海の生き物の体内に取り込まれ、海の食物連鎖がくり返されることで濃くなってしまうのではないかと心配する意見もあります。そうした魚介類を人間が食べ続けたら、どうなってしまうでしょうか。

このように、マイクロプラスチックは海の生き物に悪影響を与えて生態系を壊す可能性があるばかりではなく、人間への被害も心配されているのです。

SDGs
(持続可能な開発目標)
でも
問題視されている
海洋プラスチック

SDGs(持続可能な開発目標)は、世界中の人々がこれからも豊かな暮らしを続けていくためにはどうしたらよいのかを示した、世界共通の目標として、2015年に国連で採択されました。このSDGsの中でも、海洋プラスチックをはじめとする海洋汚染の問題は、「目標14.海の豊かさを守ろう」として大きく取り上げられています。

海は私たちが地球に住むうえで欠かせない環境や、多くの人が食料としている海産物など、多くの恵みを与えてくれています。しかし、地球温暖化や海洋汚染の影響で、海の豊かな生態系が壊れつつあります。目標14では、地球温暖化による環境の変化や海産物の獲りすぎで、多くの海の生き物が絶滅の危機に瀕していることや、私たちが出すごみや排水が海を汚してしまっていることに対して、世界が取り組むべき行動を具体的に示しています。

海のごみの問題の中でも、特に深刻とされているのが海洋プラスチックの問題です。現在、世界で海に流れ出ているプラスチックごみは、毎年800万トンを超えていると考えられています。これはジャンボジェット機5万機分の重さに相当します。このままいくと、2050年には海の中にあるプラスチックの重さは、海の魚の総量を超えるという予測もあります。このまま海洋プラスチックごみがどんどん増えてしまったら、自然環境や海の生き物に深刻なダメージを与えてしまうでしょう。

SDGsでも取り上げられているということは、世界中の人々が今すぐに対応しなければいけないほど深刻な問題だということです。政府や企業だけの問題ではなく、私たち一人ひとりも、豊かな海を守るために何ができるのか考え、行動していかなければいけません。

私たちの身の回りに
使われている
プラスチックの種類

■安くて便利なプラスチックはさまざまな製品に使われている

世界のプラスチックの生産量は年々増えています。その量は、1964年~2014年の50年間で、なんと20倍にまで膨れ上がっているのです。プラスチックは安くて便利なため、たくさんの種類があり、さまざまな製品に使われています。ここでその代表的な例を見てみましょう。

[代表的なプラスチックの種類と用途]

  • ポリエチレン(PE) ※高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンがあります。

    高密度ポリエチレン(HDPE)…バケツ、洗剤やシャンプーのボトル、灯油タンクなど

    低密度ポリエチレン(LDPE)…ストロー、レジ袋、ラップ、食品容器、紙パック飲料の内側・外側、ブルーシートなど

  • ポリプロピレン(PP)…ペットボトルキャップ、文房具、おもちゃ、プラスチック製の食品保存容器、家電や自動車の部品、カーペットやロープの繊維、医療器具など
  • ポリ塩化ビニル(PVC)…チューブ、ホース、水道管、合成皮革など
  • ポリスチレン(PS)…食品トレー、発泡スチロール、プリンターやテレビの外側、プラモデル、CDケースなど
  • ポリエチレンテレフタレート(PET)…ペットボトル、卵のパック、フリースなどの衣類の繊維など

ここに紹介したのはほんの一例ですが、私たちの身の回りにはプラスチックを使ったものが多いことが、よくわかりますね。

日本で販売される容器や包装には、プラスチックでできた製品であることを示す識別表示マーク、いわゆるプラマークを表示することが、法律で定められています。プラマークの下には、上で紹介したような「PE」「PP」などのプラスチックの種類を表すアルファベットが表示されていますから、家にあるものにどんなプラスチックが使われているのか、ぜひ調べてみてください。

<参考>容器包装の識別マーク一覧

  • 3R識別マーク「アルミ缶」
  • 3R識別マーク「スチール缶」
  • 3R識別マーク「ペットボトル」
  • 3R識別マーク「プラスチック製容器包装」
  • 3R識別マーク「紙製容器包装」

