教育用語解説|スクール・ポリシー 教育用語解説|スクール・ポリシー

2023.3.17

スクール・ミッション、スクール・ポリシーとは?高校選びの新たなポイント

高校への進学率は、ほぼ100%という状況です。だからこそ、高校にはよりよい教育活動を行い、より魅力的であってほしいと願います。そうした願いが実現するように、学校教育法施行規則改正により「スクール・ミッション」を前提として、「スクール・ポリシー」の策定と公表を高校は求められるようになりました。今回は、このスクール・ミッションとスクール・ポリシーの概要や、子どもや保護者にどのような関係があるのかを説明します。

スクール・ミッションとは「高校に期待される社会的な役割」のこと

スクール・ミッションとは、簡単に言うと「目指す学校のありかた」のことです。各学校の存在意義や、各学校が期待されている社会的役割、目指すべき学校像を示したもので、学校の設置者(公立高校の場合は都道府県など)が定めます。その際は、在籍する生徒の状況や意向、期待に加え、学校の歴史や伝統、現在の社会や地域の実情をふまえて、また、20年後・30年後の社会像・地域像を見すえて、各学校や自治体などの関係者と連携して作成します。*1 これまでも学校を運営するための計画を策定するなかで、「目指す学校像」として示してきたものや、私立高校の場合は「建学の精神」などがスクール・ミッションにあたりますが、それらを再検討し、改めて定義し直すことが求められています。

*1:中央教育審議会 新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ「審議のまとめ」を参考に作成

スクール・ポリシーとは「高校の教育活動の指針」のこと

「スクール・ポリシー」とは、簡単に言うと「その学校の教育活動の基本方針」のことです。各学校がそれぞれのスクール・ミッションをふまえて定めるもので、
①卒業の認定に関する方針(グラデュエーション・ポリシー)
②教育課程の編成及び実施に関する方針(カリキュラム・ポリシー)
③入学者の受入れに関する方針(アドミッション・ポリシー)
の3つの方針を定めます。スクール・ポリシーを明確に示すことで、育成すべき資質・能力が具体的に分かり、学校全体の教育活動が一貫して体系的になることでよりよいものになっていくことを目指しています。また、単に示すだけではなく、3つの方針がバラバラではなく整合性を持ち、かつ、内容を伴うものにすること、とされています。

スクール・ポリシーの策定・公表が義務化された背景は、高校普通科改革と多様化する社会への対応

スクール・ポリシーの策定と公表が義務付けられた背景には、科学技術の進歩やグローバル化、少子高齢化の深刻化など、人々を取り巻く環境の大きな変化と、生徒の興味や関心、意欲の多様化があります。そうした中で、かつては良しとされていた、すべての生徒に一律の内容を教えるという高校の指導スタイルでは、それらに対応はできませんし、将来を生きるために必要な力を身に付けられないでしょう。また、高校生の学校生活への満足度や学習意欲は諸外国と比べても低い傾向も見られます。そこでここ数年、学習指導要領改訂の動きとも連携しながら、高校教育を抜本的に見直し、各高校が特色・魅力ある教育を行い、生徒一人ひとりが主体的に学びに取り組むことを支援していく動きの一部として、スクール・ポリシーの策定・公表が義務付けられたのです。

身に付けさせる資質・能力を考え、それに適した教育課程を決めていく

スクール・ミッションとスクール・ポリシーを検討する際は、まず、自分たちの学校が生徒にどのような力(資質・能力)をつけさせるのかを考え、次に、それらをどのようにして生徒に身に着けさせるのか(教育課程)を検討します。「こういう力を育てたいから、このようなカリキュラムにする」という順番で決めていくイメージです。ごく一部を除き、多くの高校にとっては自校の特色をいま一度考えてカリキュラムに落とし込み、それらを内外の生徒や保護者、地域にアピールするよい機会と言えます。しかし、例えば、大学との連携を強化したくても周囲に大学がないなど、資源や機会が限られている地方部では特色化や差別化が難しいという課題も指摘されています。

まとめ
高校選びの基準と選択肢が変わる可能性

課題はあるものの、今後は新学習指導要領の全面実施と連動しながら、各高校が目指す生徒像の明確化と遂行責任が、より厳密に求められていくでしょう。生徒や保護者にとっては、偏差値だけではなく、各学校が打ち出すスクール・ポリシーを見て、子どもに合った教育活動や教育課程を実施している学校を能動的に選ぶことが可能となります。その学校のスクール・ポリシーを端的に表しているものの一つが教育課程表です。学校説明会やウェブサイトなどで丁寧に見比べてみましょう。各学校の特色や身に着けさせたい力の違いが見えてくるはずです。また、「○○高校は××だから」といった先入観にとらわれずに、最新の情報を幅広く集めることも大切です。スクール・ミッションとスクール・ポリシーを参考にして、子どもの特性や将来の希望に合った高校を選びたいものです。

取材・執筆:神田有希子

※掲載されている内容は2023年3月時点の情報です。

監修者

監修スペシャリスト

馬渕 直まぶち すなお


㈱ベネッセコーポレーションカスタマーサクセス推進部 副部長

1993年入社。高校、小・中学校など文教領域の事業に従事。前VIEW21(現next)編集部統括責任者。2018~19年度に内閣府 総合科学技術・イノベーション会議事務局に出向。2022年8月より現職。

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