えっ? プログラミングと妖怪!?

意外な組み合わせに少し驚きながらも手に取ってみると、中身は非常にまじめで、プログラミングの概念を丁寧に教えてくれる本でした。
小学生の雄太と佐奈がシステム界を冒険しながら妖怪たちと出会い、プログラムの考え方を学んでいきます。
変数妖怪“かず”、“もじ”、“ふらぐ”の3姉妹や、条件分岐妖怪“いふん”、繰り返し妖怪“ほわいる”と“ふぉお”兄弟の「調子がおかしいところ(バグ)」を特定して、ワクチンで治してあげることで少しずつシステム界が正常化していきます。
RPGゲームのように会話主体で物語が進んでゆくのは子どもたちにとってわかりやすく、小学校の中学年ぐらいからならひとりでどんどん読み進めることができそうです。

冒険ストーリーだけではない実装コーナー

本書は、各章が2つに分かれています。
ひとつは前述の冒険ストーリー仕立てのプログラミングの考え方を大まかに理解するコーナー、そしてもうひとつは実際にパソコンでプログラムを動かしてみる実装コーナーです。

実装コーナーでは、本書独自に用意されたアプリケーションをパソコンにダウンロードして動かしながら読み進めます。
変数、変数の型、条件分岐、繰り返しと言ったプログラムの基本的な文法の理解を深めることを目的としていて、JavaScriptをベースとした簡易的な独自言語を記述して学びます。

Ruby、Javaなど広く使われているプログラミング言語そのものではありませんが、今後歩を進めてそれらの言語を学ぶ際に文法をスムーズに理解できるよう工夫されています。

実装の解説では、フローチャートの書き方や、キーボードでの「(」や 「{」の括弧の入力方法を丁寧に示しながら専用アプリケーションの画面上での文字入力を促してくれます。
本を見ながら入力する文字量ができるだけ少なく抑えられている点や、入力ミスによるエラーがストーリーに出てくる博士からのメッセージとして表示され、物語の登場人物になったような楽しい気持ちで試行錯誤できる点が、キーボードでアルファベットや記号を入力することに慣れていない子ども達を励ます仕掛けになっています。

子ども達の吸収力を信じて、テキストプログラミングへの挑戦を応援する

子ども向けのプログラミングというと、ブロックを並べるビジュアルプログラミングの書籍や教材が多い中、本書はアルファベットや記号をキーボードで入力させるテキストプログラミングを解説し、専用アプリケーションで教材を提供しています。
通常、テキストプログラミングはある程度の英語や記号の知識や、キーボードへの慣れが必要とされ、「子どもには難しい」と敬遠されがちです。

本書はそれを妖怪と冒険ストーリーという子どもにとってなじみやすい設定で興味を引きつけ、入力方法やエラー画面の丁寧な演出と解説や、索引にプログラムに出てくる英単語や記号の読み方までカタカナで掲載するなどきめ細かく読者のつまずきを防止する工夫がこらされています。
子ども達の吸収力を信じ、挑戦を応援する筆者の姿勢が本書のあとがきで語られています。
この本をそのまま現在の小学校の授業の中でのプログラミング活動に用いるのは少々難しそうですが、プログラミングに興味関心が高い子どものクラブ活動や家庭学習で心強い味方になりそうです。

出版社 リックテレコム
著者 宮嵜 淳
発売日 2016/8/5
ISBN 4865940073
価格 2,052円 (税込)
仕様 B5判 168ページ

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