今週の特集Special feature

2023年の教育はどう変わる? 重要トピックをまとめました。

現代の子どもの学び方・学びの場は選択肢が豊富。教育を取り巻く変化をキャッチしよう

現在、教育を取り巻く環境は目まぐるしく変化し続けています。2023年の教育情勢のトピックを把握し、まず保護者が現在の教育の変化や選択肢について把握していきましょう。

【取材】
小村 俊平
ベネッセ教育総合研究所
教育イノベーションセンター長

多様な学び方が広がっている

今までの小学校・中学校・高校は、すべての児童・生徒が同じ内容の教育を同じペースで受けるという考え方でしたが、今は少しずつ変えていこうという動きが起きています。児童・生徒が学校のシステムに適応するのではなく、学校のシステムが児童・生徒に近付いていこうとするものだと言えるかもしれません。

たとえば、いわゆる不登校の児童・生徒は年々増加していますが、文部科学省は、不登校は問題行動ではなく、不登校支援は学校復帰のみにとらわれることなく、社会的自立を目指すものであるべきとの通知を2016年に行いました。これは学校に行くこと自体ではなく、児童・生徒が自分に合った形でしっかり学べることが大切だと示すものだといえるでしょう。

さまざまな特色の学校ができている

全国的に見ても、教育に特色がある学校が増えています。首都圏では、2022年度の中学校受験者は5万人を超え、過去最多になりました。有名私立大学に内部進学できる付属校の人気が高まる一方で、英語やICT活用などで特色ある教育を行っている学校も人気を集めました。

これは中学受験といえば、御三家に代表される難関校がイメージされた親世代の頃とは大きく異なります。もちろん難関校の受験は依然として人気を集めていますが、学校の特色を把握し自分の子どもと相性のよい学校を選ぶ保護者が増えたことが近年の特徴といえるでしょう。塾に対しても、どの学校がどのような教育に力を入れているか、その学校が子どもにとって相性がよいのかという情報への期待が高まっています。

特色ある教育を行っているのは、私立校だけではありません。公立校でも、その地域の特徴を生かしながら特色ある教育が行われています。
たとえば、福島県の福島県立ふたば未来学園は、東日本大震災後の復興のモデル校として設立された学校ですが、新たな地域社会を創造するグローバル・リーダーの育成に取り組んでいます。また、埼玉県のさいたま市立大宮国際中等教育学校は、国際バカロレア(IB)という国際カリキュラムを導入し、探究的な学びに力を入れています。島根県の島根県立隠岐島前高校は、島根県内だけではなく、「島留学」として、日本全国・世界各国から生徒を募集しています。

通学が必須ではない学校も

通信制高校も人気を集めています。2016年に設立された角川ドワンゴ学園N高等学校は、ネットやバーチャルリアリティなどのテクノロジーを活用した特色ある教育で注目を集める学校です。N高等学校と新たに設立されたS高等学校をあわせて、在籍生徒数は2万人を超えます。デジタル分野をはじめとする在校生たちの活躍、さらには開講4年目で東大合格者が誕生したことによって人気を集め、従来の通信制高校のイメージを大きく塗り替えました。

なお、長引くコロナ禍の中で学校でのオンライン活用は急速に進みました。コロナ禍や自然災害の際にも学校教育を継続できるように、通学しての授業とオンラインの授業を柔軟に切り替える学校が現れました。地域によっては、通学しなくても、オンラインで授業を受ければ出席扱いとするケースもあります。

個々の事情で通学が困難になった場合でも子どもの状況に合わせて学び続けられるように、学校側も少しずつ変化してきています。まだ地域や学校によって違いはありますが、こうした動きが少しずつ拡大していくことが期待されます。

子どもが自分なりにやる意義を見いだし、工夫して没頭して取り組むことが重視されるように

今、日本の教育現場で静かに広がっているのが、「余白」づくりです。長らく学校の宿題は増加傾向にありましたが、最近は家庭で自由な時間をつくり、子どもたちがその時間をどう使うかを考える機会を持てるようにしようとする「自由宿題」という動きが全国で散見されます。

たとえば、大阪のある学校では宿題がメニューになっており、その中から子どもたちが選ぶ、またはサッカーやピアノなどの習いごとを宿題として報告できる形式を取り入れています。子どもたちが自分なりにやる意義を見いだして工夫し、没頭して取り組む力を身につける機会として家庭学習を活用しているのです。

