今週の特集Special feature

データで見る学習意欲UP やる気のガソリンは? - 前編 -

以前の記事で、学年が上がると子どもたちの学習意欲は低下しがちであること、勉強のやり方や勉強することの意味がわかると意欲がアップすることなどをご紹介しました。子どもが勉強に向かう「やる気」を高めるために保護者が働きかける際は、やる気のメカニズムを知っておくと応用がききやすいのでおすすめです。今回と次回にかけて、そのメカニズムや保護者ができる具体的なヒントについて、ベネッセ教育総合研究所の木村治生さんがお話します。

【監修】
木村治生はるおさん

ベネッセ教育総合研究所 主席研究員

勉強に向かう「やる気」って、そもそも何?
やる気には大きく2つのタイプがある
「内発的動機づけ」は可燃性の高いガソリンみたいなもの
多くの子どもが内発的動機をもって勉強している
内発的動機を高める保護者の働きかけとは?
豊かな経験が「もっと学びたい!」のチャンスを増やす
ほめる、励ます、意味づける

勉強に向かう「やる気」って、そもそも何?

やる気には
大きく2つのタイプがある

勉強に向かうやる気のことを、心理学では「動機づけ」といいます。この動機づけには、大きく2つのタイプがあると言われています。一つは「内発的動機づけ」、もう一つは「外発的動機づけ」です。

内発的動機づけは、自分の心の内側からわき上がるような意欲のことです。学ぶことが楽しい、面白い、もっと知りたい、といった理由で学ぼうとする意欲で、他に何のごほうびやメリットがなくても、勉強すること自体に楽しさや面白さを感じている状態です。

もう一つの外発的動機づけは、外部からもたらされること(報酬など)を理由にして、学ぼうとする意欲です。学ぶ内容に興味がなくても、誰かにほめられたい、または叱られたくないから学ぼうとする意欲や、自分の目標を達成するために学ぶ意欲のことです。

「内発的動機づけ」は
可燃性の高い
ガソリンみたいなもの

保護者の方も自分の趣味や気になる話題に関することなどを学んでいて、楽しい、面白い、もっと知りたいと思った経験があると思います。人は自分の好きなこと、興味があることに対しては、もっと学びたいと思うもので、そうした意欲が「内発的動機付け」です。内発的動機づけは、いわば可燃性の高いガソリンのようなものです。誰かから指示されなくても、もっと深く、もっと広く知りたいと、自分で学ぼうとする心に火をつけ、広げていきます。例えば、鉄道が好きな子どもは、ものすごい数の駅名や電車の種類をあっという間に覚えていきます。その子にとって、鉄道に関する内容自体が面白く、知ることに楽しさを感じているからです。

多くの子どもが
内発的動機をもって
勉強している

実は、すでに多くの子どもが、内発的な動機を持って学んでいます。東京大学とベネッセ教育総合研究所が8年間に渡って行っている、2万組の親子の成長を追跡している大規模調査で、子どもに「勉強する理由」をたずねた結果が図1です。

図1:勉強する理由 ~内発的動機はどの学年でも高い~

内発的動機にあたるのが「新しいことを知るのがうれしいから」で、その肯定率は、小学生では6割、中学生や高校生でも5割を超えています。子どもたちは多かれ少なかれ好きなことがあり、そこへの知的好奇心に基づいて勉強しているのでしょう。好きな教科の授業は、他の授業よりも真剣に参加するという経験は大人でもあると思います。

図1には、外発的動機である「先生や親に叱られたくないから」の肯定率も示しています。外発的動機に関しては、後編にてお話します。

内発的動機を高める保護者の働きかけとは?

豊かな経験が
「もっと学びたい!」の
チャンスを増やす

内発的な動機を高めるポイントは、大きくは3つあります。
一つめは、子どもが小さいうちからいろいろな経験をさせることです。これは、お金をかけて習い事をたくさんさせればよいという意味ではありません。ふだんの遊びや、身近にある自然、メディアで報道される話題など、さまざまなことに好奇心をもっていろいろ考えることがとても大切です。サッカーが好きであれば、自分の所属するチームに適した戦術を考えてみたり、応援するプロクラブチームの国や地域の特徴を調べたりすることも学びの入り口になります。

ほめる、励ます、意味づける

二つめは、子どもの好きなことを認め、活動をほめて、励ますことです。
ものや金銭のごほうびを与えるのではなく、言葉で伝えることと、結果だけでなく努力の過程や価値を認めることがポイントです。勉強に限らず、趣味や遊びの世界にも、学ぶことはたくさんあります。子どもが好きなことを保護者も一緒に楽しむのもよいでしょう。

三つめは、学んだことや成長したことの意味づけをすることです。
活動して「楽しかった」だけで終わるのではなく、何を知り、何ができるようになったのか、それは子ども自身にとってどのような意味があるのかを振り返ることができるとよいでしょう。

例えば、子どもが学校から持ち帰った成果物やプリントなどを見て、「○○なところがすごいね」「○○ができるようになったね」などと子どもの成長を感じた点を伝えたり、「ここはどんなふうに作ったの?」などと深く尋ねたりします。このような言葉がけによって、子ども自身が自分の考えや行動を抽象化するきっかけをつくります。特に小学校高学年以降は、どのようにすれば次もうまくいくのかという学び方を工夫する力がつき、やる気アップにもよい影響を及ぼします。

まとめ

いま、学校では「探究的な学び」と言って、自分が関心のあることについて時間をかけて調べ、意見をまとめ、発表するような活動が多く取り入れられています。内発的な動機を持っていると、こうした学びでも成果を上げることができます。
親から見ればただ遊んでいるだけ、同じことをしているだけに見えることでも、子どもにとっては学びを広げ、深めているところかもしれません。ご家庭でも、子どもがワクワクし、熱中できる機会を増やして、やる気アップにつながるような働きかけができるとよいですね。

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【監修】
木村治生はるお

ベネッセ教育総合研究所 主席研究員

取材・文/神田有希子

次の特集は
2024年4月16日公開予定!

どうぞお楽しみに!