今週の特集Special feature

クイズ!間違いだらけの防犯対策

子どもを狙った犯罪を耳にすると心配がつのります。保護者は、子どもにどう注意を促せばよいのでしょうか? 防犯の決まり文句である「怪しい人や暗い場所に気を付けて」は「知っている人や明るい場所なら大丈夫」といった油断を招いてしまう危険性をはらんでいます。各国の犯罪学に精通し、「地域安全マップ」の考案者でもある小宮先生に正しい防犯対策をお聞きしました。

小宮 信夫 先生

立正大学 文学部社会学科教授

どこまで危険を見分けられる? 防犯常識クイズ

第1問この中で不審者は何人?

ー 当てはまる人をタップで選択 ー
複数選択可

  • ※Youtube「小宮先生の防犯教室 あぶないとこって、どんなとこ?」よりイラスト転載

答え:
0(ゼロ)または 6人全員
解説

外見だけでは、不審者かどうかを見分けることはできないため、正解は0人。しかし全員に用心する必要あり、ともいえます。犯罪に遭わないためには「人」ではなく「犯罪が起こりやすい場所」に注目する必要があります。このあと詳しく解説していきます。

第2問防犯上、
危ないほうのトイレはどっち?

ー 当てはまるほうをタップで選択 ー

  • ※Youtube「小宮先生の防犯教室 あぶないとこって、どんなとこ?」よりイラスト転載

答え:
A
解説

男子トイレと女子トイレの入り口が近いため、男性の犯罪者が女子トイレの近くにいても違和感がなく、よりAのほうが危ないといえます。誰もが女子トイレや多目的トイレに近付けて入りやすい構造は、とても危険です。

第3問子どもだけで遊ばせるのに、
より危ない公園はどっち?

ー 当てはまるほうをタップで選択 ー

  • ※イラスト原案『子どもは「この場所」で襲われる』(小宮信夫・小学館新書)

答え:
A
解説

「入りやすく、見えにくい」かどうかが危険な場所を見分けるときのポイントです。比較すると、Aの公園はジョギングしている人がいますが、すぐに去ってしまい、子どもをずっと見ているわけではありません。さらにブランコの近くのベンチは、犯罪者が子どもに話しかけやすい配置になっているため、より危険といえます。

  • ※Bの詳しい解説は記事の中でご案内しています。

警戒すべきは人より場所

子どもはあっさりだまされる

子どもを狙った犯罪は全国各地で発生しています。私の推測では、未遂や軽微なものを含めると警察が把握している件数の20倍は起きているのではないかと考えています。被害に遭うのは女子が多く、誘拐事件の8割は犯罪者にだまされてついて行ったケースとなっています。

犯罪者は子どもに警戒心を抱かせないようにとても自然に近付きます。特に小学校3、4年生くらいまでは大人の嘘を見抜くことは難しく、子どもは犯罪者を「優しい人」と認識し、心を許してしまうことがあります。

さらに犯罪者は、たとえその時だませなかったとしても、また別の子どもに接触し成功するまでくり返します。やがて犯罪者もどんどん言葉巧みになっていくため、いくら子どもに「怪しい人に気を付けて」と言ったところで、防犯の意味はないに等しいのです。

「入りやすくて見えにくい」場所を好む犯罪者

わが子を危険から守るためには「人」に注目するのではなく、犯罪者が好む「場所」に警戒するように伝えることが第一です。しかしそれは「暗い夜道」などではありません。子どもを狙った犯罪は、子どもが多くいる状況下でも起こります。時間帯でいえば登下校中や日中の明るいさなか、場所でいえば「公園」「学校の周辺」「集合住宅」です。

ただ犯罪者も捕まりたくないので、子どもに近付くのに手間取ったり他人の目が届きやすい場所は避けようとします。つまり犯行現場に選ばれやすいのは、「入りやすく、見えにくい」場所になります。

「入りやすい」とは?

