第2回「あなたは朝型?夜型? 体内時計のタイプにあわせて、生活を!」
あなた、またはあなたのお子さまは朝型ですか?夜型ですか?子ども、または保護者の体内時計の性質を知ることで、普段の生活習慣で気をつけるポイントが見えてきます。ここでは、睡眠習慣の簡単なチェックプログラムを紹介します。学校での成績が良い子どもは、早寝早起きが得意です。一方で朝が弱い夜型の子どもはどうすれば良いのでしょうか?
成績が良い子どもは休日も早起き
早稲田大学 理工学術院 柴田重信研究室とベネッセ教育総合研究所が2021年に共同で行った「子どもの生活リズムと健康・学習習慣に関する調査2021」によると、高校生の成績が上位の子どもは、下位の子どもに比べて、学校が休みの日に平均18分早く寝て、30分早く起きていることが分かりました(図1)。
図1 小学校高学年から高校生の学業成績と睡眠時刻の関係
成績は、自己申告で学校における各主要教科の成績を5段階に評価してもらい、合計値を学業成績とし、上、中、下の3区分に分割した。『子どもの生活リズムと健康・学習習慣に関する調査2021』より
一方で平日もその傾向は見られましたが、休日ほどの差ではありませんでした。休日はどの生徒も夜ふかし、朝寝坊になりがちですが、勉強ができる子どもは早起きが得意なのかもしれません。実は早起きは、得意な子どもと不得意な子どもがおり、これは遺伝子によって生まれながらに決まっています。今日はこの生活リズムの個人差について紹介したいと思います。
朝の寝起きはクロノタイプで決まる〜朝型、夜型チェック〜
朝が弱い子どもは体内時計のタイプが夜型な可能性があります。保護者の皆さんやお子さまの普段の睡眠を簡単にチェックし、体内時計のタイプ(クロノタイプと呼ぶ)や、普段の睡眠不足度などをチェックしてみましょう。子どもの睡眠習慣の乱れは、保護者の生活スタイルが原因であることもよくあります。ぜひ、一緒にチェックしてください。
下記の表から平日、休日の普段寝る時間、起きる時間を選択することで診断ができます。
睡眠習慣チェック
時間と分を入力して自分のタイプをチェックしてみよう
あなたの年齢
平日
起床時刻
就寝時刻
休日
起床時刻
就寝時刻
結 果
あなたのクロノタイプはxxです
1週間当たり、
xx時間の睡眠が不足しています
hogehoge
平日と休日の睡眠が
xx時間ずれています
hogehoge
睡眠習慣チェック
時間と分を入力して自分のタイプをチェックしてみよう
お子さまの学年
平日
起床時刻
就寝時刻
休日
起床時刻
就寝時刻
結 果
あなたのクロノタイプはxxです
1週間当たり、
xx時間の睡眠が不足しています
hogehoge
平日と休日の睡眠が
xx時間ずれています
hogehoge
※睡眠習慣チェックは医学的な診断ではありませんので、参考としてご活用ください。
夜型は、週末に生活リズムが遅れやすいので注意
結果はいかがでしたか? 体内時計のタイプは朝型、中間型、夜型の3つに分かれます。特に休日の睡眠習慣からタイプを判定します。休日に早寝・早起きなら朝型、遅寝・遅起きなら夜型です。ただ、生活習慣は年齢によっても変化し、大学生でもっとも夜型化しますが、その後社会人になり、結婚したり子どもが生まれることを機に、生活習慣が朝型化する人が多いです。さらに高齢になると早寝・早起きが顕著になることは、おじいちゃん・おばあちゃんを見ていると感じると思います。今回の診断では、各年代に合った睡眠習慣の分布から、皆さんのタイプを判定しています。大体ですが、4人に1人は朝型または夜型に分類されます。
さて、これまでの話から察しているかもしれませんが、注意が必要なのは夜型の人です。夜型の人は、平日に無理に早起きしていることが多く、休日に夜ふかし、朝寝坊しがちです。よって、こちら(第一回のリンク)でお話した通り、平日と休日で生活リズムのズレが生じやすいタイプになります。むしろ休日の就寝・起床時刻が本人のもっとも健康的な生活スタイルであるのに、学校や仕事の影響で平日に早起きを強いられているのが実際なのです。
規則正しい生活をこころがけることが大事
ではどうするべきか。実は、朝型と夜型の子どもで学校の成績を比較しても、大きな差はありませんでした。一方で、普段なるべく同じ時刻に就寝・起床している子どもは、そうでない子どもに比べて成績が良い結果でした(図2)。
図2 小学校高学年から高校生の学業成績と生活の規則正しさの関係
「普段、同じ時刻に寝て、起きますか?」という質問に対し、「あてはまる」、または「まあまああてはまる」と回答した人を合計した割合。『子どもの生活リズムと健康・学習習慣に関する調査2021』より
よって、夜型という生まれ持って得た性格、個性が問題なのではなく、普段なるべく規則正しく生活しているかが大事なのです。
究極の提案は、平日に早起きしないことで、休日の夜型生活に合わせて一週間ずっと規則正しい生活を送ることです。しかし、仕事がフレックス制やテレワークだとしたら可能かもしれませんが、教育現場では難しい話です。実は海外では、学校の開始時刻を30分から1時間程度遅らせる取り組みにより、生徒の睡眠やQOL改善に功を奏したという報告が多数あります。しかし、日本の学校はそこまで始業時刻が早いわけでなく、遅らせることによる授業時間の短縮など、デメリットの方が大きい可能性があります。よって、週末に夜ふかし、朝寝坊しないことが結局大事ということになります。また、休日は睡眠時間が長くなりやすく寝溜め傾向になることが多いです。これは平日に睡眠時間が足りていないことが一因です。よって、平日も少しでも早く寝る習慣を心がけると良いでしょう。
朝型は午前中に、夜型は夕方以降に集中力が高い
朝型の人に、一日の中で一番集中力やパフォーマンスが高い時間帯を尋ねると、午前中と回答する人が多いです(図3)。
図3 朝型、夜型で異なる注意力、作業記憶などのパフォーマンスの日内変化
注意力・反応スピード、または作業記憶について、朝8時、昼14時、夜20時に、朝型、夜型それぞれで調べた結果。朝型は朝8時にピークが、夜型は夜20時にピークが来ていることが分かる。(Facer-Childs et al., Sports Medicine – Open, 2018 より改変)
逆に夜型の人は、夕方から夜に集中力やパフォーマンスが高まると答える傾向にあります。よって、体内時計のタイプによって、勉強や仕事のベストタイミングも異なるのです。ちなみに私は朝型で、午前中にとても仕事がはかどり、夕方から夜はあまり仕事が進みません。なので午前中により頭を使う仕事を行い、午後はなるべく機械的にあまり頭を使わずに作業が進むような仕事を入れるようにしています。このように、自身の体内時計を意識した生活プランを立てることが大事です。これは勉強だけではなく、スポーツの世界でも同じです。朝型は昼過ぎから夕方に、夜型は夜に集中力や筋力などが高まります。よって、体内時計のタイプを知り、ベストなタイミングで試合を行うことで、普段よりも良い成績を収めることができる可能性があります。
自分の体内時計のタイプを知ることで、より効率的な生活スタイルを作り出してみてはいかがでしょうか?次回は、「食事」をテーマに生活習慣、学習習慣を考えてみたいと思います。お楽しみに。