なぜ、こうした動きが広がりつつあるのでしょうか。その背景には、これからの社会を担う子どもたちには、単に言われたことに黙々と取り組むだけではなく、子どもたちが自ら気付き、問題意識を持ち、未知の状況に対して工夫できるようになることが大切だからです。

メディアなどで「非認知能力(※)」という言葉を耳にされたかたもいらっしゃるかもしれません。認知能力と呼ばれるテストで測定できるような目に見える学力だけではなく、学びに向かう意欲ややり抜く力をいかに育むかが、学校にとっても大きな問題意識になっています。

※「非認知能力」とは
認知能力は、点数や偏差値、IQなど数字で目に見える能力ですが、非認知能力は、それとは逆に、自信や自己肯定感、柔軟性、自制心、共感力、想像力や主体性、回復力、やり抜く力など、豊かな人間力や、生きる力に直結する力のことをいいます。

日本の子どもの学力は世界でトップレベル。しかし大きな課題が……

日本の保護者のかたは、子どもの成績をもっと伸ばさなければ……と思いがちですが、日本の児童・生徒の基礎学力は国際的に見てトップクラスです。OECD(経済協力開発機構)が行う生徒の学習到達度調査(PISA)でも、日本の15歳の数学や理科の成績は先進国で1、2位を争うほどです。

一方、日本の児童・生徒にも課題はあります。それは理数系の能力が高いのにもかかわらず、数学や科学が好きな人が相対的に少ないことです。また、国際的にみて能力が高いにもかかわらず、大学進学時に理数系を選択する生徒は必ずしも多くありません。
これは日本にとって大きな課題であり、機会損失といえます。こうした問題を解決するために、日本は学習指導要領の改訂をはじめ、政策面でも工夫を重ねてきました。

ICTやテクノロジーにより差が広がる面も

テクノロジーの進歩は目覚ましいですが、これは勉強面にも大きな変化をもたらしています。たとえば、ネットの普及によって日本に住む高校生が海外の大学の授業を気軽に受講できるようになりました。国内でも都市部と地方部の生徒が交流することができます。教育において空間の壁は低くなり、情報のアクセスは誰にでも容易になったといえます。

しかし、情報のアクセスは容易になった一方で、その恩恵をより多く受けるのは、学ぶ意欲が高い人や、情報を使いこなす友人や家庭環境に恵まれた人です。

自分がやりたいことが明確な人は、自らどんどん情報にアクセスし、より多くを学びます。その結果、学ぶ人と学ばない人の差は今まで以上に広がります。単にテストの結果に表れる学力以上に、非認知能力が重要だといわれるのはこのような背景もあります。

また、保護者のICTやテクノロジーへのリテラシー・価値観も子どもの教育機会・環境に影響を及ぼします。今の子どもたちが生きる社会、教育環境は親世代のころとはまったく異なります。保護者がそのことを理解していれば、子どもの成長の機会や選択肢は大きく広がります。

しかし、親世代がそのことに気付かなければ、子どもたちは多様な選択肢があることに気付かず、自分が学びたいこと、自分に合った学び方を見つけることができないかもしれません。保護者が子どもの教育を考えるにあたっては、今まで以上に過去の自分の成功モデルを否定して捨てる、すなわちアンラーンすることが重要になっています。

まとめ

急激に変化する時代、正解がないといわれる時代では、やり遂げたら評価されることをがんばるだけでは壁に突き当たります。子どもたちにとって大切なのは、誰かに評価されるかどうかにかかわらず自分が没頭できる何かを見つけることであり、取り組んだことを周りの誰かに認めてもらう喜びを味わうことではないでしょうか。そうすれば、一つひとつの経験は決して無駄になることなく、必ず自分自身に蓄積します。その蓄積をどうデザインしていくか、どう活用していくかが、これからの時代に大切な主体性といえるでしょう。このような主体性を育んでいくためには、保護者は子どものことを先回りしすぎず、伴走し、考える姿勢が今まで以上に大切になると思います。

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【取材】
小村 俊平
ベネッセ教育総合研究所
教育イノベーションセンター長

国内外の教育動向、デジタルを活用した学び、探究・STEAM・SDGs等のカリキュラム開発や教員養成に詳しい。2017年より岡山大学 学長特別補佐(教育担当)としても、SDGsの観点からの大学改革、中高生への教育支援に従事している。

取材・文/本間勇気

次の特集は
2023年5月30日公開予定!

どうぞお楽しみに!