2017/05/31
[特別編:4] 公立高校の教師が語る、生徒の実態や課題を踏まえた授業改革(座談会2 後編) [2/5]
2. 英語における実践
答えが1つではない問いに協調学習で取り組み、思考力と英語力を高める
埼玉県立熊谷高校
英語科 山田 翔一郎先生の実践
「協調学習ジグソー法」を通して、他者とかかわりながら知識を深める
埼玉県立熊谷高校の山田翔一郎先生は、東京大学 大学発教育支援コンソーシアム推進機構(CoREF)の研究開発員であり、「知識構成型ジグソー法を用いた協調学習」を始め、アクティブ・ラーニングの視点を取り入れた授業づくりをしている。山田先生は、アクティブ・ラーニングの定義を、「生徒が持てる知識を最大限に活用し、他とかかわることでその知識を深めながら自分なりの解を見いだすことができる学び」と表現する。
ジグソー法を用いた協調学習は、1つの課題について生徒一人ひとりが違った考えや情報を持ち、それらを出し合うことでよりよい答えを見いだしていくという学習活動だ。山田先生は、与えられた課題に仲間と取り組んで解決策を発表する「課題解決型」、並びに議題について仲間と議論し、他グループと意見を交換する「議論型」の2タイプの授業を行っている。
課題解決型の授業では、「旅行代理店の社員になったつもりで、お客様のご要望に適した行き先を提案しよう」「富士山のゴミ問題を解決しよう」といったテーマを設定し、山田先生が教科書を基に作成した教材に沿って、生徒同士の話し合いを中心にして活動を進めていく。
一方、議論型の授業では、教科書から発展した内容として「ある偉人の話を読み、その人のどんな部分を自分の人生に役立てていきたいか」「人間がロボット化の時代を生き抜くために必要な能力は何か。なぜ必要か」といったテーマについて英語で話し合う。
「課題解決型、議論型のいずれも、協調学習が深まりやすくなるように、生徒の実態に応じた教材を作成しています。そのため、学期に2回ほどの実施となります」
日常的な協調学習に、ペア・ワークやグループ・ワークを活用
より日常的に取り入れやすい協調学習として、ペア・ワークやグループ・ワークの研究にも取り組んでいる。例えば「どのようにして持続可能な社会を形成すればよいか」「1日2ドルの収入しかなかったら、どのように生活していくか」といった正解のない問いを設定し、グループで議論し英語で発表するような活動だ。
「単元の内容に沿って、多様な答えが考えられる問いを出しますが、問いは生徒がそれまでの既習事項や経験を組み合わせれば、彼らなりの解を出せるものにしています。そして、最終的に単元全体の深い理解につながるようにしています」
評価の対象とするのは、取り組みにおける姿勢、発表内容、成果物(主にライティング)の3つだ。ライティングは、授業の事前と事後で同じ課題に取り組み、一人ひとりの変化を追う。事前と事後では、友人との議論の中で新たな考えを構築したり、教材の内容を用いて自分の意見を強化したりといった変化が見られるという。
話し合いや議論の後に考えが深まっているライティングの例
一方で、すべての活動を話し合いだけで進めるのでは力はつかず、英語は言語習得という点で、訓練的な指導とのバランスも大切だと感じている。山田先生は、一斉で単語練習をして正しい発音を教え込んだ上で、生徒同士がペア・ワークなどを通して互いに伝えたいことが伝わっているかの確認やミスを指摘し合えるような関係をつくっていきたいと考えている。これからも授業全体を思考的・創造的な学習に変えていけるよう、授業改善に取り組んでいく。