今週の特集
環境が変わるときは誰でも少しは「今年こそ、できる自分になりたい」と理想を描くもの。
今度こそ計画的に、早め早めにやるべきことに取り組んで、わからなかったところは見直しして、テスト前には勉強して・・・。でも2週間もたってみれば、「あれ?やろうと思っていたのに、思ったよりできていない。」そんな現状に気づいてしまうお子さまや保護者のかたも多いのではないでしょうか。
ここで軌道修正できるか、あきらめて投げやりになるかでこの後の1年間は大きく変わります。何を見直すといいのか、目標達成のためのコミュニケーションの専門家である“コーチ”であり、教育系ライターであり、3人の子どもの保護者でもある中原絵里子さんに話を聞きました。
まず、新学期は多かれ少なかれ環境が変わるタイミング。クラスメイトの顔ぶれや担任、時間割が変わったり、ささいな変化に見えても「うまく適応しなければ」と神経を使っているはずです。「今年こそ!」と張り切る気持ちとうらはらに、やろうと決めたことがなかなか実行できないのも、ある意味仕方がないこと。うまくできない自分にガッカリしてしまうのではなく、「そういうもの」という前提で、少しずつ慣れてきたタイミングを見計らって見直していくといいですね。見直したいポイントは次の3つです。
「うまくいく」とは
どういう状態かを
明確にする
人はめざす姿があいまいな状態だと行動を起こせません。「うまくいくはずだったのに」と思うのであれば、それはどんな状態のことなのかを一緒に具体的にしていくことから始めてはどうでしょうか。
たとえば、「これだけはやると自分に約束したことは、何があってもやる」「忘れ物はしない」などの行動目標でもいいですし、中学生以上のかたは「定期テストの順位で学年2割以内に入る」「数学の小テストは90点以上」などの数値目標でもOKです。具体的な目標を決めれば、その達成のために必要な行動も明確になります。
見直すべき点は
「コントロールできる
範囲内」
では見直すといって、何を見直して調整すればいいのかという時に意識したいのが「コントロールできるかどうか」です。「やる気を出す」や「勉強をがんばる」などの「状態」を見直そうとすると、どこまで達成できていて何が足りないのかなどは見えにくいためコントロールしにくいですよね。
一方「行動」であれば、コントロールすることができます。たとえば、
- ・何を(TODOリストの内容を見直す)
- ・いつ(タイミングを見直す)
- ・どこで(環境を見直す)
- ・どの程度(量を見直す)
など、どこを調整すれば目標に向けた行動を実行できるかを明らかにしていくといいですね。
また、できるだけ行動を生活のルーティンに組み込むようにすると、継続しやすくなります。「ごはんの時間・お風呂の時間・寝る時間の3点を固定する」という話を耳にしたことがあると思います。毎日の生活習慣の時間を固定して「~の後に勉強する」と決めると、その時間に勉強していないことに違和感を抱くようになっていき、習慣化しやすくなります。
欲張らずにまず1つやってみるのもオススメです。「やろう」と「できた」の間には大きな溝があり、大人でもこの溝にはよくハマりますよね(笑)
この溝を飛び越えるには、小さな成功体験を重ねることが有効です。「英単語を10個覚える」など、やろうと決めてそれができたら、すかさずほめる。自分で自分をほめることも効果的ですが、保護者の方やきょうだいなど、そばで見ていてくれる人が「決めたことを継続できていて、すごいね」などほめてくれれば、やる気を持続しやすいはずです。
ジャマするものを
なるべく取り除く
目標に向けて「やろう」と「やれた」の間には溝があるとお伝えしましたが、この溝を飛び越えようとするのをジャマする存在があれば、そのうちに飛び越えようとさえしなくなってしまうかも。お子さまと一緒に「何がジャマになるか」を話し合ってみるといいですね。
たとえば、ゲームやマンガ、音楽、友達とのSNSのやり取り、動画の閲覧など、勉強しようという気持ちをジャマして時間を使いたくなるものを特定したら、その時間を半分にする、2割減らすなど、少しでも減らすことを意識してみるよう促してあげてください。全部取り上げてしまうと“管理されている感”から反発する場合もあります。お子さまが自分で付き合い方を決められるといいですね。
また、行動できていない理由として、意外と「やり方がわからない」ということもあります。「テスト勉強をする」「復習する」「苦手対策をする」といっても、何を使ってどんなことに取り組めばいいのかイメージができていなければ、動きようがありません。お子さまに「どんなことに取り組む予定?」と聞いてみて、ピンと来ていないようであれば、たとえば「テスト勉強に使える教材として手元に何があるか見直してみては?」などアドバイスをしたり、友達や先生に聞いてみるよう促すなど、まずやり方を確認するという行動から始めるといいでしょう。
「上手な勉強のしかたがわからない」という学習法の悩みを抱える子どもは年々増えているというデータもあります。一方で、学習方法がわかれば学習意欲も上がったり、学習時間が増えるなどの傾向があるそうです。そうすると必然的に成績も上がっていきます。まず見直すべきなのは「勉強の仕方」とも言えそうですね。
- ※数値は「とてもあてはまる」と「まああてはまる」の合計(%)。2015年調査ではたずねていない。
- ※「小4-高3生全体」の数値は、小4-6生:中学生:高校生が1:1:1になるように重みづけを行った。
(東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査2022」より)
勉強方法に正解はなく、お子さまが自分に合ったやり方を見つけることが大切です。
長く教育分野に携わってきた経験から、難関高校や難関大学に合格するお子さまは「自分のやり方を持っている」という共通点があると感じています。どうすれば理解しやすいのか、どういうやり方が覚えやすいのか試行錯誤しながら見つけていき、テストなどで成果が出るか確認したうえで「自分はこれでやる」と決めたらブレずに続けていく、というプロセスを経ているかたが多いのです。
この春、お子さまが「自分に合った勉強法」を見つけるためのトライアンドエラーを始められるように、保護者のかたもサポートしてあげるのはいかがでしょうか。