第3回「食べる”タイミング”を意識して成績アップ?」

親にとっても子どもにとっても、毎朝のルーティンにおける朝ごはんはとても大事なイベントです。朝ごはんは生活リズムを調節すると共に、午前中のパフォーマンスを上げます。実際に、成績が上位の子どもは、朝食欠食率が低いです。また、放課後の塾通いなどの前に、軽い間食を摂ることで、肥満や体内時計の夜型化を防ぐことができます。このような食べるタイミングを考える研究を時間栄養学と呼びます。この機会に、食習慣を見直してみてはいかがでしょうか?

第3回「食べる”タイミング”を意識して成績アップ?」

この記事のポイント

朝ごはんを食べない子どもは成績が低い

普段、あなたは朝ごはんを食べていますか?そして、子どもにも毎日朝ごはんを食べる習慣をつけていますか?文部科学省が推進する「早寝早起き朝ごはん」国民運動が浸透し、子どもの朝食摂取率は年々上昇してきました。大学でも無料や低料金で朝食を提供されたりしています。早稲田大学 理工学術院 柴田重信研究室とベネッセ教育総合研究所で2021年度に共同実施した調査によると、小学生4~6年生で1.8%、中学生で2.8%、高校生で4.8%の子どもが朝食を全く食べないと回答していました。

では、どうして朝ごはんを食べる必要があるのでしょうか?まず、朝食の摂取と成績には関連がみられます。図1に示す通り、「毎日朝食を食べる」と答えた子供の割合は、成績上位層で多く、下位層で少ない結果です。この傾向は数十年前から変わっておらず、たまたま見られた差ではありません。成績と朝食の摂取が関連する要因はいくつかあります。まず、朝食を食べることで午前中から身体に栄養が周り、交感神経が優位になり、脳が活発に働きます。また、朝食は体内時計を調節することで、生活リズムを朝型に変化させる効果があります。

学業成績別 毎日朝食を食べている子どもの割合の関係 図1 学業成績と朝食摂取頻度の関連
成績は、国語、算数・数学、理科、社会、英語(中高生のみ)の各教科の自己評価を合計し、下位層、中位層、上位層がそれぞれ三分の一になるようにグループ化した。グラフは、各成績グループにおいて、「毎日朝食を食べる」と答えた子どもの割合を示す。『生活リズムと健康・学習習慣に関する調査 2021』より

私たちの調査結果では、成績だけではなく、朝食を食べない子どもは、気分が落ち込みやすい、いらいらするといった心理面にも悪い影響がでていることが分かりました。保護者の方と近い年代である20〜30代は、朝食欠食者が20%を超えていることも分かっており(平成29年度国民健康・栄養調査より)、保護者が朝食を食べていないことも考えられます。もしご自身が朝食を食べる習慣がないのであれば、まずは保護者の方から朝食を食べる習慣をつけることも大事かもしれません。

朝型生活を維持するための最適な朝ごはん

私たちの体内時計は24時間よりも少し長く、毎日調整する必要があります。朝ごはんや朝の光は体内時計を早める効果を持つため、日々の体内時計調節に欠かせないものです。私は、体内時計と食事/栄養の研究(時間栄養学といいます)を主に行っています。私たちの研究から、ベストな朝食についてのヒントを一つ提供したいと思います(図2)。

炭⽔化物・タンパク質・DHA/EPAは体内時計を調節。タンパク質は筋⾁の維持 図2 理想の朝ごはん

まず、朝食で体内時計を調節するために、炭水化物、タンパク質、そして魚の脂に含まれるDHA/EPAを摂りましょう。炭水化物とDHA/EPAはインスリンという血糖値を調節するホルモンを介して、タンパク質はIGF-1というホルモンを介して、それぞれ私たちの体内時計を調節してくれます。ツナマヨおにぎりや、ツナサンドイッチはおすすめです。また、朝にタンパク質を多く摂ると、それは筋肉の維持に効果的です。牛乳、ヨーグルトなどの乳製品や、ソーセージやハム、卵焼きなど、タンパク質を多く含む食品を1品でも多く摂るといいでしょう。普段の朝食にもう1品タンパク質をプラスしてみてはいかがでしょうか。

