今週の特集Special feature

子どもがツラそうな時に話を聞くコツ

子どもの自立と
親のゆとりを両立させる
3つの心得

保護者から絶大な信頼!

「ぬまっち先生」こと
沼田晶弘先生に
伺いました

小学校の現役教諭。自主性を引き出す独自の教育方法で子どもと保護者から大きな支持を受ける沼田先生が勧める、子どもの自立や成長につながる関わり方を紹介します。

心得の1 子どもの「自分ごと化」のチャンスを奪わない。 ――いつも隣で見守ることが正解ではない

「子どものため」は危険なマジックワード

「子どものために〇〇してあげる」という考え方は世の中にあふれています。この「子どものため」がマジックワードで、つい親は先回りして「子どものために」全部やってあげたくなります。しかし、子どもの成長は、やってみる・経験する機会に培われるものです。だからあえて「(子どものために)やってあげない」ことが大切なのです。

子どもに任せれば「自分ごと化」する→成長できる

子どもに自立してほしいと思う場面では、親が横で注意したり先回りして口を挟んだりせず、子どもがすべて自分一人でやりきることが重要です。自分で行動したことの結果だから子どもは真剣に向き合うし、自分で気付いたことだから子どもの身に付くのです。この状態が「自分ごと化」です。「自分ごと化」されると、成長が実感でき、さらに興味がわき、その学びを人に伝えたくなります。これは学校の学習発表などでも大切なプロセスです。

親は「べき論」から解放されよう!

「子どもが転ばないように手を繋ぐべき」「失敗しないように教えるべき。」そんな子育ての「べき論」にとらわれていませんか。大きなケガは回避する必要がありますが、転ばせないより転び方を教えるほうが子どものためになることも多いはずです。また、自分で失敗するから次にどうするかを考えて成長します。「こうするべき」よりも今、子どもに必要な経験を考え、取り除くよりも与えていきましょう。

心得の2 親は「ほめ方の勉強」をやめよう ――子どもはいつでもほめてほしいわけではない

その「ほめ」、ズレているかも

「子どもはほめて育てるべき」といわれますが、ほめ(承認)には下の図のように段階があり、必ずしもほめればよいわけでありません。たとえば子どもが「見て見て」と言う時は、顔を向けて子どものしていることを見てあげる(レベル1)だけでも子どもが満足することは多いのです。何かに取り組んでいたら「〇〇しているんだね」と見て気付いたことを伝えましょう(レベル2)。

ここまででも十分な「承認」です。本来はレベル1、2で十分なのに、いきなり「すごいね!」とレベル4からほめられても、子どもは「いい加減にほめているな」と見抜いてしまいます。親も、レベル1・2で、ほめを返し続けると疲れてしまうでしょう。

肯定すれば「自己肯定感」が上がる?

勉強でも運動でも、子どもは自分なりの目標を持ってトライしています。それでも結果が出なかった時、子どもの気持ちに配慮し、子どもを肯定しようとするあまりに「テストが難しすぎたからこの点数でも十分だね」「3番だったけど金メダルだよ」などと目標を下方修正してほめても、子どもの達成感や次への意欲にはつながりません。

「ダメでもいい」ではなく「やればできる」と思わせる

結果が出ない時は、親は子どもと共にそれを受け止め、悔しがったり残念がったりするとよいと思います。子ども自身が「努力はできた。でも、これが足りなかった」「次はうまくいく」と感じられると、子どもには漠然とした「自己肯定感」ではなく、自分はやればできるという「自己効力感」が育ちます。もちろん、「自分ごと化」させて結果を出すこと、それを認めることも「自己効力感」の強化につながります。

心得の3 親こそ自立しよう。 ――親が笑顔で自分の時間を大切にする姿を見せよう

親の自由な時間や心のゆとりが子どものためにもなる

親は、子どもをいちばん近くで見ている最大の理解者です。しかし、近い分だけ、子どもが自分と違う考えや行動をすると不満を感じてしまう面もあり、つい命令口調になって子どもの反抗や口答えを招いてしまうことがあります。なかなか難しい面もあると思いますが、親が自分のための自由な時間を持ち、心のゆとりを持つことは、子どもとの冷静なやりとりや判断にプラスに働くはずです。

親がニコニコしていることが最も大事なこと

子どもに手をかけ、時間を割くことばかりが「子どものため」ではありません。親自身が自分のための時間を持ち、ニコニコと楽しそうにしている姿を子どもに見せてください。また、親がうれしい時に素直に喜びや感謝を表現していると、子どもにもそうした反応が身に付いていきます。そして、素直に喜べる子は、自然とほめたくなり、周囲から「ほめ」を呼び込んで、自ら伸びていくのです。

親も子も義務ではなく助け合う関係に

大人も子どもも、家事や手伝いを「やらなければならない義務」と考えていると、つらくなります。もちろん家事はやらなくてはいけないことですが、「今日は大変だし、たまには外食」もOK。また、家事はなるべく分担して助け合えるとよいですね。

家族みんなが家事を「自分ごと化」できるように、任せる時は最後まで任せることが大事です。得意料理ができたら「あれ、また食べたいなあ」と、子どもの意欲をくすぐってください。何でも自分がやらなくては、と思うより気持ちも楽になり、協力し合うことで家族の絆も強くなっていくでしょう。

ぬまっち先生からのメッセージ

子どもは大人が思うよりもいろいろなことを理解しているし、やってみればできるのです。子どもに任せた時はフォローしすぎない、自分で考えさせる、求められる承認をしっかり返すことが大事。そうすれば子どもは、どんどん成長していきます。互いに自分らしく成長できる関係を目指しましょう!

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監修
沼田晶弘先生

ぬまた あきひろ・東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。子どもの自主性を伸ばす独自の教育方法で注目を集め、子どもの教育はもちろんビジネスの観点での講演や著書も人気。『もう「反抗期」で悩まない! 親も子どももラクになる“ぬまっち流”思考法』(集英社)など著書多数。

取材・文/小谷野少名 写真提供/PIXTA