百人一首の覚え方
015
君がため 春の野に出でて 若菜つむ
我が衣手に 雪はふりつつ
(光孝天皇)
上の句|きみがため はるののにいでて わかなつむ
下の句|わがころもでに ゆきはふりつつ
2023/11/29
※イラストはイメージです
現代語訳
あなたのために、春の野原に出て若菜を摘んでいる私の着物の袖に、雪が降りかかっていますよ。
解説
光孝天皇が即位する前、親王だったころ、親しい相手に若菜を贈ったときに添えた歌。若菜は、相手の健康や長寿を祈って贈る草と言われています。袖に雪が降りかかりながらも、大切な相手の健康を祈って一生懸命摘んでいる様子とその時の気持ちが伝わってくるようです。
若菜の緑と雪の白の色の対比も美しく目に浮かんできます。
出典
古今和歌集語句解説
若菜
春先の野に生えるセリやナズナなどの野草の呼び名。食用の野草で、春の七草のもととなったものです。
衣手
着物の袖
雪は降りつつ
「つつ」は繰り返しや続いていることを表す接続助詞。「降りつつ」で「降り続ける」という意味になります。
作者紹介
光孝天皇(こうこうてんのう)(830年ー887年)
第58代天皇。55歳で即位するが、在位3年あまりで崩御。和歌や和琴の名手としても知られています。
作者に関する逸話
容姿も人柄も優れていた光孝天皇は『源氏物語』の光源氏のモデルではないかとの説もあるようです。
55歳のとき、藤原基経の強い推薦で即位しましたが、権力争いなどに興味がなく、実際の政治はほぼ基経に任せていたと言われています。
決まり字
- 上の句
- 君がため 春の野に出でて 若菜つむ
- 下の句
- 我が衣手に 雪はふりつつ
「きみがため は」が決まり字の六字決まりです。
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語呂合わせ
きみがためはる わがころも
卵の黄身をかためたものを、自分の衣にはっている人を思い浮かべると覚えやすいです。
卵の黄身をかためたものを、自分の衣にはっている人を思い浮かべると覚えやすいです。
イラストレーター
沼田光太郎 ぬまた こうたろう
監修者
谷 知子たに ともこ
1959年、徳島県生まれ。大阪大学国文学科卒業、東京大学大学院博士課程単位取得。博士(文学・東京大学)。フェリス女学院大学教授。専攻は中世和歌。
著書に『百人一首(全)』(ビギナーズ・クラシックス日本の古典 角川文庫 KADOKAWA)『古典のすすめ』『和歌文学の基礎知識』(角川選書 KADOKAWA)、『百人一首解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『和歌・短歌のすすめ 新撰百人一首』(共編著 花鳥社)、『中世和歌とその時代』(笠間書院)、『和歌文学大系 秋篠月清集・明恵上人歌集』(明治書院・『秋篠月清集』本文・校注・解説)などがある。