第1回「睡眠時間が短い子どもの方が、成績が良い?〜睡眠習慣と成績の深い関係〜」
早稲田大学 理工学術院 柴田重信研究室とベネッセ教育総合研究所による「子どもの生活リズムと健康・学習習慣に関する調査2021」によると、平日の睡眠時間は、学年が上がるにつれ急速に減少していることがわかりました。また、学業成績が上位の子どもは、下位の子どもに比べて睡眠時間が短い傾向でした。睡眠時間の短い子どもは、精神的な不安を抱いている人が多いこともわかりました。では、普段の睡眠習慣をどう気をつけていくべきなのでしょうか?ここでは簡単に親子の睡眠習慣をチェックして、普段の睡眠を見直すきっかけを作ってみましょう。
高校生になると半数が深夜0時以降に就寝
小学生、中学生、高校生と年齢が上がるごとに、段々寝る時間が遅くなり、朝もしっかりと起きられない、親が朝なんとか叩き起こして学校に行かせる・・・なんてよくある話だと思います。早稲田大学 理工学術院 柴田重信研究室とベネッセ教育総合研究所で2021年度に共同実施した調査の結果をご覧ください。
図1『子どもの生活リズムと健康・学習習慣に関する調査2021』より
小学校高学年(4年~6年)では、平日に8時間23分も寝ていたのに、中学、高校と上がるにつれ、7時間29分、6時間40分と減っていることが分かります。また、平日深夜0時以降に就寝する子どもの割合は、小学生高学年で3.6%、中学生で22.0%、高校生で52.4%でした。一方で休日は傾向が異なり、高校生でも平均して8時間以上寝ていました。つまり、平日は無理をして睡眠を削っている可能性があり、休日に少し寝溜めしているわけです。OECD(経済協力開発機構)が発表した世界各国の睡眠時間では(Gender Date Portal, 2019)、日本が世界で最も睡眠時間が短く、15~65歳の睡眠時間平均は7時間22分でした。この値は平日と休日を平均したものですが、高校生の睡眠データはまさに1週間平均で7時間程度(7時間9分)であり、睡眠時間の短い国民性が高校生のうちから習慣になっていることがわかります。
睡眠時間が短い子どもの方が、成績が良い!?睡眠不足は成績向上の妨げに
では、睡眠不足は学業成績にどう影響するのでしょうか?調査では、自己申告で学校における各主要教科の成績を5段階で回答してもらい、合計値を学業成績とし、上、中、下の3区分に分けました。
図2『子どもの生活リズムと健康・学習習慣に関する調査2021』より
上の図は、それぞれの成績区分における平日、休日の平均睡眠時間を示しています。平日は成績と睡眠時間にほぼ差がないことが分かります。一方で休日は、中学生、高校生で、成績上位の子どもほど睡眠時間が短いことが分かりました。つまり、寝る間も惜しんで勉強しなさい、ということかもしれません・・・。しかし、睡眠は記憶の定着に重要であり、不十分な睡眠はパフォーマンスの低下に繋がります。過度な睡眠不足は成績の向上には繋がらないと考えられます。
睡眠不足な子どもは、気分が落ち込みやすい
睡眠不足は成績だけではなく、精神衛生にも影響を与えていました。睡眠時間が長い子どもと短い子どもを比較した結果、睡眠時間が短い子どもの方が疲れやすい、いらいらする、気分が落ち込む、と答えた割合が高い結果でした。また、昼間の眠気を訴える子どもも多いという結果でした。よって、普段の睡眠が平均より短い、または精神的に不安定なお子さまは、日々の睡眠時間の見直しが必要かもしれません。一方で必要な睡眠時間は人によって異なります。何時間寝るべきか、睡眠・体内時計の専門家でもベストな答えは持ち合わせておらず、なかなか一概に何時間と決まっているものではありません。一つの考え方ですが、休日により長く寝ている子どもは、つまり平日に睡眠が足りていない可能性があります。よって、睡眠時間を平日も休日も同じくらい取ることは一つの目安になると思います。
親子の睡眠チェックをやってみよう
下記で、睡眠習慣をチェックしてみてください。お子さまだけでなく、保護者もあわせて睡眠習慣をチェックできます。学校や仕事のある日(平日)、または休みの日(休日)の、普段起きる時刻、寝る時刻を選択してもらう簡単な調査です。子どもの睡眠習慣の乱れは、保護者の生活スタイルが原因であることもよくあります。
ぜひ、一緒にチェックしてください。このチェックでは、睡眠が普段から足りているのか、さらには平日と休日の、生活リズムのズレの有無についても結果が出ます。また、朝型、夜型といった体内時計の個性(クロノタイプと呼びます)もチェック結果として表示されます。クロノタイプについては、次の回で詳しく紹介したいと思います。
睡眠習慣チェック
時間と分を入力して自分のタイプをチェックしてみよう
あなたの年齢
平日
起床時刻
就寝時刻
休日
起床時刻
就寝時刻
結 果
あなたのクロノタイプはxxです
1週間当たり、
xx時間の睡眠が不足しています
hogehoge
平日と休日の睡眠が
xx時間ずれています
hogehoge
睡眠習慣チェック
時間と分を入力して自分のタイプをチェックしてみよう
お子さまの学年
平日
起床時刻
就寝時刻
休日
起床時刻
就寝時刻
結 果
あなたのクロノタイプはxxです
1週間当たり、
xx時間の睡眠が不足しています
hogehoge
平日と休日の睡眠が
xx時間ずれています
hogehoge
※睡眠習慣チェックは医学的な診断ではありませんので、参考としてご活用ください。
週末の生活リズムの乱れが生む社会的時差ボケに要注意
週末は夜ふかししがちであり、朝も学校がないから遅くまでベッドから出てこない人が多いと思います。実は小学生からそういう習慣がついてしまっている子どもがいます。また、高校生になるとその割合が増えていきます。まず、平日の睡眠不足を、休日の寝溜めで解消することは困難です。さらに、休日に遅寝、遅起きになることで、図3に示すような生活リズムのズレが生じます。これを、週末時差ボケとか社会的時差ボケと呼びます。つまり、週末に1,2時間の時差がある海外旅行に出かけ、時差ボケを経験しているのと同じ現象です。
図3
上述の共同実施した調査では、学業成績が下位の子どもは、上位の子どもに比べて、この週末の時差ボケが大きい結果でした(図4)。また、週末の時差が1時間以上ある子どもは、小学生高学年では19.3%、中学生では37.0%、高校生では50.0%でした。
図4『子どもの生活リズムと健康・学習習慣に関する調査2021』より
つまり、高校生の2人に1人は、毎週末1時間の時差ボケを経験しているのです。また、ズレが1時間以上ある子どもは、気分が落ち込みやすく、いらいらしやすいことも分かりました。よって、学業成績を維持、改善するためには、まずは週末の生活リズムについて改善してみるといいかもしれません。つまり、週末に夜ふかしせず、平日と同じ時刻になるべく寝起きする習慣をつけることが大事です。