2019年3月12日、明星学苑・明星小学校にて、3年生の算数で、スクラッチを使った授業を行いました。
この授業は、明星学苑・明星小学校とベネッセコーポレーションとの2018年度共同研究の枠組みで実施しました。従来の算数の授業に、プログラミング的思考を導入すれば、より理解が深まる学習内容があるのではないかという仮説のもと、今回は、重さの単位の仕組みを、既習の長さやかさの単位と統合的に理解することを目的とした授業を行いました。
新学習指導要領第3学年のC(1)長さ、重さの単位と測定で育む「イ 思考力、判断力、表現力等」に関連する学習活動では、身の回りのものの特徴に着目し、単位の関係を統合的に考察することが学習目標となっています。第3学年までに学習した長さ(mm,cm,m,km),かさ(mL,dL,L),重さ(g,kg,t)の単位について整理してまとめた表などから、それぞれに共通する関係を調べることが学習内容になっていますが、表でまとめたことを、実際にどのような式で単位変換されるのか、スクラッチ教材で「へんかんレート」という用語に数値をあてはめる活動を通じて、理解をさらに深めるように授業設計しました。
スクラッチ教材の構成
この教材の単位は重さ、長さ、かさ、時間の4種類あり、それぞれについて問題1~4があります。(図1)は、重さの問題1の例です。問題1は、mgをgとmgに変換する問題です。kgをkgとgに変換する問題なども含まれます。
重さ ( )mg=( )g( )mg
長さ ( )cm=( )cm( )mm
かさ ( )mL=( )dL( )mL
時間 ( )秒=( )分( )秒
というように、へんかんレートが1つあれば、単位変換できる問題群です。上の4つの事例の場合、それぞれのへんかんレートは、重さ1000、長さ10、かさ100、時間60などとなります。
プログラミングの結果エリアの左上の単位の部分をクリックすると、(図2)のように、長さ、かさ、時間と単位と問題が変わります。しかし、それぞれの仕組みは同じなので、問題1のプログラムは変わりません。単位に応じて、へんかんレートを変更するだけです。
重さの問題1で、「問題を出す」というボタンを押すと、ランダムに問題が表示されます。一人一台のパソコンやタブレットで取り組んでいる場合、隣席の人と同じ問題が出るとは限りません。この段階で、児童はプリントに答えを書きます。次に、へんかんレートを正しくプログラミングしてから、「プログラミング完了」ボタンを押し、よく見直した後、「たしかめる」ボタンを押すと、正しい答えが表示されます。
(図4)は、113772㎎を11g 3772㎎とプリントで答えた児童が、プログラミング後に、113g772㎎と青鉛筆で修正した事例です。誤答の原因として、へんかんレート1000はわかっていたけれど、正しく答えが出せなかった場合もあれば、へんかんレートを10000と思っていた場合も考えられます。重さの問題1が苦手だと思えば、「問題を出す」ボタンを押せば、何度でも問題を解くことができます。
子どもの感想
45分の授業では、大半の児童は、重さと長さまでしか進みませんでしたが、授業後に、次のような児童の感想がありました。
・すべて同じ方ほうでもとめられることが、びっくりした。へんかんレートが何なのかわかった。
・重さでも、かさでも、時間でも、へんかんレートがあることがわかった。
・単位がちがっても、やり方が同じだということがわかりました。
・とってもむずかしかったけど、理由が分かって、問題をとけたときは、おもわず「すっきりー」といいそうになりました。(図5)
授業者の丸山農先生も、久しぶりに子どもが頭を使って苦悩している姿があったが、最後には「すっきり」した児童もいたし、関係性を見つけたときの喜び、習ったことを他にも適用できることの有用性に気づいている児童もいた、と述べていました。複数の単位の仕組みを統合的に理解するという本授業の目的が達成できたといえます。
なお、問題2は、g、mgをgに変換する問題、問題3、4はへんかんレートを2つ指定する問題群となっています。
この教材と指導案は、からお知らせいただければ幸いです。改善のために参考にさせていただきたいと思います。