どうなっているの? 5年生の「英語」 ~親世代とは大きく違う 今の英語の授業~

2020年度から、5・6年生では英語も成績評価がつく「教科」となりました。今や、小学生の「英語」事情は、親世代とは大きく異なっています。その違いやおうちのかたの知りたい疑問について、英語教育の専門家である太田先生にお話を伺いました。今回は、5・6年生の英語の授業についてお伝えします。

知識重視の授業から、英語を「使える力」を育む授業へ

現行学習指導要領の小学校英語のねらいは、小学生のうちから英語を「使える力」を育んでいくこと。社会がどんどんグローバル化していく中、知識に偏った英語力ではなく、高校卒業時までに「聞く」「話す(やりとり/発表)」「読む」「書く」の英語4技能5領域の力をバランスよく身につけることを目標にしています。
英語を「使える力」は、これからの社会を生きる子供たちの毎日を豊かにする大切なツールです。おうちのかたは過度に身構えることなく、お子さまをサポートしてほしいと思います。

ここが知りたい!  5・6年生 英語の授業のギモン解消Q&A

では実際に、5・6年生の英語の授業はどうなっているのでしょうか? おうちのかたのよくある疑問にQ&Aでお答えします。

Q1 親世代の授業とどう違うのでしょうか?
A1 英語を「覚える」授業ではなく、「使ってみる」授業である点が違います。
おうちのかた世代は、英単語や文法を「覚える」ことが中心の授業を体験したかたが多いのではないでしょうか。しかし、今では英語を「使える力」を身につけるために、「聞く」「話す」を中心とした授業が行われています。「自分ができること」など、子供たちが話したくなる身近な場面を設定して、その中で英語を使って「自分の考えや気持ちなどを伝えあう」ことを促す授業です。
中には少し難しい文法が含まれている場合もありますが、授業では文法の正誤より「"子供が話したいと思うことを表現できる英語表現"を指導する」ことが優先されています。

Q2 「成績がつく」って、どんなふうにつけられるのですか?
A2 「英語を通じてコミュニケーションをとる」というゴールを踏まえた評価が行われます。
これからの英語学習の目標は、「英語を通じて世界の人々とコミュニケーションできるようになること」です。そのため、親世代のように、英単語や文法のペーパーテストの結果だけで評価されるのではなく、英語でコミュニケーションしようとする姿勢なども含めた総合的な評価がされるようになりました。
例えば、英語が全部聞き取れなくても、聞き取れた部分から推測して話の概要をつかもうとしたり、わからないときには知っている英語で「もう一度言ってください」と気持ちを伝えようとするなど、進んで相手と通じ合おうとする力や態度が重視されます。
このような力はペーパーテストだけでは測れません。そのため、授業中のコミュニケーションの様子を評価したり、子供の自己評価を取り入れたりするほか、みんなの前で発表したり、スピーチなどの発表や、児童と先生とのやり取りなどの「パフォーマンステスト」を評価として実施している学校もあります。

Q3 やはり、ネイティブスピーカーの先生に教わるほうがよいのでしょうか?
A3 そうとは限りません。小学校の授業では、子供たちの意欲を引き出す指導が大切です。
文部科学省が令和4年度に実施した「英語教育実施状況調査」によると、学級担任や英語専科教員、他学年や他学級の英語指導が得意な先生など、授業の多くは日本人の先生によって進められています。ネイティブスピーカーの先生を希望するおうちのかたもいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそのほうがよいというわけではありません。
小学校の英語の授業では、子供たちが話したくなるような場面を設定したり、意欲を引き出したりすることがとても大切です。この点はまさに、担任の先生をはじめとした学校の先生の得意分野であるといえるでしょう。

子供たちが英語でコミュニケーションしようとする姿勢をなにより大切にしている現在の授業。ご家庭でも、お子さまが「英語って楽しい」「英語を話したい」と思えるようにサポートしていただければと思います。

※ご家庭でのサポートの具体的な方法については、「どうなっているの? 5年生の「英語」 ~家庭での英語学習サポートのポイント~」でご紹介しています。あわせてご覧ください。

プロフィール

【お話】

太田 洋(おおた ひろし)先生

東京家政大学人文学部教授。専門は英語教育学。国公立中学校教諭などを歴任し、文部科学省検定教科書「Here We Go!」(光村図書)の著者なども務める。「小学校英語 はじめの一歩」(共著/大修館書店)など著書多数。

イラスト:玉田紀子