2020年6月1日
世界の水と衛生の現状と
目標6の内容
日本では水道の蛇口をひねれば安全な飲み水が利用でき、トイレもほとんどが水洗式で衛生的に利用できます。しかし世界には、上下水道が整っていないために、きれいな飲み水や衛生的なトイレを利用できない人がたくさんいます。
世界人口の10人に3人は、安全に管理された飲料水を手に入れるための上水道のようなサービスが利用できていない状況です。
また、世界人口の10人に6人は、安全に管理されたトイレなどの衛生施設を使えていません。約9億人もの人々が、今でも屋外で排泄行為を行っています。屋外での排泄は飲料水が汚染され、赤痢やコレラなどの病気が蔓延するリスクを高めます。安全な飲み水やトイレがないことが原因で、毎日1,000人近い子どもが下痢症で命を落としているのです。
水やトイレに代表される衛生状況の悪さは、経済状況が悪く上下水道や衛生施設などのインフラに費用をかけられない、開発途上国や経済的に貧しい地域で大きな問題になっています。
そして水に関する設備が十分に整っていないことや、干ばつの影響により、世界人口の40%以上は水不足の影響を受けており、この割合は今後さらに上昇すると予測されています。飲み水やトイレ以外にも生活用水や、農業や工業といった活動を行っていくために、たくさんの水が使われています。人間の活動によって汚染された水の約80%が、まったく処理されないまま海や河川に流されていることも、これから解決していかなければいけない課題の一つです。
さらに、持続可能な経済成長を目指すためには、農業や工業などの活動の中で汚染された水が河川や海に放出されない仕組みや、必要な量の用水を効率よく確保する仕組みをつくることが求められています。地球の資源としての水の安全な使い方も、世界中で考えていかなければいけない課題の一つと言えるでしょう。
安全な水とトイレを
広める
ための世界中での取り組み
水とトイレなどの衛生的な施設について特に問題が深刻な地域では、上下水道を整備し運用していく費用や技術がないため、先進国が資金を援助したり、技術や運営面でのノウハウを提供したりするなど、国際的な協力が必要です。
開発途上地域への支援としては、既にさまざまな団体が、安全な水を提供するための給水活動や、トイレの設置などの取り組みを進めています。さらに、水をくみ上げるためのポンプや水をきれいにするためのろ過器、安全に水をためておけるタンク、トイレを水洗式にするための浄化槽といった、水道や電気などのインフラが整っていない場所でも使える機器を開発・提供している企業も多くあります。
こうした取り組みは機器や施設を設置したときに終わるものではなく、衛生に関する知識が現地の人々の間に定着し、持続的に使い続けることができる上下水道と、その効率的な運営方法が定着するまで続けられなければいけません。
飲み水やトイレの問題だけでなく世界で水の問題を考えてみると、世界の水消費量の9割を占める農業でいかにして節水するか、山林や土も含めた河川の流域全体で安全に水を管理するためにはどうしたらよいか、考える必要があります。
このような問題解決のための取り組みとして、水資源が乏しい地域で海水を淡水化する事業の展開に力を入れる企業や、下水処理施設向けの少ない消費電力で下水処理できる装置を取り扱う企業もあります。また、自社の工場の排水を適切に処理したり再利用したりするシステムを導入して、水資源を有効に利用しようという意識は、既に多くの企業に根づいていると言えるでしょう。
安全な水とトイレを
広める
ための日本での取り組み
日本に住む私たちの生活を支える水道。しかし、水道管にも実は寿命があります(法定耐用年数40年)。今使われている水道管の多くが高度経済成長期以降に整備されたものですが、老朽化が進む一方、更新は進んでいません。30年後には水道管の半分以上が法定耐用年数を超えてしまうという予測もあります。
また、日本の水道普及率は97%を超えていますが、近年では水源となる河川や湖、沼の水質改善や渇水(かっすい:水不足のこと)が頻繁に起こっていて、安定的な水の利用には調整が必要です。
※より詳しい情報は、厚生労働省の「新水道ビジョンについて」をご確認ください。
さまざまな製品をつくる工場でも、多くの水が使われます。そこで日本の企業でも、節水型の設備を利用して水の効率的な利用を心がけたり、海や河川の汚染を防ぐために工場の排水に有害な化学物質などが含まれないよう管理したりすることは、既に一般的な取り組みになっているのです。
さらに、水源の水質を守るために森林が大きな役割を果たしていることに着目し、地域と協力して森林の保護に取り組んだり、水と森林の大切さを子どもたちに教えるプログラムを実施したりしている企業もあります。
安全な水や衛生的なトイレを利用できるようにすることは、すべての人が健康に暮らすために欠かせません。健康は意欲的に働いたり、教育を受けたりするための基礎となり、ひいては全体的な経済成長にもつながります。特に水と衛生に関する問題が深刻な地域での取り組みを続けてこの問題をできるだけ早く解消し、持続可能な開発目標実現のための基盤を整えることが重要です。
参考資料
「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」8つのターゲット
[引用元]総務省・仮訳(2019年8月)
- 2030年までに、全ての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ衡平なアクセスを達成する。
- 2030年までに、全ての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女児、並びに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う。
- 2030年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用を世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。
- 2030年までに、全セクターにおいて水利用の効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。
- 2030年までに、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施する。
- 2020年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼を含む水に関連する生態系の保護・回復を行う。
- 2030年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、排水処理、リサイクル・再利用技術を含む開発途上国における水と衛生分野での活動と計画を対象とした国際協力と能力構築支援を拡大する。
- 水と衛生に関わる分野の管理向上における地域コミュニティの参加を支援・強化する。
このターゲットでは、「安全な水とトイレ」にまつわる目標と取り組みが詳しく設定されています。
※ターゲットとは、「最終的な目標」に到達するために必要となる「より具体的な達成すべき目標・成果、必要な取り組み」のことです。
※目標6のターゲットの全文は参考資料としてこのページの末尾に引用しました。
- 2030年までに、全ての人が安全で安価な飲料水をいつでも平等に入手できるようにする
- 全ての人が、適切かつ平等に下水施設・衛生施設を使えるようにする
- 汚染された水の放出を減らし、安全な再利用を増やすことなどにより水質を改善する
- 全ての場所で水利用の効率をよくし、水不足に悩む人を半減させる
- 国際的な協力を含むあらゆるレベルでの統合水資源管理を実施する
- 2020年までに、山地、森林まで含めて水に関連する生態系の保護・回復を行う
- 水・衛生分野での改善を目指して国際協力を拡大する
- 水・衛生分野の管理向上における地域コミュニティの参加を支援・強化する
[参照元]
※参照元サイトのURL変更や掲載期間終了により、ページが閲覧できない可能性があります。ご了承ください。
「目標6 すべての人々に水と衛生へのアクセスを確保する」(国際連合広報センター/2018年12月)
https://www.unic.or.jp/files/Goal_06.pdf「目標6 安全な水とトイレの普及はなぜ大切か」(国際連合広報センター/2019年3月)
https://www.unic.or.jp/files/06_Rev1.pdf「6.安全な水とトイレを世界中に」(国際開発センター/2018年)
https://idcj.jp/sdgs/img/IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL6.pdf