今週の特集Special feature

データで見る学習意欲UP 子どものやる気を二刀流で高める - 後編 -

前回ご紹介した「内発的動機づけ」は、勉強自体が楽しくて、進んで学びを深めたり、広げたりする意欲のことでした。いつもそのような意欲で勉強してくれればよいのですが、実際は難しいものです。
そんなときには、「外発的動機づけ」をうまく使うことが有効です。内発的動機と組み合わせて使うことで、やる気をアップさせ、かつ効果を長続きさせることが可能です。今回は、この「外発的動機」のポイントや保護者のかかわり方、内発的動機とのつながりについて、ベネッセ教育総合研究所の木村治生さんにお話しを聞きました。

【監修】
木村 治生はるおさん

ベネッセ教育総合研究所 主席研究員

外発的動機づけとは?
ごほうびを目当てに勉強する、は必ずしも悪くない
勉強する理由や目的が明確だとやる気は高まる
勉強ってそもそも何のため?を子どもにじっくり考えさせる
外発的動機を高める保護者の働きかけとは?
ほめ方、しかり方、ふだんの言葉がけのポイント

ごほうびを目当てに勉強する、は必ずしも悪くない

子どもが勉強に向かう「やる気」の1つが外発的動機づけです。代表的な例は、「先生や親にほめられたい」「叱られたくない」といった他者からの賞罰を理由に勉強するパターンです。東京大学とベネッセ教育総合研究所が8年間に渡って行っている大規模調査の結果では、図1のとおり、約3~5割が「叱られたくないから勉強する」と答えました。

賞罰(ほめる・しかる)や報酬(ごほうび)によって勉強をうながすことは、注意が必要です。しかって無理やりやらせたり、もので釣ったりして勉強させたとしても、その効果は長続きしません。しかし、子どもが小さいうちは、身近な人との信頼関係がとても大切で、先生にほめてもらいたいから、保護者が喜んでくれるから勉強をがんばる、という意欲は悪いものではありません。むしろ、保護者や教師との信頼関係の中で学んでいくことは、やる気を高める1つの方法として前向きに捉えるとよいでしょう。

図1:勉強する理由 ~約3~5割が、叱られたくないから勉強する~

勉強する理由や目的が
明確だとやる気は高まる

もちろん、一定の年齢になってからも親や教師の賞罰だけを目的に勉強するのは好ましくありません。特に小学校高学年以上になってから大切なのは、学ぶ意味や目的の理解です。
例えば、これから自動翻訳技術がどんどん進むのに、なぜ英語を学ぶ必要があるのでしょうか。一つの答えは、異なる文化的背景をもつ人ともコミュニケーションができる力を身につけるためです。単語を覚えるのは苦痛ですし、いまはスマホで調べれば簡単です。でも、語学を学ぶということは、相手の文化や価値観、その背景を理解することにつながります。このように、いま勉強していることと将来とのかかわりを子どもなりに理解しながら学ぶことが大事です。

勉強ってそもそも
何のため?を子どもに
じっくり考えさせる

図1で示したように「将来なりたい職業につきたいから」学ぶという子どもは多く、高校生になると7割を超えます。しかし、図2で示すように、「何のために勉強しているのか分からない」と、学ぶ目的を見出せていない子どもも一定数、存在します。その割合は、小学校高学年では約2割、中学生や高校生では3~4割です。そうした子どもたちに向けては、「この勉強はそもそも自分にとってどんな意味があるんだろう」と少し俯瞰ふかんして考えるきっかけや時間をつくることが大切です。勉強することが自分に必要で、役立つものだと子どもなりに腑に落ちると、やる気が高まります。

図2:何のために勉強しているのか分からない ~どの学年にも一定数存在~

外発的動機を高める保護者の働きかけとは?

ほめ方、しかり方、
ふだんの言葉がけのポイント

外発的動機を高めて、子どもが勉強に向かうような保護者の働きかけのポイントを、大きく3つの場面でご紹介します。

01 ほめるとき

結果だけでなく、どう頑張ったかのプロセスをほめましょう。物やお金などのごほうびではなく、言葉で示しましょう。すでに内発的動機づけをもって勉強している子どもに、安易にごほうびをあげると、ごほうびが目的になってしまい、内発的な動機づけが低下すると言われています(アンダーマイニング効果)。

02 叱るとき

「とにかく勉強しなさい」などと、ただ勉強するように指示したり、子どもの義務だからと突き放したりするのではなく、理由を丁寧に伝えましょう。毎回伝えることは難しくても、その勉強をすることにどんな意味があるのかを伝えることで、なぜ勉強が必要なのかを考えたり、「勉強は将来の自分に役に立つのだ」と子どもが思えたりするような伝え方を心がけます。

03 普段から意識したいかかわり方

学ぶことの大切さを伝えたり、その意味づけを手伝ったりして、子ども自身が学ぶ目的について考えられるようなサポートを意識しましょう。
例えば、保護者自身が頑張って勉強して後に役に立った経験や、身につけた力が仕事や生活に生かされていることを話すと、具体的で説得力が高く、内容をイメージしやすくなります。

まとめ

子ども自身が「内発的動機づけ」をもって楽しいと思えることを深く探求していく学びは、とても大切です。でも、「内発的動機づけ」だけを大切にして、「外発的動機づけ」をよくないことだと思う必要はありません。
学年が進むと、内容に興味がなくても学ばなければならないことも増えてきます。さまざまな動機をうまく組み合わせながら課題をクリアしていくことが大事です。それは、大人も同じです。大人だって、仕事や家事を「好きだから」「楽しいから」という理由だけでは行っていないのではないでしょうか。さまざまな理由によってモチベーションを高めて、頑張っているはずです。そうした気持ちのコントロールや勉強の工夫を、子ども自身ができるように、保護者の方がサポートできるとよいですね。

前編はこちらから

【監修】
木村 治生はるおさん

ベネッセ教育総合研究所 主席研究員

取材・文/神田有希子