閉鎖された空間ではなく誰もが簡単に出入りしやすいということ。犯罪者が紛れ込んでも違和感がなく、すぐに逃げ出せるような場所は、たとえ近所の公園であっても危険性は高まります。

「見えにくい」とは?

目撃されにくい、注目されにくいということ。物理的に見えないだけではなく、人でにぎわっている場合でも、関心を払ってもらえない場所は心理的に「見えにくく」なります。

クイズ問題第3問を振り返ってみましょう。Aの公園が「入りやすく、見えにくい」のに対して、Bの公園は相対的に安全です。

フェンスがあって犯罪者が外から子どもに接触しにくいうえに、窓の多い住宅に囲まれていて、洗濯物も見えていることから、犯罪者心理としては「いつ窓が開いて人に目撃されてもおかしくない」と考えます。

A:防犯上危険な公園 B:防犯上安全な公園

このように「入りやすく、見えにくい」をキーワードにすれば、男女の入り口が近いトイレは「入りやすい」ので危険、ガードレールがある道は子どもが車に「入りにくい」ので安全、高い塀が続く道は家の窓から「見えにくい」ので危険……など、危ない場所を予測できるようになるでしょう。

人通りが多いからこそ「見えにくくなる」

防犯対策で間違えやすいのが、「明るく人通りの多いところは安全」という認識です。他人の目が届くかどうかは、実は「人の多さ」とは関係ありません。駅前、商店街、ショッピングモールなどはたくさんの人がいる故に注意が拡散され、お子さまに注目してもらえません。つまり「見えにくい」場所です。

さらに人通りの多い場所では「傍観者効果」という心理が働きやすくなります。これは周囲にたくさんの人がいると、「自分以外の誰かがやるだろう」と行動を起こさなくなる心の動きです。

そのため連れ去りを目撃したとしても、「みんなが何も言わないのであれば、問題はないだろう」と考えてしまい、誰も制止しないということが起こります。実際に、多くの人がいたにもかかわらず、子どもが誘拐されたケースが複数あります。

危険からわが子を守るシマウマの教え

頭でも腕力でも、子どもは大人には勝てません。そんな子どもに、「襲われたら犯人に抵抗しよう」と言うのは酷です。力の弱いお子さまを守るには、警戒に長けたシマウマ(草食動物)のサバイバル術が見本になります。防犯対策に生かし、お子さまの安全を守りましょう。

危険と判断した場所は避ける

肉食動物であるライオンは、シマウマのいそうな場所に来ます。同じようにお子さまにも、「犯罪者は子どもがいそうな場所に来る」と伝えましょう。防犯グッズ等もありますが、実際に犯罪者を前にした時に活用できるかはわかりません。体が固まって、走って逃げることも声を出すこともできないでしょう。そうした状況にならないことが何よりの防犯なのです。

ただし「〇〇は危ないから行かないでね」と言われただけでは、お子さまもなかなか危険性を理解できないものです。一緒に周辺を散策したり、通りかかったりした時に、「この公園は外から見えにくいから危ないね」「この道はいろいろな家の窓からよく見えるから安全だね」と、危険や安全を判断した理由を確認するといいでしょう。

また子どもを巻き込んだ犯罪が起きた時は、ニュース映像を見ながら「やはり入りやすく見えにくい場所だったね」などと話し合い、日頃から防犯知識を養うことが大切です。

危ない時は群れる

危険な場所を避けるといっても、安全な公園が周辺にないこともあるでしょう。通学路でやむなく危険な道を利用するお子さまもいます。こうした時は集団行動を基本にし、一人ではなく、友達と一緒にいるように伝えましょう。

シマウマも危ない場所では必ず群れで行動するもの。群れから離れて1頭になったシマウマをライオンは襲います。子どもも複数人でいれば、犯罪に遭う確率はかなり低くなります。