(※上記の識別マークとは、消費者がごみを出すときの分別を容易にし、市町村の分別収集を促進するためのマークです。識別マークに基づいて消費者がきちんと容器ごみを分別すれば、この識別マークがついた商品はリサイクル可能な資源として生まれ変わる可能性が高まります。回収方法やリサイクル対象商品の基準など、自治体によって大きくルールが変わりますので、詳しくは各自治体にお問い合わせください。)

■マイクロプラスチックの種類

容器や包装に使われるプラスチック以外に、海の生態系への影響が心配されているプラスチックにマイクロプラスチックがあります。マイクロプラスチックとは、5ミリ以下のごく小さなプラスチックのことを言います。このマイクロプラスチックには、「一次マイクロプラスチック」と「二次マイクロプラスチック」の2種類があります。

一次マイクロプラスチック

一次マイクロプラスチックは大きく分けて、化粧品に含まれるマイクロビーズと、プラスチック製品を製造する時の原料となるレジンペレットの2種類に分けられます。

マイクロビーズとは、洗顔料やハミガキ粉などの化粧品にスクラブや研磨剤として使われている、ごく小さいビーズ状のプラスチックのことです。1mmの1000分の1~10分の1くらいの大きさで、下水処理施設を通り抜けてしまい、そのまま海に流れ込んでいると考えられています。欧米では、マイクロビーズを使った製品の販売を規制している国もあります。

レジンペレットとは、さまざまなプラスチック製品を製造する時に原料として使われる、米粒大のプラスチックのことです。

二次マイクロプラスチック

二次マイクロプラスチックとは、プラスチックごみが海を漂ううちに、紫外線にさらされて劣化してもろくなったり、漂流物同士や岩、砂などとの摩擦によって細かく砕けたりしたもののことです。

これらのマイクロプラスチックは、小さすぎて海の中や海岸で回収するのは、非常に難しくなってしまいます。細かく砕ける前にプラスチックごみを拾う、あるいは海に流れ込むプラスチックを減らす、マイクロビーズを含む化粧品を使わないといった対策が必要です。

海洋プラスチックや
マイクロプラスチック

なくすために
できること

海洋プラスチックやマイクロプラスチックをなくすためにできること 海洋プラスチックやマイクロプラスチックをなくすためにできること

■海洋プラスチックを減らすため、日本でもレジ袋が有料に

私たちの身の回りにあるプラスチック製品のうち、最も多く生産されているのが、容器・包装・袋などのパッケージ類で、全体のおよそ36%を占めています。そして、パッケージ用のプラスチックのうちリサイクルされている割合は14%しかないと言われています。実際にプラスチックごみの割合を見ると、全体のほぼ半数をパッケージ類が占めています。

特に、ペットボトル・食品トレー・レジ袋といった「使い捨て」のプラスチック製品が大量に作られ、大量に捨てられていることが、プラスチックごみの増加に大きく影響しています。

このような「使い捨て」のプラスチック製品を減らすための取り組みが、世界中で活発になっています。

日本でも、2020年7月からスーパーやコンビニエンスストアなどで、プラスチック製のレジ袋が有料化されました。今までは買い物をすると無料でもらえていたものが、有料になることによって、マイバッグを用意する人が増えています。「レジ袋をもらわない」という選択をする人が増えることで、プラスチック製のレジ袋の使用量を減らそうという目的があるのです。

また、「このプラスチックはすぐにごみになるのではないか」「代わりに使えるものがないだろうか」という考え方が、消費者の間に広まっていくことも期待されます。

レジ袋の有料化を通して、プラスチックごみの量を減らすこと、プラスチックごみを減らそうという意識が広がっていくことが期待されています。

■私たちの暮らしを便利にしてくれるプラスチック

ここまで、海洋プラスチックが海の豊かさを壊す原因となっていることについて紹介してきました。しかし、プラスチックは「悪いもの」「すべてなくしたほうがよいもの」なのでしょうか。プラスチックと正しく向き合うためには、プラスチックの悪い面だけでなく、よい面にも目を向けることが大切です。

スーパーに並ぶ食品はほとんどがプラスチックの容器や袋に入っていますね。これは、プラスチックの、「軽くて丈夫」「水や空気を通しにくい」「密閉しやすい」といった特性を生かして、食品の長期保存や長距離の運搬が可能になったおかげです。

