今週の特集
お子さまに合った
睡眠の取り方ができていますか?
夏休み中に崩れてしまった生活リズムを立て直せずに、新学期をスタートするご家庭もあるのではないでしょうか。朝起きられない、授業中に寝てしまうといった場合、睡眠不足なだけではなくお子さまの睡眠習慣が乱れている可能性があります。この特集では、睡眠習慣をチェック・タイプ診断し、勉強方法のポイントや普段の生活で気を付けたいことを提案します。
早稲田大学 理工学術院 柴田重信研究室とベネッセ教育総合研究所による「子どもの生活リズムと健康・学習習慣に関する調査2021」によると、小学4年生~高校3年生の子どもの平日の睡眠時間は、学年が上がるにつれ、減少傾向にあることがわかりました。
年齢とともに減る睡眠時間
平日の睡眠時間の減少傾向からも、平日は無理をして睡眠を削っている可能性があり、休日に少し寝だめをして、平日の睡眠不足を補っていると考えられます。上記のグラフにはありませんが、平日の起床時刻は学年によって大きく変わらないことから、就寝時刻が遅くなっていることが睡眠時間の減少につながっていると考えられます。このことからも、夜更かしをしないような生活習慣をつくることが重要なポイントです。
睡眠不足は
精神的な健康状態にも悪影響が!?
調査の結果、睡眠時間が不足している場合にはイライラするなどの精神的な健康状態も悪いことがわかりました(図2)。
また、子どものころの睡眠不足は、肥満、高血圧、頭痛、肩こり、けん怠感(けんたいかん)、めまい、不安感やうつ、感情障害につながるともいわれています。つまり、子どものころの問題だけではなく、成人してからの健康に悪影響を与える可能性があります。子どもの普段の睡眠が平均より短い、または精神的に不安定な様子が見られる場合は、睡眠時間の見直しが必要かもしれません。
なお、必要な睡眠時間は人によって異なります。何時間寝るべきか、睡眠・体内時計の専門家でも一人ひとりにサッと答えを教えられるものではありません。一つの考え方ですが、休日により長く寝ている子どもは、平日に睡眠が足りていない可能性があります。よって、休日に寝だめをしないこと、睡眠時間を平日も休日と同じくらいとることは、睡眠改善の目安になると思います。
このチェックでは、睡眠が普段から足りているのか、平日と休日の、生活リズムのズレ(社会的時差ボケ)があるのかについて結果が出ます。また、朝型、中間型、夜型という3つの体内時計の個性(クロノタイプと呼びます)もチェック結果として表示されます。クロノタイプごとに、勉強をする時のポイント、生活で気を付けたいことについても解説します。
注目される、睡眠における
「社会的時差ボケ」
週末に夜更かしをして、休日が遅寝・遅起きになると、平日と休日の間で、生活リズムのズレが生じます。これを「週末時差ボケ」とか「社会的時差ボケ」と呼びます。つまり、気付かないうちに、毎週末に1〜2時間の時差がある海外旅行に出かけ、時差ボケを経験しているのと同じ現象なのです。このズレによって、月曜日になかなか起きられなかったり、日中に眠くなってしまったりという問題が平日に起きます。ズレが1時間以上ある子どもは、気分が落ち込みやすく、イライラしやすいこともわかっています。よって、学業成績を維持、改善するためには、週末に夜更かしせず、平日と同じ時刻になるべく寝起きする習慣を付けるよう、改善してみるといいでしょう。
- ■お子さまの学年
- ■平日の睡眠習慣
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- 起床時刻
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- 就寝時刻
- ■休日の睡眠習慣
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- 起床時刻
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- 就寝時刻
- 1週間当たり、xx時間の睡眠が不足しています
- 平日と休日の睡眠がxx時間ずれています
世の中は朝型に有利な社会です。よかったですね。朝型は午前中がカギです。午前中に集中して勉強しましょう。テスト前の徹夜は向いていないタイプです。テスト前にもっと勉強をしたいと思う時などは、就寝時間によっては睡眠時間を削ることにはなってしまいますが、いったん寝て早朝に勉強に取り組むと効率がよいかもしれません。
朝型・夜型は一部遺伝的に決まっており、生活リズムにも個人差がありますから、夜型の子どもに無理に朝型生活を強いる必要はありません。
「正しい睡眠をとっている」
子どもは成績上位傾向
学業成績と普段の生活の規則正しさは関連している傾向があり(図3)、普段なるべく規則正しく生活しているかが大事です。子どもの場合は、生活リズムが崩れて、学校生活に支障が出ないようにする必要がありますから、朝型・中間型の場合は体内時計を夜型化させない、夜型の場合は、平日と休日の生活リズムのズレを大きくしないようにしたいですね。そのために、ご家庭でできる工夫を紹介します。
朝食は、
脳の切り替えスイッチ!
