2019年6月6日、スウェーデン・ナッカ市の先生6名が、ベネッセ初台オフィスに来社しました。視察の目的は日本の算数・数学の教育について学ぶというもので、学校外の教育や教材開発についての知見を学ぶため、弊社が訪問先のひとつとして選ばれました。

スウェーデンのプログラミング教育

スウェーデンは、国、県、コミューンという単位があり、小中学校にあたる基礎学校はコミューン(日本の市町村に相当する基礎自治体)が管轄しています。ナショナルカリキュラムはあるものの、自治体の裁量も大きいようです。ナショナルカリキュラムでは、2018年の改訂で生徒のデジタル・コンピテンスがより重点化されました。プログラミングは、各教科の中で扱うものとされています。特に数学や技術の中で実施されることが多いようです。実例を紹介してもらう中で、9年生(日本の中学3年生に相当)の男子生徒が、センサー感知するロボットを制御するプログラムを書き、学校の廊下で動かしている動画も見せてもらいました。この生徒は、先生方が弊社で発表をするのにあわせて、動画をメールで送ってくれたそうです。

 

残念ながら時間が足りず、数学の教科の中でプログラミングがどのような役割を果たしているのかという議論までには至りませんでした。

校務支援システム導入の是非

学校におけるデジタル化の事例として、個人の生徒の評価を校務支援システムに入力するという話がありました。各授業での一人一人の生徒の様子や評価を、教員が記録するそうです。クラスサイズは20人程度とはいえ、教員は定期的に個別評価をシステム入力しなければならず、事務仕事が増えていることを憂いていました。保護者がその記録を見ることができるとはいえ、何人の保護者が確認しているのか疑問だという意見も出ました。記録のための記録になってしまっては、教員が疲弊するばかりですので、日本が校務支援システムを導入する場合には、その長短を考えて是非を議論した方がよさそうです。

かけ算の意味理解

日本の算数におけるプログラミングの事例として、ベネッセの指導案サイト「プロアンズ」の「かけ算の文章問題名人をめざして」を紹介しました。かけられる数(A)とかける数(B)の意味をふまえてかけ算の立式をしてほしい、という思いは全員の先生が同意見でした。国境を越えても、数学の先生が大切にする点は同じであることが確認できて、意気投合できたことが嬉しかったです。

 

ベネッセの教材ロボットについて

最後に、ベネッセの小学生向けの教材も紹介しました。付録のロボットで、英会話や母国語で会話できる機能に驚いていました。

 

最後に

今回の会議を通じて、日本と同様、スウェーデンでも情報活用能力(デジタル・コンピテンス)の育成を重点化していることが確認できました。言葉が多少通じなくても、ロボットを制御する活動の目的や、かけ算をスクラッチで学ぶ教材のアイデアを、動画や具体物を通して理解し合えたことの意義は大きかったと思います。日本の子どもたちに届ける教材を開発するにあたり、スウェーデンの取り組みも参考にさせていただけるよう、このご縁を大切にしたいと思います。