また、紙おむつや不織布のマスクもポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチックから作られています。こうした衛生用品は、「使い捨て」のプラスチックではありますが、洗濯したり消毒したりする手間を省いて衛生的に使えるため、生活の質をよくすることに役立っています。

また、文房具や家電、衣服にプラスチックを使うことで長く使えるものになり、むしろごみの削減につながるという側面もあります。

このように、プラスチックが使われている場面や役立っている側面に目を向けると、「必要なプラスチック」もたくさんあるということが分かります。

日本でも、レジ袋を減らすためにレジ袋の有料化が始まりました。プラスチックストローを紙や金属製のストローに替える動きも広まっています。

レジ袋やプラスチックのストローは、使う量を減らしやすいプラスチック製品であるとも言えます。でも、乳幼児のいる家庭で紙おむつがまったく使えなくなったら、お世話をする人の負担が重くなってしまいます。

身の回りにはどんなプラスチック製品があり、何が必要なプラスチックで、どれが減らせるプラスチックなのか。このように考える視点も非常に大切です。

■海の豊かさを守るために私たちにできること

海洋プラスチックが増え続けていて、海の環境を壊したり、海の生き物にダメージを与えたりしているということは、今すぐに解決しなければいけない問題です。

私たち一人ひとりも、毎日の生活の中で、どうやったらプラスチックの使用量を減らせるのかを考え、行動に移していく必要があります。そのための考え方の基本となるのが、「リデュース=ごみを減らすこと」「リユース=くり返し使うこと」「リサイクル=資源として再利用すること」の「3R」です。

リデュースの考え方

ごみになるものを買わない、もらわないという意識を持ちましょう。特に、ペットボトルやレジ袋などの「使い捨て」のプラスチック製品をなるべく使わないことが大切です。マイバッグや水筒を持ち歩くようにすれば、ごみになるペットボトルやレジ袋を減らせます。また、包装が簡素な商品や、プラスチックに替わる素材で作られた商品を選ぶのも、プラスチックごみを減らすことにつながります。

リユースの考え方

新しいものにどんどん買い替えていれば、その分、ごみが増えてしまいます。使用済みのものでも手入れしたり修理したりして、大切に長く使うことも大切です。フリマなどを利用して人に譲ったりすることも、ものの寿命を延ばしてごみを減らすことにつながります。

リサイクルの考え方

ペットボトルや容器包装プラスチックなどは、資源として再利用できるように、ごみの分別を徹底しましょう。リサイクルされるプラスチックの割合を増やせれば、海洋プラスチックも減らすことができるはずです。

海洋プラスチックの問題を解決するためには、私たち一人ひとりが「プラスチックごみを減らそう」という意識を持つことが大切です。

あなたの普段使っているものの中に、プラスチックが使われている製品はどれくらいあるでしょうか? スーパーに並ぶ食品の中に、プラスチックの容器や包装を使っていないものはあるでしょうか?身の回りのプラスチック製品で、他の素材で作られたものに替えられそうなものはありませんか?

まずは身の回りのプラスチックについて、お子さんと一緒に考えてみましょう。

【この記事に関連する目標】

※他の目標とも関連していますが代表的なものをあげています。

[参照元]

海洋プラスチック問題について |WWFジャパン

https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html

海洋ごみとマイクロプラスチックに関する環境省の取組|環境省

https://www.env.go.jp/content/900542773.pdf

【資料3】海洋プラスチック問題について|環境省 3P

https://www.env.go.jp/council/03recycle/【資料3】海洋プラスチック問題について.pdf

プラスチック図書館|企画・制作 一般社団法人 プラスチック循環利用協会 監修 全国小中学校環境教育研究会

http://www.pwmi.jp/tosyokan/04_syurui.html

マイクロプラスチックとは(基礎知識) | ウォータースタンド株式会社

https://waterstand.jp/waterlife/water_environment/waterlife00067.html

ポリエチレン(PE)の特性と用途 包装材からスーパーエンプラまで|株式会社アイ・メーカー

https://i-maker.jp/blog/polyethylene-8391.html