今週の特集Special feature

今日、子どもと盛り上がる!考える力を育てるニュース会話術 小学生版

ニュースには世界や社会の学びがいっぱい! 「考える力を付けてほしい」そんな保護者のかたの思いをかなえつつ、楽しく会話ができる、ニュースの活用法をお教えします。

【監修】
早川明夫先生
文教大学地域連携センター講師
森上教育研究所講師

まなびの手帳ユーザーにアンケート! 2023年上半期 小学生親子が話題にしたニュースは?

1位
物価高・値上げ(115人)
2位
ロシアウクライナ情勢(109人)
3位
自然災害(89人)
4位
迷惑動画・闇バイト(83人)
5位
新型コロナ5類移行(78人)
6位
WBC優勝(61人)
7位
チャットGPT(57人)
  • *「まなびの手帳」保護者のかたに関するアンケート(2023年8月実施)197名の回答より
  • *国名は略称です。

編集部コメント

「子どもにはまだわからないと思ってしまう」「小学生にわかりやすく話すのは難しい」という声も。でも、同じ部屋で朝夕のニュースやワイドショーを見ているときに感想を伝えるだけでも子どものアンテナには刺激になります。天気予報にも学びがあるように、関心を向けることが初めの一歩です。

早川先生コメント

集中的に取り上げられるニュース、長期的にくり返されるニュースは子どもも関心を持ちやすいですね。特に自分への影響が感じられると子どもの印象に残りやすいので、物価高はおこづかいやおやつ、自然災害は台風や猛暑、新型コロナはマスクの着用など、自分に結び付けてあげると理解が深まります。

Check!

中学受験では時事問題を出す学校が大半。高校受験では数が少なくなりますが、時事問題は出来事の暗記ではなく背景や影響を知り、自分なりに考えておくことが対策に。

上位ニュースから実例アドバイス 会話が増える・学びに変えるニュース活用術

ニュースの全体を理解するのはまだ難しい小学校低学年でも、外国の名前、食べ物やスポーツ、車など関心を持ちやすい情報が流れていたら声をかけてみて。
バラエティやクイズ番組で時事情報を取り上げているときもチャンスです。保護者のかたも「そうなんだ」「知らなかった」と学ぶ姿勢を見せ、ニュースを身近にしていきましょう。

1位2位 物価高・値上げ
ロシアウクライナ情勢

視点を広げて
観察力・応用力を高める

ガソリンも値上げかあ今度の旅行は電車だね おこづかいにも関係がある話だよ

身近な出来事との関係を考える

ガソリンの値上げでマイカー利用のハードルが上がっています。公共交通機関のよさを考えたり、高学年なら輸送費が商品の値段に影響したりすることにも目を向けてみて。
また、おやつやおこづかいは子どもの身近な関心事。具体的に自分に引き寄せてあげるとニュースへの関心が高まり、社会とのつながりが見えてきますよ。

少し遠いけど安いお店に買い物に行こうか 〇〇の入場料も高くなっちゃったんだ

物の値段や価格の仕組みについて考える

同じ商品でもお店や日によって売る値段が違うことからは、安くしても多く売ってお店が利益を出していること、高くても近所で買いたい人がいることなど、価格の仕組みが学べます。
また、一つの商品の値段の話で終わらせず、さまざまな物やサービスの値段が上がっていると意識させることで、「物価」の上昇が総合的な値上がりを表すことが体感できるでしょう。

小学校高学年なら パンが高くなっているのを知っている? 日本は小麦を外国から買っているんだよ

原材料と価格の関係や世界とのつながりに気づかせる

パンの値上がりを考えると、原材料の小麦の値上げだけでなく、作ったり売ったりする人の人件費、お店に運ぶ輸送費など、いろいろな物事が価格に含まれていることに気づけます。
貿易について学ぶ年齢になったら、外国の戦争や異常気象、災害なども日本の食品の値段に影響を与えていることを伝えることで世界との関係も生きた知識として身に付きやすくなります。

戦争のニュース・映像は
無理に見せないで

戦争に関するニュースや映像は、子どもに強い不安や恐怖を与えることも。国どうしの関係や背景がある程度理解できるようになるまでは無理に引き合いに出さないほうがよいでしょう。気にしている時は「心配だね」と子どもの気持ちを受け止めて。「早く終わるといいね」と伝えて気持ちを切り替えてあげてください。

早川先生コメント

ニュースの話題を通して、自分が社会の一員であること、それが世界とつながっていることを少しずつ意識させていきましょう。そのために、保護者のかたがたくさんの視点を持っておくといいですよ。また、ニュースを見る部屋には地図帳や辞典などを置いて活用すると、理解と定着度がぐんと上がります。

3位 自然災害

理由に目を向けて、
考える力を一歩深める

天気予報ってどうして沖縄から言うと思う?

天気予報の流れや動画に注目させる

全国の天気予報は基本的に沖縄から北海道方向に向かって紹介されます。これは、日本の上空に吹く偏西風に結び付いていて、雨雲レーダーの動きを見ても天気は西から東に変わりやすいことがわかります。梅雨前線、桜前線などに注目すれば、季節も北上していくことに気づくでしょう。

日本は猛暑だけど他の国はどうだろう?

