今週の特集Special feature

2学期のニガテの壁を乗り越える 自己肯定感を満たす 声のかけ方・接し方 中高生編

勉強が難しくなったり、行事が続くなかで友人関係がうまくいかなかったり…。
お子さまの悩みが増えやすい2学期。
こうした困難に負けない力の土台となる「自己肯定感」は、実はご家庭内で育てることができます。
自己肯定感をグングン伸ばし、保護者のかたも毎日笑顔になれる声のかけ方・接し方とは?

これまで4000人以上の子どもたちを直接指導してきた石田勝紀先生に聞きました。

【監修】
石田勝紀先生
教育評論家

シーン別 こんな時保護者はどうする!?

お子さまに何か伝えたいけれど、どう伝えればよいか迷う時の声かけ案をいくつかご紹介します。

Question! テストの結果が
悪いことを知った時は?

テストの結果については
何もふれない

お子さま自身、うまくいかなかったことがわかっているときは、追い打ちは避けたいところです。一緒にテスト結果を見ているなど、あえて何か言う状況であれば、「〇〇はできたね」など長所を見つけて伝えてあげてください。

Question! 定期テスト目前なのに
勉強をしないで
スマホをさわっている時は?

何も言わない

本人もやらないといけないことはわかっているので、ガミガミ言う必要はありません。勉強は、周囲に強制されるとやる気が失われやすいものです。さりげなく「いつスマホは終わる?」と尋ね、切り替えを促してもよいですが、あとの判断は子どもにゆだねましょう。声かけも、子どもに「責められている」と受け取られないように一度だけにとどめます。

Question! 朝起きてこない時は?

朝起こしたほうがいい?
それとも自分で起きる?

保護者のかたが起こすのか起こさないのか、起きなかったら何度でも起こすべきかどうかなど、前日に子どもと取り決めをします。約束した以上のことはせず、たとえ遅刻の可能性があっても声をかけず見守りましょう。

「自己肯定感 = どんな自分でも大切だ」と感じる心

子どもを認める言葉を
かけることから始めよう

声かけ例を見て「叱らなくていいの?」と驚いたかたもいるのではないでしょうか? ですが、もしもご自身が日々パートナーや上司にダメ出しをされていたら、自分の短所ばかりに目がいってしまうことが想像できると思います。

自己肯定感とは、「長所も短所も含めて、自分は価値のある人間だと感じる心」のこと。周囲からありのままの自分を認められ、「期待されている」「必要とされる」「頼りにされている」と思えることで満たされていきます。

自己肯定感が満たされると子どもがグンと成長する!

失敗を恐れず
難しい問題にもチャレンジ!

物事をポジティブにとらえ、ニガテがあってもめげません。成長意欲が出るので、どんなことにも前向きに取り組めるようになります。

自分の得意分野を
見つけて才能を開花

メンタルが強くなっていくと、トライ&エラーをくり返して自分の得意分野を見つける可能性が高くなっていきます。

周囲にやさしくできて
友達関係も良好に

自分の短所を認められるということは、他者に対しても寛容であるということ。協調性が育まれ、友達に恵まれます。

子どもの自己肯定感を伸ばす接し方

お子さまの自己肯定感を伸ばすために心がけたい接し方をご紹介します。1日1回ネガティブな言葉を使わない、というだけでも構いません。お子さまがどのように変化するか気にかけながら、少しずつ試してみてください。

接し方1 子どもが「やってみたい」と思える声かけをする

ネガティブな声かけの代わりに、お子さまが自発的に行動したくなるような関わり方がおすすめです。いくつかテクニックがあるのでご紹介します。

「ちょっと先」の
情報を伝える

朝起こす時は「朝ごはんができているよ」、学校の準備が遅い時は「もうすぐ友達が迎えに来るよ」、中高生のお子さまで就寝時間が遅いときは「明日は6時に起きるんだっけ?」など、生活習慣を促す場合に効果的です。できるだけお子さまにとって気持ちのよい見通しを伝えましょう。

できていないことは
責めずにそのまま「認める」

ニガテがあったりテストの結果に落ち込んでいたりした場合は、責めずに「そっか、難しかったんだね」と事実を受け止めるだけでOK。「まちがっているところを直せば次はできるようになるから、失敗はお得なんだよ」と伝えると、お子さまの心が上向きになることもあります。

