今週の特集
子どもが勉強しない、そもそも勉強する気がない…とイライラしたり、心配したりしている保護者のかたは多いのではないでしょうか。それは、どうやらあなたのお子さまだけではないようです。この2年間で子どもたちの学習意欲が大幅に低下しているという、気になるデータがあります。
なぜ子どもたちは意欲を低下させているのか、そして保護者はどのように対応すればいいのか、ベネッセ教育総合研究所の木村治生さんに伺いました。
東京大学とベネッセ教育総合研究所が8年間にわたって行っている、2万組の親子の成長を追跡している大規模調査(子どもの生活と学びに関する親子調査)で、子どもたちの学習意欲に関するデータを見てみましょう。
小学生では約4割、中学や高校生では約6割が、「勉強しようという気持ちがわかない」と答えています。もともと、学年が上がると学習意欲は低下しがちで、特に小学校から中学校、中学校から高校、と学校段階が変わるタイミングで落ち込みが大きくなっています。
学習意欲がこの2年間で大幅に低下した原因は一概にいえませんが、学習意欲は授業の楽しさや日々の自由な体験などと関連があります。コロナ禍で楽しく学習できない環境が続くことは、子どもたちの学習意欲の低下に影響していると考えられます。
また、この間に学校内外でICT機器の活用が進みましたが、ICT機器の活用頻度と学習意欲のデータに明確な関連は見られませんでした。デジタル化が進んだから学習意欲が低下した、ということはなさそうです。しかし同時に、ICT機器を使ったからすぐに学習意欲が高まるわけではないともいえます。
とはいえICT機器は、コロナ禍においても学びの機会を広げたり、体験を補完したりするツールになり得ます。使い方によってプラスにもマイナスにも作用するものなので、どのような使い方がよいか、考え続けていく必要があるでしょう。
図1で示したように、平均値を見ると、子どもは学年が上がるにつれて学習意欲が下がる傾向があります。しかし、同じ子どもを追いかけて調査をしていると、なかには学習意欲が高まる子どももいます。そうした子どもを「意欲向上群」と名付けますが、調査では全体の11.2%が意欲向上群でした。
この「意欲向上群」の子どものデータからは、学習意欲を高めるうえで重要な要因を知ることができます。
2019年から2021年にかけて、「上手な勉強の仕方がわかるようになった」という質問に対して「いいえ」から「はい」に変わった(好転的反応)子どもでは、意欲向上群が平均の3倍も多く出現しています。「勉強の仕方」を理解することは、子どもの学習意欲を高める大きな要因といえるでしょう。
上手な勉強の仕方とは、たとえば目標や計画の立て方、学習習慣づくり、使う教材の選択、学習の振り返りなどです。これらを子ども自身が考えられるようにサポートすることは、保護者のかたにできる大切なことです。
学習意欲を高める要因として「(保護者が)勉強の面白さを教えてくれるようになった」「自分の進路(将来)について深く考えるようになった」グループでも、「勉強の仕方」に次いで、学習意欲が向上した子どもの出現率が高いことがわかりました。
勉強が自分にとってどのような意味があるのか、将来とどのようにつながっているのかを考えるために、保護者のかたができることは多いと思います。勉強することが、将来の幸せや活躍に役に立つというメッセージを伝えてください。
子どもの年齢的に、将来との関連を伝えることが難しい場合は、新しいことを知りたいというワクワク感や、できなかったことができるようになったドキドキ感を称賛し、一緒に楽しんでいただきたいと思います。そうした保護者の様子から、知識を広げることや能力を高めることに価値がある、ということが伝わります。
実のところ勉強は、時間や苦行をたくさん積み重ねれば成果が上がるというものでもありません。やり方や意味付けが大切なのです。「勉強しなさい!」と叱って、親子ともに不機嫌になるのではなく、時には落ち着いて、勉強の意味ややり方について子どもと話してみる、そんなところから始めてみてはいかがでしょうか。