気象から世界のつながりを感じる

スペイン(マドリード)では78年ぶりの記録的な暑さ、夏が涼しいイギリスでも猛暑、中国では大雨被害など、異常気象は世界各地で発生しています。外国のニュースを見たら、それぞれの国の位置を確認してみましょう。映像・画像が国の印象を強め、地理の素養を育み、これからの学びに大きな力になります。

台風のスピードが遅い(速い)ね

台風の速度や進路、これまでとの変化に気づかせる

台風のスピードが緩やかでフラフラと進む「ノロノロ台風」が増えています。背景には温暖化の影響があり、海水温度が上昇しているために赤道と北極の海水の温度差が縮まり、偏西風のスピードも緩やかになっていることがわかります。

小学校高学年なら 温暖化ってずっと続くのかな どうして『異常気象』って言うか知ってる?

環境問題やSDGs意識の種まきをする

ふと湧いてきた素朴な疑問を子どもに問いかけてみて。数十年〜数年前の気温や台風の動きを比べる、温暖化と二酸化炭素の関係を調べるなど、学びが広がります。異常気象が続くと農作物はどうなるかなどを一緒に考えてみてもいいですね。

早川先生コメント

ニュースの気象情報は身近で視覚的にも興味を持ちやすく、話のきっかけにぴったり。理科的な学びの素地になるだけでなく、視点を広げると世界や社会への学びが詰まっているので、まずは大人が興味を持って、わかりやすく伝えてあげてください。

4位 迷惑動画・闇バイト

想像力を育てて
社会性を身に付けさせる

こんなことされたらすごく困るよね

何が、なぜ悪いことなのかをわかりやすく話す

犯罪や事件は子どもの経験や想像力で理解できないことが多いので、気に留めなかったり、ただ不安に感じたりしてしまいます。どんなことが起きて、誰が困ったり悲しい思いをしたりしたのかをやさしい言葉で話し、もし自分の身に起きたらと仮定して話してみると伝わりやすいでしょう。

この人の家族は悲しいだろうな

家族の気持ちを通して感じさせる

悪いことをすれば、被害に遭った人はもちろん、悪いことをした人の家族も辛い思いをするという視点をもてるといいですね。「自分が悪いことをしてしまったら自分の家族はどう思うか」を想像することで、いざというときにブレーキをかけられるでしょう。

この人、このあとどうなるんだろう

犯罪の重大性、後々への影響を想像させる

周りの人からどう思われるか、友達との関係、仕事などへの影響は、大人はよくわかっています。でも若者の犯罪では、こうした影響を考えずに手を染めてしまうものが多いので、会話の中で少しずつ伝え、理解させていきましょう。

小学校高学年なら どうしてこんなことしちゃったのかな

社会や人の気持ちを考える経験にする

保護者の方が「万が一うちの子が巻き込まれたら…」と心配になることもあるかもしれません。そんなときは「若者の犯罪」「捕まった人の経験談」「ネットの犯罪」などを調べて、わかったことを子どもに伝えて一緒に考えてみてもいいですね。

早川先生コメント

「少し考えればわかるのに……」と思うような若者の犯罪が増えています。鍵になるのは想像力。小学生でも何が悪いのか、悪いことをするとどうなるかという知識を少しずつ蓄えていくことで、自分に置き換えたり先を想像したりできるようになります。

自分で考える子になってほしいから ニュースからの学びの広げ方

子どもへの投げかけ方がわかれば、どんなニュースも学びのきっかけに!

学びの広げ方1 言葉や場所を知る

子どもにとってニュースが難しく、関心が持てないのは、ニュースに登場する用語や地理がわからないことが大きな理由です。その場で理解できなくても、ニュースを見ながら出てきた言葉の意味を教えたり、画面の地図を指さして「この国は隣どうしなんだね」などと気づかせたりするだけで、ニュースを理解する力の土台がつくられていきます。

学びの広げ方2 歴史を調べる

「いつから?」「ずっとこうなの?」「前はどうだったの?」「前回は?」という視点は、どんなニュースでも使える問いかけです。できれば、その場でインターネットなどで調べてみましょう。「ふーん。こうなんだって」と発見をひとつ伝えるだけで、子どもも疑問から学びが広がっていくことを体感できます。

学びの広げ方3 親子で調べる

小学生は、調べ方そのものを学んでいく時期です。疑問や興味をもっても一人で調べるのは難しいので、保護者のかたがリードしてあげてください。親子のコミュニケーションが楽しい年齢でもあるので、一緒に図書館に行ったり、親の経験や記憶を話したり、会話も楽しめるといいですね。

早川先生コメント

調べ方を身に付けるうえで、図書館を利用する経験は大きなアドバンテージになります。司書さんに尋ねたり、いろいろな資料にふれたりする経験が学びのスキルを上げ、一人で学びを広げたり深めたりできるようになります。また、本(活字)には周辺情報が詰まっているので、偶然の気付きが生まれ視野が広くなりますよ。

解説がわかりやすい

 親子におすすめニュースサイト&新聞

■毎日小学生新聞
https://mainichi.jp/maisho/
■NHK NEWS WEB EASY
https://www3.nhk.or.jp/news/easy/

■ジュニアエラ(朝日新聞出版)

■朝日小学生新聞(朝日学生新聞社)

■読売KODOMO新聞(読売新聞社)

まとめ

たまたま見かけたニュースを話題にするだけでも、考える力の土台が積み上げられていきます。親子の時間や会話の多い小学生時代。「まだわからないから」と思わずに声をかけてみて!

【監修】
早川明夫先生

はやかわあきお●文教大学地域連携センター講師。森上教育研究所講師。大学での社会科の教員養成、中学・高校・大学の入試問題作成から入試問題の研究へ。『ジュニアエラ』(朝日新聞出版)の総監修ほか、『地図っておもしろい!』(国土社)などの監修・著書多数。

文/小谷野少名