一人になったらより警戒しよう

友達と一緒に遊んだり下校したりしても、途中で別れて危険な場所で一人になることも出てきます。こうした時は、草食動物が常にキョロキョロと周囲を見回し警戒しているように、お子さまも安全な場所にたどり着くまで、後ろを振り返ったりして警戒を怠らないようにすることが大切です。

危険な場所では周囲の人をよく確認するだけでなく、声をかけてくる大人に十分警戒します。いくら親切そうに見える相手でも、頼まれたり、誘われたりしたことは断ることです。「すみません」と丁寧に謝って、すみやかにその場を立ち去るように教えましょう。

犯罪研究のプロが教える防犯Q&A

Q 「知らない人について行ってはいけない」と教えていますが、この注意の仕方で子どもを守れますか? (小学生の保護者)

ANSWER 「知っている大人」が犯罪に及ぶケースもあります

子どもを狙う犯罪者は見知らぬ相手だけとは限りません。「入りやすく、見えにくい」場所では、たとえ相手が知っている大人であっても、絶対に警戒するようにお子さまに伝えてください。

反対に管理者の目が行き届いている遊び場など、「入りにくく見えやすい場所」であれば、知らない大人とも会話をさせたいものです。子どもは大人とコミュニケーションをとることで交渉術が身に付き、だましにも強くなります。「人」ではなく「場所の景色」に注目することを、繰り返し教えましょう。

Q 19時ごろまで一人で留守番をさせています。防犯カメラとスマホの見守りサービスを使った防犯対策だけで大丈夫でしょうか? (小3の保護者)

ANSWER 来客があっても絶対出ないことも伝えましょう

スマホでお互いに連絡が取れて、いつでもお子さまの安全確認ができる状態であれば、留守番中の防犯対策としては十分です。あとは、留守中の来客には絶対に応じないようにお子さまに伝えてください。

相手が宅配便や知っている大人であっても、子どもだけの時はドアを開けないのが防犯の鉄則です。

Q 子どもは下校時間が遅くなると薄暗い道を通って帰宅します。遠回りになっても通学路を変えたほうがよいですか? (中2の保護者)

ANSWER 選べるのなら危険性の低いルートに変更を

「危険からわが子を守る シマウマの教え」で紹介した草食動物のサバイバル術にもとづいて考えてみます。危険な場所は避けたほうがよいので、選べるのであれば安全なルートを通学路にしましょう。ただし、危険性は明るさでは判断できませんので、見極めには「入りやすいか」「見えにくいか」という基準が必要です。

たとえば、ガードレールがなく、周囲に住宅がないような「入りやすく、見えにくい」場所は、街灯があっても全く安全とはいえません。むしろ犯罪者がターゲットを見定めやすくなり、防犯上、逆効果になります。

まずは「入りやすく、見えにくい」をキーワードに通学路を再確認してください。どうしても危険な場所を通るのであれば、お友達と下校できないかお子さまに聞いてみましょう。帰りが一人になってしまう時は十分に警戒するように言い、可能であれば保護者のお迎えも検討してはいかがでしょうか。

Q 子どもが、友達どうしでショッピングモールに行きたいと言い出しました。何歳ごろから許可すべきでしょうか? (小5の保護者)

ANSWER 防犯上は複数で行動すればOKです

お子さまどうしでショッピングモールに行く年齢については、子どもの防犯知識次第ですが、複数人で行くのであれば大きな心配はないといえます。ただし、犯罪リスクが高いトイレや階段の踊り場、その他見えにくい場所では絶対に一人にならず、常にお友達と行動することを約束させましょう。

監修

小宮 信夫 先生

立正大学 文学部社会学科教授

社会学博士。ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省などを経て現職。地域安全マップの考案者であり、警察庁や文部科学省、各自治体で防犯に関わる委員を歴任。テレビ、ラジオへの出演や全国各地での講演多数。著書に『写真でわかる世界の防犯 ――遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)、『犯罪は予測できる』(新潮新書)、『子どもは「この場所」で襲われる』(小学館新書)などがある。

取材・文/中澤夕美恵 イラスト/ヤマサキミノリ