また、なかなか勉強に取りかからない時は、プレッシャーをかけるよりもスケジュールや勉強する場所の見直しを提案してみるのも手です。「家でのんびりしたいなら 、自習室に行くのはどう?」などと声をかけ、お子さまの意向を確認してみましょう。

子どもに選んでもらう

ゲームやスマホをやめるタイミングは「いつ終わる?」と尋ねてお子さまに決めさせます。もしも家でルールを決めているのに守らない場合は、「あなたらしくないね」とひと言だけピシャリと言いましょう。

「らしくない」は「本来のあなたの姿はわかっているよ」という受容の意味合いがあります。自分らしい振る舞いを子どもに考えさせる言葉で、ガミガミ叱るよりも心に響きます。

接し方2 ポジティブな言葉をたくさんかける

ポジティブな声かけをすると、子どもは自分のプラス面に目が向きおのずとマイナスな気持ちが消えていきます。お子さまの行動を認めたい時は、「いいね」「さすがだね」「すごいね」といったフレーズで軽く明るく伝えましょう。たとえるならSNSの「いいね」ボタンを押すテンションが近いと思います。

お子さまにかけたい言葉

すごいね さすがだね いいね

ほめている気持ちをさりげなく伝えられる言葉なので、ささいなことにも使えます。何か係を任された時、部活をがんばっている時早起きした時、友達と仲良く遊んでいる時などに言ってあげましょう。

勉強には失敗やまちがいがつきもので、うっかりするとお子さまに対してネガティブな言葉を言ってしまいがちです。勉強以外の場面でたっぷり使ってください。

ありがとう うれしい 助かった

感謝の言葉を伝えることで、お子さまは「誰かの役に立った」と感じ、自分が必要な人間であることを認めていきます。あえて頼みごとをして、お礼を言うシチュエーションをつくるのも方法です。

大丈夫

不安や恐怖、あせりといったネガティブな感情を鎮めてくれるマジックワード。大人でも「大丈夫」と言われると心が軽くなりませんか。

私は子どもが「こんな難しい問題できないよ」と言ったら、「大丈夫、大丈夫」と軽い感じで何度も言います。楽観的な言い方をすると、子どもも「できるかも?」といい意味で勘違いし、取り組むようになります。

うまくいかなかったり何かに失敗したりした時も「大丈夫」と伝えることで、チャレンジ精神や楽観的な視点を与えることができます。

子どもの自己肯定感を伸ばす接し方

叱ったぶん、笑顔で接する

子どもにダメ出しをしてしまうことはどうしてもあります。そんな時は、次から笑顔でポジティブな言葉をたくさん使えばOKです。叱ったぶん、お子さまのいいところを見つけて認めれば、お子さまの自己肯定感は再び満たされていきます。

保護者のかたの心を癒やす

お子さまを寛容に受け止めるには、保護者のかた自身の心の余裕が大切です。「人・場所・本・食べ物・音楽・香り」は特に効果があります。イラっとしたら好きなものにふれるだけでも心がほっとするので、ぜひ試してみてくださいね。

まとめ

私は勉強会などで、お子さまの自己肯定感を満たすためには、保護者のかたが毎日をハッピーに過ごすことが大切だと、よくお話ししています。不安な時はお子さまの短所が見えやすくなるし、反対に気持ちが上がっていれば、よいところにたくさん気付くものです。

「いいね」「さすがだね」「すごいね」といったポジティブな言葉はご自身にも有効です。思いついた時に、「今日の自分はいいね、さすが!」とご自身の自己肯定感を高める声かけを試してみてください。遠回りに思えるかもしれませんが、保護者のかたの心の持ちようでお子さまの自己肯定感は変わってきます。

【監修】
石田勝紀先生
教育評論家

20歳で学習塾を創業し、4000人以上を直接指導する傍ら、講演会やセミナーを含め5万人以上の子を教えてきた。「日本から勉強嫌いな子をひとり残らずなくしたい」という信念のもと、全国各地で勉強会を開催。講演、執筆活動も精力的に行う。主な著書に『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』(集英社)、『勉強しない子には「1冊の手帳」を与えよう!』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)他、全25冊。毎日音声配信「Voicy」でMama Caféラジオを放送し、ママたちの人気チャンネルとなっている。

文/中沢夕美恵