2018年10月30日、明星学苑・明星小学校にて、1年生の「3つの数のたし算、ひき算」でプログラミングを使った授業を行いました。
今年度、明星小学校とベネッセコーポレーションは、算数の授業にプログラミングを導入すれば、これまでの授業で解決できなかった子どもの課題を解決できるのではないかという研究目的のもと、共同研究を進めています。今回はその第一弾として、1年生の授業を実施しました。
こたえが10になるような、たし算とひき算の組み合わせを考える
この授業で、児童は、スタートから3つの数をたどりながら、答えが10になるようにゴールするパズルに取り組みました。作りたい答えの10を分解して演算子と数値に分けて組み合わせることや、その組み合わせや順番が正しかったかどうか振り返る活動は、それぞれ、プログラミングで育成する資質・能力の評価規準(試行版)で提示される、低学年に求められる資質能力のうち、大きな動きはいくつかの小さな動きに分けられることに気付くこと、手順がよかったかどうかを考えること、に当てはまる活動です。
児童はスクラッチで簡単なプログラミングをして、試行錯誤しながら、いろいろな問題を作ることができます。同校はアイパッド利用なので、Scratch 3(ベータ版)を使いました。
ちなみに画面の左上にいるのがチョコ丸です。この教材をガイドする役割のキャラクターで、明星小学校で育てているモルモットをモデルにしました。
問題を作る活動
上の図は、答えが10になる式を7-5+8とした場合のプログラミングの画面です。
児童は、スタートから「下、下、右、右」というゴールまでの経路と、「7-5+8」のたし算とひき算の組み合わせを、スクラッチのブロックを使ってプログラミングします。
念頭で経路とたし算・ひき算の組み合わせをいろいろ考えるので、ひとつのパズルでたくさんの問題を解いているのと同じ状態になります。よく見直して完成したと思ったら、「たしかめる」ボタンを押します。
すると、7,5,8が意図した通りの経路に表示されます。
たし算とひき算の指定も正しいので、チョコ丸が「10になるもんだいをつくれたね!」と言ってくれます。
もしここで経路が間違っていたり、答えが10になっていなかったりすると、チョコ丸がもう一度プログラミングしたところを見直すようにコメントするので、児童は、プログラミングしたブロックの並べ方や数値を見直して修正することができます。「チョコ丸が言ってくれるので、まちがってもわかるのがよかった」という児童の事後感想がありました。よく考えて、たしかめて、見直す、という一連の活動が、チョコ丸のコメントをたよりに、児童自ら、この場面で実現できるのです。
のこりの4つの空欄の数字は、コンピュータがランダムに配置します。ランダムに選ばれる数字によっては、正解が2つ以上になるドキドキ感も創出されます。これで問題作りの活動は終了です。作った問題を友達に解いてもらうために、アイパッドを机上に置いたまま、席替えします。
席替えが終わって、答える準備ができたら、「こたえるじゅんびができたよ」のボタンを押して、問題を解く活動に移ります。
問題を解く活動
問題を解くときには、経路と演算子を考えます。例えば、上のようにプログラミングします。
これで、大丈夫だと思ったら、「こたえあわせ」ボタンを押します。
チョコ丸が、正解かどうかを判定してくれます。もし間違っていれば、プログラミングのブロックの並べ方や数値を見直して修正して、また「こたえあわせ」することができます。「計算をつくって、1回たしかめて、こたえあわせするのがおもしろい」と発言した児童がいました。ふだん、ノートでは間違った答えを消しゴムで消してから、書き直すという活動をしていますが、プログラミングのブロックを操作するだけなので、手の遅い児童でも簡単に見直しと修正ができるのです。
授業後に事後感想を求めたところ、楽しかった、おもしろかった、のようなありきたりな感想が出てくるのではないかという予想に反して、「プログラミングで動かせることがわかった」「むずかしいのがかんたんになってきた」「べんきょうがもっと好きになった」など、活動を客観的に振り返る感想が出ました。
この教材と指導案は、からお知らせいただければ幸いです。改善のために参考にさせていただきたいと思います。
なお、授業者の平井哲先生が、この授業について、2018年12月刊行の「算数授業研究 Vol.120」(東洋館出版社)に寄稿しています。