2017/05/31
[特別編:4] 公立高校の教師が語る、生徒の実態や課題を踏まえた授業改革(座談会2 後編) [5/5]
~勉強会(特別編1~4)を終えて~ 編集後記
2回にわたる勉強会で、公私立5校の高校の先生方から、アクティブ・ラーニング(以下、AL)の視点を活用した授業改善の取り組みについてお話をうかがってきた。
第6回学習指導基本調査の結果では、特に高校において、グループ学習への心がけが大きく伸びている。しかし、先生方の実感としては、まずは話し合い活動というような「型」から導入されがちであることや、知識と同時にスキルを育むためには授業の時間が足りないと感じていることも指摘された。大学入試に向けた生徒からの講義型授業へのニーズや、ALの評価のあり方を含めて、先生方自身もまさに模索中であると言えるだろう。
一方で、「主体的・対話的で深い学び」の実現のためには、単に話し合い活動を増やせばよいということではなく、学びの基盤となる知識の習得はもちろん、「どんな発言をしても安心」という学級づくりの視点も欠かせない。その上で、先生が学習活動の目的を明確にして生徒に繰り返しその意味を伝えることが重要だと指摘がなされた。これまで受験や試験というハードルを"1人"で乗り越えてきた生徒に、先生が粘り強く「他者との対話によって学びが深まる」という価値を伝えていく必要があるのだ。
しかし、学級づくりや教材や発問の研究に加えて評価……と、ただでさえ多忙な先生が1人で授業改善に取り組むには限界がある。そこで、同時に教科、学年、学校全体の取り組みへと広げていく組織的な動きも必要となるだろう。「カリキュラムマネジメント」というと何から始めたらよいのか難しく感じてしまうかもしれないが、まずは「こんな生徒に育てたい」「生徒にこんな力を付けたい」という願いを先生方で共有し、そのための学習活動を議論することから始めてみるとよいだろう。
勉強会に参加された先生方からは、ALの視点を生かした取り組みを行うことによって、先生の指導観や生徒の学習観が少しずつ変化していることが共有された。例えば、一斉授業中心だった先生がALを取り入れることによって「生徒が楽しそうだった」と気付く、生徒自身が「話し合いがあると授業の内容が記憶に残る」と実感するといったようなことだ。
当然、これまでの一斉授業がすべて話し合い活動になる、これからの社会には知識は不要でスキルがあれば大丈夫などという、単純な話ではない。先生方がその「バランス」をいかに取るかを試行錯誤し、答えが1つではないALの指導に真摯に取り組まれている姿に深い感銘を受けた。
カリキュラム研究開発室 研究員 杉田美穂
—— 本勉強会や「アクティブ・ラーニングを活用した指導と評価研究」で得られた知見を基に、6月には「生徒主体の学びのデザイン」をウェブサイト上でも提案していく予定です。ぜひご期待ください。
※ベネッセ教育総合研究所では、これから求められる資質・能力とその指導・評価に関する研究を行っています。【アクティブ・ラーニングを活用した指導と評価研究】