2020年6月1日
世界の平和と公正の
現状と
目標16の内容
持続可能な社会を実現するためには、地球上のあらゆる場所の、すべての人に平和と公正がもたらされなければなりません。災害や紛争に苦しむことなく、暴力や差別を受けずに、安心して安定した暮らしを続けることができる状況の中で、平等な立場で話し合うことができてこそ、平和で豊かな社会を実現することができるからです。
SDGsでは「誰一人取り残さない(Leave no one behind)」というテーマが強調されています。「平和と公正をすべての人に」という目標は、このテーマを実現するための目標でもあるのです。
しかし、世界には今でも紛争が起きている地域があり、基本的な人権すら保障されていない人々がいます。2014年には、紛争によって6万人近くものシリア人が亡くなりました。紛争によって経済が崩壊し、難民や移民も急激に増えています。命の危険と隣り合わせの中、仕事がなくなり、その日の食べ物や飲み水にも困る過酷な生活に多くの人が苦しんでいます。
さらに、子どもが武装グループに参加させられたり、誘拐や人身売買、性的被害に遭ったりということも頻繁に起こります。学校や病院が攻撃で破壊されることもあります。紛争の被災地域には、小学生にあたる年齢であるにもかかわらず、学校に通えていない子どもたちが約2,900万人もいます。紛争は不安で不安定な生活を強いるだけでなく、教育と雇用の機会を奪い、子どもたちのよりよい将来を奪っているのです。
また、世界には治安の悪い地域も残っていて、殺人や窃盗をはじめとする犯罪に遭うリスクが高いままになっています。公正な社会を実現するためには、行政・司法・警察などの組織に透明性が求められますが、低所得国ほど賄賂などの不正や汚職が多いとされています。先進国においても犯罪や汚職、人権侵害はゼロではありません。
すべての人に平和と公正をもたらすためには、紛争、犯罪、搾取、虐待といった暴力を減らすこと、正しいことが尊重される社会をつくること、年齢や性別、人種や民族、宗教、性的指向などによって差別されることなく法律によって守られ権利が保障されること、社会的な意思決定の際には自由に意見が言えるようにすること、などが必要です。
世界中のあらゆる地域でこうした社会を作っていくために、各国の政府はもちろん、国連などの国際機関も連携して、透明性の高い規制や法の整備を進めることが求められています。そして、私たち一人ひとりが政府の取り組みに注目して、声を上げることも大切なことです。
平和と公正を実現する
ための
世界中での取り組み
世界では、紛争によって苦しむ人を助けるため、支援団体や各国の政府開発援助(ODA)を通して支援が続けられています。水や食料の提供、井戸やトイレの設置、医師の派遣や医薬品の提供といった基本的な支援から、紛争被災地の電気、水道、道路、学校、病院といったインフラの整備、経済活動再開のための支援まで、幅広い取り組みが続けられています。
社内で不正が行われないよう透明性を高めることや、反社会勢力とのつながりを禁じることを、企業理念に掲げる企業も増えています。また、平和と公正のために、自由に情報にアクセスできる権利が求められているため、インターネットなどの情報インフラの提供を強化している企業もあります。
平和と公正を実現する
ための
日本での取り組み
平和と公正が保たれる社会を実現するためには、「国民が主権を持ち、国民自ら政治を行う」という考え方である民主主義に根ざした政治が、正しく機能することが必要です。そのためには、少数派の意見も届く政治の仕組みを作っていくことが大切です。
しかし、日本の投票率が世界200カ国中158位と、かなり低いことが問題として挙げられています。これでは一部の国民の意見しか政治に反映されず、公正が保たれているとは言えません。この低投票率問題を解消するために、日本では政治を「自分ごと」として受け止められるようになるための主権者教育の推進や、より投票へのハードルが低くなるインターネット投票の導入について議論されているのです。
また企業においては、女性の登用を増やす、障がい者雇用を促進するなどの雇用面での取り組みの他、不正行為があった際の内部通報制度を設ける、通報者を保護する体制を構築するなどのコンプライアンスにまつわる取り組みがなされています。
国際的な紛争や人権侵害を、今すぐに企業や個人が解決するのは難しいかもしれません。そんな中でも、紛争地域の支援に取り組んでいる団体に募金や寄付をするのも一つの方法です。そして、自分の身の回りにいる人たちに、公正さが失われて困っている人がいないかどうか考えてみるのも、平和と公正を実現する入り口になるのではないでしょうか。
参考資料
「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」12のターゲット
[引用元]総務省・仮訳(2019年8月)
- あらゆる場所において、全ての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。
- 子供に対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。
- 国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、全ての人々に司法への平等なアクセスを提供する。
- 2030年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。
- あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。
- あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる。
- あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する。
- グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化する。
- 2030年までに、全ての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。
- 国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。
- 特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。
- 持続可能な開発のための非差別的な法規及び政策を推進し、実施する。
このターゲットでは、「平和と公正」にまつわる目標と求められる取り組みが詳しく設定されています。
※ターゲットとは、「最終的な目標」に到達するために必要となる「より具体的な達成すべき目標・成果、必要な取り組み」のことです。
※目標16のターゲットの全文は参考資料としてこのページの末尾に引用しました。
- あらゆる場所で、全ての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる
- 子どもに対する虐待、搾取、取引などのあらゆる形態の暴力を撲滅する
- 法の支配を促進し、全ての人々に司法への平等なアクセスを提供する
- 2030年までに、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する
- あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる
- あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる
- あらゆるレベルにおいて、参加型及び代表的な意思決定を確保する
- グローバル・ガバナンス(国際統治)機関への開発途上国の参加を拡大・強化する
- 2030年までに、全ての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する
- 情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する
- 特に開発途上国において、暴力や犯罪に対応するため、国際協力などを通じて国家機関の能力を強化する
- 持続可能な開発のための非差別的な政策などを実施する
[参照元]
※参照元サイトのURL変更や掲載期間終了により、ページが閲覧できない可能性があります。ご了承ください。
「目標16 公正、平和かつ包摂的な社会を推進する」 (国際連合広報センター/2018年12月)
https://www.unic.or.jp/files/Goal_16.pdf「目標16 平和、正義と充実した制度機構はなぜ大切か」(国際連合広報センター/2019年3月)
https://www.unic.or.jp/files/16_Rev1.pdf「16.平和と公正を全ての人に」(国際開発センター/2018年)
https://idcj.jp/sdgs/img/IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL16.pdf