夜型の人も朝食を

前回のお話では(第2回「あなたは朝型?夜型? 体内時計のタイプにあわせて、生活を!」)、体内時計の個性(朝型、夜型といったクロノタイプ)についてお伝えしました。夜型の人はなかなか社会の時間に合わせづらいこと、夜型の人は夜型に合った生活をすべきだと提案しました。では、夜型の人も朝ごはんを食べるべきでしょうか?答えはイエスです。ここでいう朝食とは、朝起きて1〜2時間以内に食べる食事を指します。朝遅く起きる夜型の人にとっても、起きた時刻から2時間以内に摂る食事が朝食です。夜型の人は、体内時計がより遅れやすく、朝食を抜くともっと遅寝・遅起きになってしまいます。

成績が上位の子どもは、バランスの良い食事を摂っている

早稲田大学 理工学術院 柴田重信研究室とベネッセ教育総合研究所で2021年度に共同実施した調査によると、図3に示すようにバランスの良い食事、野菜が多い食事を多く摂っていると答えた子どもの割合が、成績上位のグループに多いことが分かりました。また、食事中の噛む回数が多いことと、成績が上位であることにも関連がみられました。この因果関係はまだ分からないため慎重に検討が必要ですが、「バランスの良い食事」といった一般的な食育を家庭内で行うことの大切さを示しているとも考えられます。

学業成績別 「バランス良く食べている」の回答割合 学業成績別 「野菜をよく食べている」の回答割合 学業成績別 「食事中噛む回数が少ない」の回答割合 図3学業成績と朝食摂取頻度の関連
グラフは、各成績グループにおいて、各項目の内容に「とてもあてはまる」または「あてはまる」と答えた子どもの割合を示す。『生活リズムと健康・学習習慣に関する調査 2021』より

放課後、塾に行く前は間食を食べましょう

遅い時間に夕食を摂ることは、体内時計の遅れを招き、夜型化を助長します。また、夜は血糖値が上がりやすく、遅い夕食や夜食をたくさん摂ることは肥満の原因にもなります。一方で、学校が終わったあとに塾に行き、遅くまで勉強をしたあと、家に帰り、やっと夕食を食べる子どもも少なくありません。コロナ禍の感染対策として、塾でのお弁当時間を禁止しているところもあるようです。

学校でお昼ごはんを食べたあとに、何も食べずに夜遅くまで過ごすことはNGです。なぜなら、夜食による体内時計の夜型化は、お腹の空き具合に依存します。また、お腹が空いている時に一気に食べてしまうと、血糖値もその後急激に上昇してしまい、肥満の原因になります。そこでオススメは、放課後におにぎり1個でも良いので間食を摂ることです。間食を摂ることで、夜遅い夕食による夜型化、体重増加の影響を抑えることができます。さらにダイエット効果を期待するのであれば、間食に食物繊維の多いものを食べると効果的です。また、1日同じ量を食べるにしても、朝食多め、夕食少なめにすることで、ダイエット効果が得られることも研究から分かっています。

夕方以降のエナジードリンクに要注意

中学、高校生になると、期末試験の前日に徹夜で勉強することもあると思います。その際、眠気覚ましにとエナジードリンクやコーヒーを飲む人も多いと思います。これらの飲料に含まれるカフェインは、体内時計を調節する効果があり、特に夕方以降のカフェイン摂取は体内時計の夜型化を促します。つまり、カフェインを飲んだあとにすぐ目が覚める効果とは別に、その夜、眠りづらくなり、さらに次の日の目覚めや寝付きも悪くなってしまうのです。よって、普段の生活においても、夕方以降はカフェインを摂らないことをオススメします。

次回は、スマホやテレビゲーム、パソコンの活用時間と成績との関連についてお話したいと思います。

プロフィール

田原 優
早稲田大学 理工学術院 准教授

1985年生まれ。2013年、早稲田大学卒業、博士(理学)。常に、人への応用を意識しながら、体内時計の基礎研究を行っている。特に、食べるタイミングを研究する時間栄養学や、睡眠、運動のタイミングを研究する時間健康科学に従事。著書に『Q&Aですらすらわかる体内時計健康法』『体を整えるすごい時間割』などがある。https://www.yutahara.com/

この記事はいかがでしたか?

おすすめトピックス