小学校プログラミング教育の手引(第二版)」が2018年11月6日に公開になりました。今回は2018年3月に公開された「小学校プログラミング教育の手引(第一版)」との違いを解説します。

第一版が公開されてから約半年余りと早いタイミングでの改定と思われた方も多いかもしれません。改定の背景として、文部科学省は、第一版を踏まえた教育委員会や学校での実践事例が増え、さらに手引に説明を充実させたり、指導例を追加したりすることが必要になったことを挙げています。

今回の改定のポイントとして挙げられているのは以下の2点です。

(1)C分類のプログラミング教育としてのねらいを明確化するとともに、C分類の取組例を提示
(2)A分類(総合的な学習の時間)、B分類及びC分類の指導例の追加等

出典:「小学校プログラミング教育の手引」(文部科学省)

第一版では、プログラミング教育は各教科等で実施することが前提となっていましたが、第二版ではA分類、B分類のプログラミング教育は引き続き各教科等で実施しつつ、C分類のプログラミング教育は各教科等とは別に実施することが示されました。またC分類のプログラミング教育の詳しいねらいや、指導例が追加されました。以下で具体的にみていきたいと思います。

(1)C分類のプログラミング教育としてのねらいを明確化するとともに、C分類の取組例を提示

C分類のプログラミング教育の定義が明確になった

第一版では小学校段階のプログラミングに関する学習活動の分類においてC分類を、
「各学校の裁量により実施するもの(A、B及びD以外で、教育課程内で実施するもの)」
と定義していました。この定義は第二版では、
「教育課程内で各教科等とは別に実施するもの」
と表現が変更になりました。つまり、教育課程内で実施するもの、という点は変わりませんが、教科等の内容の中で実施するAやBに加えて、教科等とは別に、例えば教科に関係のない内容でもC分類として実施してもかまわない、というトーンに変わったのです。

C分類のプログラミング教育のねらいとは?

文部科学省はプログラミング教育のねらいとして、以下の3点を挙げています。
①「プログラミング的思考」を育むこと
②プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータ等の情報技術によって支えられていることなどに気付くことができるようにするとともに、コンピュータ等を上手に活用して身近な問題を解決したり、よりよい社会を築いたりしようとする態度を育むこと
③各教科等の内容を指導する中で実施する場合には、各教科等での学びをより確実なものとすること

出典:「小学校プログラミング教育の手引」(文部科学省)

このねらいは第二版でも変わりませんが、第二版からは、C分類としてプログラミング教育を行う場合には上記の①、②をねらいとすること、A分類とB分類のように各教科等でプログラミング教育を行う場合は、これに加えて③をねらいとすること、のように学習活動の分類ごとにねらいを使い分けても良いことが新たに追加されました。

さらにこのようなねらいをおさえたうえで、C分類の学習活動については児童の負担過重とならない範囲で、以下のような活動を創意工夫して取り組むことができることが示されています。

1)プログラミングの楽しさや面白さ、達成感などを味わえる題材を設定する
2)各教科等におけるプログラミングに関する学習活動の実施に先立って、プログラミング言語やプログラミングの技能の基礎について学習する
3)各教科等の学習と関連させた具体的な課題を設定する

出典:「小学校プログラミング教育の手引」(文部科学省)

では、どのような指導例が示されているのでしょうか。

(2)A分類(総合的な学習の時間)、B分類及びC分類の指導例の追加等

第二版では、A分類(総合的な学習の時間)、B分類及びC分類の指導例が追加されました。

A分類(総合的な学習の時間)の指導例

まずA分類(総合的な学習の時間)の指導例は、第一版では一件でしたが、第二版では三件に増えました。指導例の内容は「情報化の進展と生活や社会の変化」「街の魅力と情報技術」「情報技術を生かした生産や人の手によるものづくり」などで、いずれも探究課題としての学習です。指導例の追加により、「プログラミングを体験することが,探究的な学習の過程に適切に位置付くようにすること」という総合的な学習の時間におけるプログラミングの位置づけがより明確になりました。

手引で紹介された指導例は未来の学びコンソーシアムによる「小学校を中心としたプログラミング教育ポータル」で確認することができます。実施事例の詳細や指導に使われたツールなども確認できますのでぜひアクセスしてみてください。以下に今回追加された二件を紹介します。
※クリックすると「小学校を中心としたプログラミング教育ポータル」へリンクします。

画像の出典:小学校を中心としたプログラミング教育ポータルPowered by 未来の学びコンソーシアム

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B分類の指導例

次にB分類の指導例は、第一版では二件でしたが、第二版では四件に増えました。B分類は、学習指導要領には例示されていませんが、各教科等での学びをより確実なものとするための学習活動としてプログラミングに取り組むものです。

今回追加されたのは、第4学年(社会)の「都道府県の特徴を組み合わせて47都道府県を見付けるプログラムの活用を通して、その名称と位置を学習する場面」、そして第6学年(家庭科)の「自動炊飯器に組み込まれているプログラムを考える活動を通して、炊飯について学習する場面」の二件です。

手引で紹介された指導例は未来の学びコンソーシアムによる「小学校を中心としたプログラミング教育ポータル」で確認することができます。実施事例の詳細や指導に使われたツールなども確認できますのでぜひアクセスしてみてください。以下に今回追加された二件を紹介します。
※クリックすると「小学校を中心としたプログラミング教育ポータル」へリンクします。

画像の出典:小学校を中心としたプログラミング教育ポータルPowered by 未来の学びコンソーシアム

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C分類の指導例

C分類の指導例は第一版の三件から、第二版では四件に増えました。追加された内容はC分類の学習活動として新たに示された、「1)プログラミングの楽しさや面白さ、達成感などを味わえる題材を設定する」に関わるものでした。プログラミングの体験を通してプログラミングの楽しさや面白さ、物事を成し遂げたという達成感を味わうような活動も、C分類として教育課程内で各教科等とは別に学校の裁量で行うことができることが示されました。

最後に

プログラミング教育の実施事例については、未来の学びコンソーシアムによる「小学校を中心としたプログラミング教育ポータル」や、ベネッセの「プロアンズ」等のウェブサイトに掲載されています。ぜひこのような実施事例を参考に、取り組みをしてみてはいかがでしょうか。ベネッセコーポレーションでは、「小学校プログラミング教育の手引(第二版)」の方針に基づき、学校教育におけるプログラミング教育の取り組みを引き続き支援していきます。