朝食を食べることで、午前中から体に栄養が回り、交感神経が優位になり、脳が活発に働きます。また、私たちの体内時計は24時間よりも少し長く、毎日調整する必要があります。朝食は体内時計を調節し、生活リズムを朝型に変化させる効果があります。朝遅く起きる夜型の場合、朝食を抜くともっと遅寝・遅起きになってしまいます。朝はなるべくバランスのよい食事を心がけてほしいですが、もし十分に朝食をとる時間がつくれないのであれば、パン1枚、フルーツ1つでもかまいません。また、朝食だけではなく、朝の光を浴びること、軽い運動をすることにも体内時計を早めてくれる効果があります。
遅い時間の食事は体内時計も
体重計もズラしてゆく……
遅い時間に夕食をとることは、体内時計の遅れを招き、夜型化を助長します。また、夜は血糖値が上がりやすく、遅い夕食や夜食をたくさんとることは肥満の原因にもなります。一方で、学校が終わったあとに塾に行き、遅くまで勉強をしたあと、家に帰り、やっと夕食を食べる子どもも少なくありません。夜食による体内時計の夜型化は、おなかのすき具合に依存します。また、おなかがすいている時に一気に食べてしまうと、血糖値もその後急激に上昇してしまい、肥満の原因になります。そこでおすすめは、放課後におにぎり1個でもよいので間食をとることです。間食をとることで、夜遅い夕食による夜型化、体重増加の影響を抑えることができます。
夜のカフェインは翌日以降に
ダメージあり!
中学、高校生になると、試験の前日に徹夜で勉強することもあると思います。その際、眠気覚ましにとエナジードリンクやコーヒーを飲む人も多いと思います。これらの飲料に含まれるカフェインは、体内時計を調節する効果があり、特に夕方以降のカフェイン摂取は体内時計の夜型化を促します。カフェインを飲んだあとにすぐ目が覚める効果とは別に、その夜、眠りづらくなり、さらに次の日の目覚めや寝付きも悪くなってしまいますから、普段の生活においても、夕方以降はカフェインをとらないことをおすすめします。
スマホやPCのナイトモードを設定!
スマホなどの画面を見ている時間(スクリーンタイム)は、青色光(ブルーライト)によるメラトニン(睡眠誘発ホルモン)の分泌抑制と、体内時計の夜型化をもたらします。睡眠の妨げになるだけでなく、次の日の生活リズムにまで影響しますから、寝る前のスクリーンタイムを減らしていきましょう。また、スマホやPCは、ナイトモードを使用することで、ブルーライトをカットすることができます。
室内の照明は、輝度そのものを下げることだけでなく、色を変えることで眠気を誘うことができます。日が暮れたら、蛍光灯のような白色光ではなく、電球色と呼ばれるオレンジ色の温かみのある色に切り替えるといいでしょう。
子どもの年齢や学年が上がってくると、早く寝てほしくても、親の言うことをすぐに聞いてくれない場合もありますよね。現在大学生の人たちが、小・中・高校生のころ、親に言われてその気になった声かけについて教えてもらいました。ぜひ試してみてくださいね。
「スマホ見すぎじゃない、やめたほうがいいよ」と言われるとイライラしてしまって、お母さんだって見ているじゃないか、と逆効果になることも多かったです。「私もがんばるから一緒に使う時間減らせるようにがんばろう」と声をかけて協力してくれるといいと思います。
上智大学2年生 / A・Hさん
「まだやっているの?」と言われると少しイラッとしましたが、「お風呂に入らない?」など別の提案をされたりして気持ちを切り替えることがありました。長時間でなければ様子を見て見守るくらいの気持ちでいてくれると子どもも信頼されていると感じて自制するかもしれません。
新潟大学2年生 / K・Aさん
親自身が「私はそろそろ寝るね」と言ってくれると、もうそんな時間なのかと気付き、「私ももう寝る」と素直に言えることが多かったと思います。
大阪大学3年生 / M・Yさん
規則正しい睡眠習慣を付けるためには、まずは子ども自身が、自分の生活習慣の状況を把握し、規則正しい生活が大事であることを知るのが一番大切です。睡眠習慣チェックで、自分はどれくらい睡眠不足なのか、どれくらい社会的時差ボケがあるのかを調べてみましょう。親もまた生活習慣を整えることで手本になることが大事です。生活習慣は案外すぐに変えられるものです。まずは1週間、継続してみましょう。