今週の特集Special feature

子どもがツラそうな時に話を聞くコツ

学校が始まってしばらく経ったけれど、何だか子どもがツラそう…。せめて何がしんどいのか話してくれたらいいのだけど、と心配な保護者の方に、教育心理学を研究し、スクールカウンセラーも行っている経験から、子どもの話を聞くコツをお伝えします。

PROFILE

松尾直博教授

東京学芸大学 教育学部
教育心理学講座

何だかツラそう……と
思った時、どうする?

ポイント01 子どものサインをキャッチする

学校に行きたくないと言ったり、目に見えて元気がなかったり、といったことは、おうちのかたも気付きやすいでしょう。それ以外に、食欲や睡眠の乱れも要注意です。例えば、食欲がない、異常に食べる、夜遅くまで起きている、朝起きられない、夕方など変な時間に寝てしまう、などが該当します。帰ってきてずっと横になっている、ということも、たびたびあるようなら体や心が疲れているのでしょう。
休み明けの子どもの様子は、しばらく気をつけて見ていってほしいと思います。

ポイント02 話を聞くタイミングに注意

子どもの話を聞くタイミングとしては、時間に追われない時がいいでしょう。夕食時、夕食後、寝る前など、一日の中で親子ともに少しゆっくりできる時間帯がおすすめです。朝は時間に追われがちですし、互いに不機嫌になりやすいので、避けた方がよいでしょう。
きょうだいがいる時や、両親そろっていると話しにくい、など、その子の性格によっても異なるので、うまくタイミングをみて話を聞いてみましょう。

ポイント03 聞くターンではとにかく「聞く」

子どもの話を聞く時は、とにかくさえぎらずにじっくり聞くことが重要です。子どもは、自分の心の状態や悩みについて、うまく話せません。聞いている方はもどかしくて「要するにこういうこと?」とつい言いたくなってしまいますが、口を挟みたい気持ちはぐっとこらえましょう。
話をたっぷり聞いてもらった後だと、大人の意見に対して、子どもも聞く耳を持ちやすくなります。

Column カウンセリングの手法を参考に 「傾聴」の心構えを
持とう!

プロのカウンセラーには人の話を「聴く」手法や技術がありますが、基本的には、親がそのような手法を使うことは、あまりおすすめしていません。親しい関係性の中でそういった手法を使うことが、必ずしも良いとは限らないからです。ただ、話の聞き方の心構えとしては、参考になることもあるでしょう。例えば、「傾聴」という手法でもあり心構えでもある方法は、カウンセラーが最も大切にしていることの1つです。

積極的に、関心をもって、相手の声、言葉、語りに耳を傾けることが傾聴、あるいは積極的傾聴と言われるものです。あなたの話をもっと聞きたいよ、あなたの話を聞くのは楽しいよ、ということを示しながら話を聞く。表情やうなずきで傾聴の姿勢を示し、子どもが安心して、気楽に話せるような雰囲気をつくることが大切です。促しの言葉や関心を示すための質問は有効ですが、なるべくこちらの発言は少なくして、子どもが話す量が多くなるようにすることがポイントです。

また、正面で向き合って話をすることが苦手な子どももいます。その場合は、90度の角度や横並びの角度の方が話をしやすいこともあります。家事をしていると子どもが寄ってきて話し始める、といったこともあるでしょう。その子が話しやすい場をつくってあげてほしいと思います。

子どもが
無口で話してくれない!
どうする?

話を引き出すコツ01 「モノ」語りをさせる

「モノ語り」と言われることもありますが、子どもがなかなか話してくれない時、その子の好きな「モノ」について話すことがあります。子どもも好きなものについてなら話しやすいですし、心を解きほぐすことにもつながります。
自分のことをほとんど話さない子どもが、カウンセリングの中で好きなアニメや映画の話をしたあと、急に家族や先生に自分のつらさについて話し始めたこともありました。好きな話題で盛り上がったことが、話し出すきっかけとなったのでしょう。

話を引き出すコツ01 日頃から「語る」ことに慣れさせる

そもそも日頃から、子どもが話すことに慣れていないと、急には話せません。普段から親子で対話する時間、関係性を持っておくことが大切です。口答えや愚痴も含めて、自分の考えを話して聞いてもらう経験を積むことで、話すことに慣れ、逆に人の話を聞く態度も育成されます。
親は子どもの意見を受容しつつ、提案や意見を伝えて構いませんが、中高生では自立心が高まっているので、本人が決めて前に進むのを後ろからサポートするくらいのスタンスがよいでしょう。

話を引き出すコツ01 周りの人の協力はケースバイケース

子どもが話してくれない場合、周りの人に聞くことも手ですが、変にうわさなどにならないよう、信頼できる相手を見極めることが重要です。
また、祖父母など周りの人から本人に聞いてもらうという手段もありますが、こちらもケースバイケースです。うまくいった例として、親とは話さないものの、親戚のお姉さんやお兄さんとスマホでやりとりしたことが、子どもにとって大きな心の支えとなったこともあります。

ただし、子どもの本当の気持ちが「お母さん(お父さん)ともっと話したい」ならば、他者の介入はピント外れになってしまうので、子どものニーズがどこにあるかは確認した方がよいでしょう。

PROFILE
松尾直博

東京学芸大学 教育学部 教育心理学講座教授
博士(心理学)。公認心理師。臨床心理士。学校心理士。特別支援教育士スーパーバイザー。専門は、臨床心理学や学校心理学。幼稚園、小中学校でのスクールカウンセラーの経験多数。主な著作に『絵でよくわかる こころのなぜ』(学研プラス・監修)、『ポジティブ心理学を生かした中学校学級経営 フラーリッシュ理論をベースにして』(明治図書出版・共著)、『コアカリキュラムで学ぶ教育心理学』(培風館・共著)などがある。

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次の特集は
2024年4月30日公開予定!

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